大波乱の開幕戦 2008 Rd.1 オーストラリアGP観戦記
▽波乱の開幕戦
荒れに荒れた開幕戦。
これほどまでに荒れた開幕戦は何年ぶりだろうか。
最近のF1マシンは信頼性が向上し、開幕戦でも完走することが多かった。
だが、今年は気温が上昇したこともあり、久しぶりに波乱に満ちた開幕戦となった
最初の波乱は、予選Q2 ライコネンがタイムアタック中に突然スローダウン。
まさかのライコネンのQ2でのノックアウト。
開幕前のテストから10人中10人が今年のチャンピオンはライコネンと言われる中でのトラブル。
フェラーリの公式見解では電子燃料ポンプの不調で、燃料が吸い上げられなかったらしい。
恐らく燃料ポンプ自体の不具合ではなく、電気的なトラブルにより燃料ポンプが動作しなくなったのだろう。
決勝レースでフェラーリ二台が止まった原因が同じトラブルなのかは不明ではある。
現象としては似ていたので、燃料ポンプが原因である可能性はある。
次の波乱はアロンソのQ2脱落。
テストの時から、軽い燃料でのアタック時のタイムが伸び悩んでいたルノーだが、今回はそれを証明してしまった。
ただ、マシンはデフにトラブルを抱えていて、トラクションがきかなかったようなので、真の実力は見せずじまい。
Q3に進めるだけの性能はありそうだ。
そんな中で比較的順調だったマクラーレン。
だが、コバライネンはセーフティーカー導入によるピットクローズに影響され、後退し、表彰台を逃した。
終盤に一瞬失速し、せっかく抜いたアロンソに抜き返されたのは、ステアリング上のスイッチを間違えて触れてピットモードになったのが原因。
コバライネンがアロンソを抜いたときに、ロン・デニスのガッツポーズが印象的でした。
普段は冷静なだけに、そんなにアロンソが嫌いなのかと思ってしまった。
BMWもクビサが表彰台を狙える位置にいたにもかかわらず、中嶋一貴に後ろからぶつかられてリタイヤ。
再スタート直前の駆け引きの中で車間距離が急激に縮まってしまったから、仕方がない面があるが、納得いかないリタイヤだった。
と言うわけで、上位の三人は波乱のレースの中で、波乱なく普通に走れた三人であった。
次に今年導入された新しいルールの影響を見てみよう。
標準化ECUの導入に関しては、特に目立った部分はなかった。
F1のエンジニア達は、当初トラブルが発生していたECUを自分たちのモノにしてきたようだ。
トラクション・コントロールの廃止についても同様である。
スタート時には、白煙を上げてスタートするマシンは見られなかった。
本当にトラクション・コントロールが廃止されたのかと思うようなスタートだった。
あるエンジニアが言っていた、マッピングを変えることにより、トラクション・コントロールの60%~70%は既にリカバーできているという話は本当だった。
F1のすごさはその技術の進歩の早さであると思っているが、これは本当に凄い。
FIAが新しい技術を廃止しても、禁止しても次から次へと新しいデバイスを投入してくるエンジニアの発想と実行力には感服する。
予選の時間変更による影響はほとんどなかった。
マッサはQ3のアウトラップ時に、トラフィックに引っかかりタイヤ温度が上昇せずにタイムが伸びなかったが、10台しかコース上にいなくてトラフィックに引っかかるとは、珍しい。
予選は開始されると、ほとんどマシンに手をつけられなくなるので、もはや予選も決勝レースの一部と考えた方が良さそうだ。
注目のドライバーを移籍したドライバーを中心に見ていこう。
最大の注目は、コバライネン。
彼は予選3位で、ポールのハミルトンとの差は0.365秒差。
決勝レースではコバライネンはハミルトンより4周遅れで入っているので、ほぼ同タイムと見ても良いだろう。
決勝レースのベストタイムでも、二人の差は0.034秒差。
記録した周回も40周前後で、二回目のピットストップの前である。
こう考えると、今回ハミルトンが圧勝したが、この二人の差はほとんどないと考えても良さそうである。
コバライネンが移籍一年目であることを考えると、この二人目のフィンランド人は凄いかもしれない。
二人目はアロンソ。
予選ではデフのトラブルか振るわなかったが、決勝でしっかり4位に入る辺りはさすが。
決勝の走りは良かったので、あとは予選でのパフォーマンスを上げるだけだが、これがなかなか難しい。
チャンピオン争いは難しそうか。
中嶋一貴は六位入賞で初ポイントを得た。
これは凄いことではあるが、内容には疑問が残った。
荒れたレースでのウィリアムズの戦略の上手さに助けられた。
決勝のベストラップはチームメイトのニコに1.5秒以上遅れた。
