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2010 RD.8 カナダGP観戦記

 
▽明暗分けた路面コンディション

今回、路面コンディションの変化が大きく勝負を分けた。
それは、サーキットの路面表面と気温が大きな原因だった。

ジル・ビルニューブ・サーキットの路面舗装表面は、スムーズでタイヤに厳しくない。
アスファルトの路面は小石を混ぜて舗装される。
路面表面は、使われている石の種類で変わってくる。
尖った石を使えばグリップ力は増すがタイヤの摩耗は激しくなる。
鈴鹿サーキットはこの典型的な例だ。

比較的尖っていない石を混ぜるとグリップ力は減るが、タイヤには優しい。
しかし当然、タイヤ温度を上げるのに時間がかかる。
それがジル・ビルニューブ・サーキットの特徴だ。

今回はそれに加えて金曜日、土曜日と気温が低く曇っていたので、路面温度が上がりにくかった。

さらに今年のブリヂストンタイヤは、昨年に比べて4種類のタイヤ特性を耐久性重視に変えてきた。
その為、タイヤ温度が上がりにくくなっている。

では、タイヤ温度が上がりにくくなると、どうなるのだろうか。
現在のF1のタイヤは表面温度を上げて、表面を溶かしてベタベタの粘着性がある状態にして、驚異的なグリップを発揮させている。

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 当然、タイヤ表面をベトベト状態にして、サーキットを走っていると、タイヤのゴムが、路面表面に着いてくる。
これがいわゆる、「ラバーが乗る」とか「ラバー・ダウン」という現象だ。

当然、路面表面にゴムの膜ができてくると、摩擦力が増してきて、タイヤが滑らなくなり、タイヤの寿命が伸びる。

ところが今回、金曜日・土曜日が曇りで、路面温度も上昇せずタイヤ表面が動作温度つまり、タイヤ表面が溶ける状態にまでいかなかった。
さらに、サーキットの路面表面がスムーズで、タイヤへの負荷が小さく、タイヤ温度表面をあげるのが難しかった。
固いブリヂストンタイヤもまた、このようなコンディションでは、タイヤ表面温度上げるのには、適していなかった。

これらの条件がそろい、金曜日から土曜日にかけてタイヤが最適温度に達するのが難しく、どのドライバーもコーナーで滑りまくっていた。
当然、路面にラバーがのらないので、グリップが増えず、さらにタイヤが滑る悪循環。

タイヤが滑るとグレイニングという名の、ささくれ摩耗が発生する。
ささくれ摩耗とはタイヤが滑ることにより、路面表面がタイヤの表面を傷つけてしまう現象である。

わかりやすく言うと、路面表面を大根おろしの卸し金、大根をタイヤと考えて欲しい。
大根が卸し金の上を滑ると、大根表面にささくれた傷がつく。
これがグレイニング、もしくはささくれ摩耗と呼ばれる現象である。
これひどくなると、タイヤのグリップは極端に落ちる。

これが、今回のカナダGPで起こった現象です。

通常は金曜日は路面表面がゴミで汚れているのと、ラバーがのっていないので滑るのですが、土曜日には改善され、日曜日の決勝レースではまったく問題にならないのが普通なのですが、今回は気温と路面表面とタイヤの特性の三つが重なって、通常では起きない現象が発生したわけです。

日曜日の序盤はハードタイヤでも10周前後しか持たなかったのが、中盤以降は30周以上走れました。
これがラバーダウンの効果なのです。


▽レッドブル 明暗を分けたタイヤ選択

そして迎えた決勝レース。
よりグレイニングの激しいソフトタイヤを履くマクラーレン、フェラーリ勢。
ソフトよりはグレイニングの少ないハードタイヤを履くレッドブル二台。
当初BSの浜島さんはソフト側でも10周くらいはいけると読んでいましたが、実際ソフトタイヤを履くドライバーは6周目、7周目に相次いでピットイン。

これは今年から燃料満載でスタートすることも大きな影響を与えていたでしょう。
当然、昨年に比べて100Kg 程重い状態でスタートすれば、マシンは滑りやすくなります。

想定以上に早いピットタイミングにより、路面状態の改善が進んでいないことが判明。
マクラーレン・フェラーリが早々にピットに入ったことで、レッドブルが1-2になり有利な展開と思われたのだが、ハードタイヤも予想以上にグレイニングが厳しく彼らもまた13周、14周でピットに入ります。

ところがレッドブルはハードタイヤで引っ張りすぎたので、タイムの落ちが激しく、新しいハードタイヤ履いたマクラーレン二台とアロンソが好タイムを連発し、最初のピットインで抜かれて4位5位に落ちたのは大きな誤算だった。

ハードタイヤの方が耐久性があると思っての判断だったとは思うが、クビサなどはハードタイヤでスタートしたにもかかわらず、9周目にピットインしており、このレッドブルの判断が勝負を分けた。