燃料の搭載量が違ったので、直接比較するのはフェアではないが、予選での速さにはまだまだ課題がある。
では毎年、開幕戦恒例、チームごとに今シーズンを占ってみよう。
【フェラーリ】
二台ともリタイヤ(結果的にライコネンは完走扱いになり1ポイントを得たが)は、最悪のスタートとする人も多いだろう。
だが、彼らのマシンは十分に速く、ライコネンは予選16位にもかかわらず、トラブルがなければ表彰台を狙えただろう。
だから、何の心配もない。
マシンのトラブル以外は。
前半戦で二度ノーポイントになると、去年同様に後半戦がかなり厳しくなるので、今後はリタイヤができないレースが続く。
ただ、マレーシアGPまでにできることは限られている。
それまでに、原因が特定できなければ、二台のマシンはレース中、エンジンをいたわる必要が出てくるかもしれない。
【マクラーレン】
ハミルトンは何の問題もなくスタートし、フィニッシュした。
荒れたレースの中、彼だけが台風の目のように何もなかった。
コバライネンは予選で、ハミルトンに遅れたが燃料搭載量が多かっただけなので、彼のスピードはハミルトンに匹敵すると見ても問題ないだろう。
コバライネンはフィンランド人にしては外向的なので、ハミルトンとの仲に問題は起きないだろう。
これだけでも、ロン・デニスはコバライネンを起用した価値があったというモノだ。
【BMW】
事前の予想と異なる素晴らしい結果を残した。
全く同じ条件でフェラーリやマクラーレンと同じスピードがあるかどうかは今後のレースを見てみないとわからないが、少なくとも燃料が軽いなどの好条件がそろえば、上位二チームを食えるだけの速さはある。
BMWに食われたドライバーやチームはチャンピオン争いで厳しくなりそうだ。
【ルノー】
予選での速さが課題のルノーだが、Q2ではアロンソにトラブルが出て、真の実力は出せず。
トラブルのおかげで、フェラーリとマクラーレンとの差はよくわからなかった。
アロンソの速さは健在で、このマシンでも4位に持ってくる辺りはさすが。
だが、決勝のベストラップでもマクラーレンとは1秒以上の差があるので、雨でも降らない限り厳しい戦いが続きそうである。
今回のピケJrは期待はずれ。
テストでの走行距離不足が原因なのかもしれないが、それでも遅い。
ルノーに乗っていて佐藤琢磨より遅いのはないだろう。
トラブルでもあったか?
【トヨタ】
ここも予想より良く、二人ともQ3に残った。
ツゥルーリは予選6番手、グロッグも予選9番手だった。
ツゥルーリは完走すれば、入賞は間違いがなかった。
シーズンオフでのアップデートがうまくいったようだ。
テストをしてタイムが伸びるマシンは素性が良い証拠。
今年のトヨタは意外にいいかもしれない。
【ホンダ】
良かったのか悪かったのか微妙である。
昨シーズンよりは、良い出来であるのはわかったが、第2グループまでは入れていない。
バリチェロが昨年はほとんど見られなかった素晴らしい走りを見せて、入賞目前だったのだが、よもやの信号無視で失格。
ライコネンに1ポイントを献上してしまった。
昨年ほどマシンの素性は悪くないようなので、今後に期待か。
【ウイリアムズ】
ニコの表彰台は、幸運も味方したがそれでも、前評判通り良いパフォーマンスを見せてくれた。
第2グループには確実に入れそう。
中嶋一貴は6位に入賞したが、レース運びには課題が残った。
マレーシアGPでは、ペナルティで予選グリッドが10位降格が決定したので、苦しい戦いになりそうだ。
【レッドブル】
昨年に引き続き、速さはある。
問題は信頼性。
今回は二台とも接触してリタイヤしたので、暑いマレーシアGPでどうなるかが注目。
二人のドライバーともコンスタントに速いので、優勝は無理でも、表彰台は可能性がある。
【トロ・ロッソ】
ブルデーがいい。
セーフティーカーの導入の混乱の中を切り抜け、上位を走っていたブルデーだが、走りもよかった。
アロンソやライコネンを従えて一歩も引かない走りを見せていた。
さすがは4年連続チャンプカーのチャンピオン。
このインテリドライバーは凄いかもしれない。
【フォース・インディア】
かなりの好パフォーマンスを見せてくれた。
これでは、スーパーアグリは厳しい。
【スーパーアグリ】
出場できただけで奇跡的。(確か二年前も同じフレーズを使った記憶がある)
今までのライバルであった、フォース・インディアとトロ・ロッソが長足の進歩を成し遂げたので、彼らの今シーズンはかなり厳しい。
彼らの姿を見るのも今年限りかもしれない。
次は暑い暑いマレーシアGP。
ここでも信頼性が鍵になりそうである。
- バックスカフェ訪問記
- ライコネン復活 2008 Rd.2 マレーシアGP観戦記