レッドブルはこれまで細かいトラブルで勝利を逃してきたのだが、今回もこの判断ミスにより勝利を失う結果となりました。

もっとも今回はどの時点でラバーがのるのか予想ができず、もう少しラバーがのるのが早ければ、レッドブルの勝利もあり得た、難しい判断だったのは事実です。

ただ今回も残念ながら彼らには、メカニカル・トラブルの兆候がありました。
スタート前にギアボックス交換をしたウェバーが、5グリッド降格で7位スタートになりました。
これは日曜日にギアボックスのオイルをチェックしたところ、金属片か金属成分が発見されたのだと思います。
その為、彼らは予防的にギアボックスを交換したのです。
さらにレース中、今度はベッテルのマシンにも、ギア・ボックストラブルが発生し、ペースダウンを強いられました。

マクラーレンに追いつかれたとはいえ、まだアドバンテージのあるレッドブルですが、差が縮まっているだけに早くメカニカルトラブルを修正しないと、チャンピオンシップを逆転するのは難しいでしょう。


▽マクラーレン またも1-2フィニッシュ

事前の予想通り、ポール・ポジションを獲得し、レッドブルの連続PP記録を止めたハミルトン。
彼はこのコースを得意としている。
デビュー・イヤーの2007年はポール・ツゥ・フィニッシュ。
2008年もポールからスタートし、信号無視でライコネンにぶつかるまでは、トップを快走していた。
つまりデビューしてからこのサーキットではトップ以外を走行するのは、ほんの数周という素晴らしいパフォーマンスを見せていた。

ここは通常、低ダウンフォースで走るので、マシンの挙動が不安定になるのだが、そんなマシンを扱わせればハミルトンは抜群である。
ただ今回のマクラーレンはダウンフォースを付けてきた。
理由は、タイヤのグリップがないので横滑りを止めるには、ダウンフォースを付けるしか選択肢がなかったからだ。

また、彼らはFダクトという魅力的な武器を持っており、ダウンフォースを付けてもトップスピードをあまり犠牲にしないということも、このセッティングを選択する要因であった。

レース中のハミルトンの走りも素晴らしく、何度もオーバーテイクを見せ、文句のない優勝となった。
タイヤに厳しいと思われていたハミルトンとマクラーレンだったが、終盤はペースをうまくコントロールするなどして、タイヤをうまく持たせることに成功した。

これでマクラーレンは、今シーズン三回目の1-2フィニッシュである。
マクラーレンとレッドブルの差は確実に詰まってきている。
今後はサーキット毎に最速マシンが入れ替わってくる混戦状態になりそうだ。


▽周回遅れに泣いたアロンソ

アロンソは今回、優勝争いをしながらの3位入賞。
低速部分のフェラーリは優れており、それはこのコース向きであった。
だがエンジンに弱点を抱えるフェラーリは、今回ダウンフォースを付けてきたことにより、トップスピードに課題を抱えていた。
その為、どちらにせよハミルトンに勝つのは難しかっただろう。

だがバックマーカーに悩まされなければ、2位の可能性はあった。
レース中、ずっとバックマーカーに対して苦言を呈していたアロンソであったが、それもこのゲームの一部である。
それでも、久しぶりに表彰台に上れたので、アロンソもある程度は納得行く成績だろう。
次のバレンシアでは大きなアップデートが予定されているので、期待したい。


▽ルノーのセットアップ

今回興味深かったのは、ダウンフォースの大きさである。
通常、このサーキットは低ダウンフォースで走るので、リアウィングはかなり薄い。
だが今回は、タイヤのグリップ不足による、グレイニングを防ぐため、ダウンフォースをたっぷりと付けてきたチームが複数あった。
それがマクラーレンとフェラーリだった。

レッドブルのウィングは中間だったが、彼らは空力の効率がいいので、相応のダウンフォース量を稼いでいただろう。
そして、ルノーは圧倒的に少ないダウンフォース量だった。
その為、ルノーはお世辞にもパワフルと言えないエンジンを持ちながら、トップスピードでは上位二位を独占。
そのおかげでルノーのマシンは直線でタイムを稼げたのだが、とても運転しづらく、ペトロフは何度もコースを飛び出していた。

運転しにくいセットアップを選んだのは、メカニカルなトラクションやブレーキング安定性の良さや、縁石を乗り越えた際の収まりが早く、ダウンフォースが少なくても、マシンコントロールが可能だった背景がある。
だがドライビングしにくいことには代わりがなく、クビサはドライビングできるが、ルーキーには厳しいセッティングであった。


▽苦しい可夢偉 クラッシュ

予選Q1で脱落した可夢偉だったが、スタート直後の混乱を抜けて10位にジャンプアップ。
入賞が期待されたが、1周目の最終コーナーでヒュルケンベルグを抜く際に、少しブレーキング遅れて、二つめの絶対に触れてはいけない、高い縁石に乗り上げて、チャンピオン・ウォールに激突。
本来であればシケインをショートカットしたい場面だったが、横にヒュルケンベルグがいたので、縁石を乗り上げるしか方法がなかった。
こうして彼のカナダGPは終了した。

だが元々このコースはザウバーに全くあっていなかったので、無得点でも仕方ない。
最後まで走っていても入賞は難しかっただろう。
次のレースもザウバーにはフィットしないので、苦しい戦いが続くが頑張って欲しい。

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