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FRICサスペンション禁止は順位に影響を与えるのか?

FIAが突然、ドイツGPからFRICサスペンションを禁止するとチームに通達してきた。もっともこの通達はドイツGPで実施されない可能性もある。これはFIAが全チームが合意すれば、FRIC禁止を年末までに延期すると言っているからである。だが実際にはFRICサスペンションを有効に使用できていないチームもあり、彼らが同意するとは思えないので、この通達はドイツGPで実施されると思われる。 ではそもそもFRICサスペンションとは、どういうものであろうか。これはフロントとリアサスペンションをオイルで連結し、ブレーキング時にフロントサスペンションに荷重がかかり、フロントの車高が下がるような場面で、リアのサスペンションが伸びることにより、フロントに油圧をかけて、フロントサスペンションを沈まないようにするシステムである。コーナーの立ち上がりでは当然、逆の事が起きる。簡単に言うと、車高を一定に調整するシステムである。 ここにはドライバーの意志やシステムが介入していないので、いわゆるパッシブであり、禁止されているアクティブ・サスペンションではないとして、これまでは認められていた。だが今回、FIAはFRICを「空力的部品は可動してはいけない」というルールに反しているとして、禁止しようとしている。 これには過去に、ルノーが同じく車高の制御に使用していたマスダンパーをシーズン中に禁止された事例がある。 ではマシンの車高を一定に維持できると、何かいいことがあるのであろうか?もちろんある。頭のいい彼らが無駄なことをするわけがない。大きく分けるとふたつ利点がある。 一つ目は車高が変化すると、ダウンフォースの量が変化する。走行中のマシンには様々な力が加わるので、常に一定の車高を保つことは不可能である。だが車高の変化を少なくできれば発生するダウンフォースの量を一定にできるので、ドライバーは自信をもって攻めることができる。サーキットのある部分ではダウンフォースがあるが、他の部分ではないというのでは、ドライバーは思いきってコーナーに飛び込めないし、立ち上がりも恐る恐るになってしまう。これではいいタイムが出せない。 もう一つは車高を一定に保つことで、タイヤにかかる負荷を一定にできる。特にピレリタイヤはタイヤにかかる負荷を分散しないと、タイヤの寿命が短くなるので、これはとても重要である。これを実行できれば年に何回かのレースで、ライバルよりも少ないタイヤ交換でゴールすることができる。 ではこのFRICサスペンションの禁止より、今年のF1の順位に大きな影響を与えるのであろうか?影響は与えるが、限定的であるというのが、私の結論である。つまりタイムに影響はあるが、トラック上の順位に大きな影響を与えるほどではない。 というのもこのFRICサスペンションは全チームの標準装備であるので、それがなくなったからと言って、急にメルセデスだけが遅くなり4位になるということは考えにくい。当然、他も同じように遅くなる。あるエンジニアによると、FRICサスペンション禁止によるラップタイムへの影響は0.3秒〜0.4秒程度と見積もっている。もちろん全てのチームのFRICサスペンションが同じ構造ではないから、チームにより影響は異なる。 これはマシンがどの程度、FRICサスペンションに依存しているか、言い方を変えると、チームがいかにFRICサスペンションをうまく使っているかの問題である。つまりFRICを効率的に使用していたチームほど、影響が大きく、タイムを失う。 ちなみにロータスはこのFRICサスペンションを最初に導入したチームの一つであるし、メルセデスはとても複雑なFRICサスペンションを装備し、姿勢制御やタイヤ管理に利用していたと伝えられている。 実際に目で見えるレースでの影響は、タイヤの寿命が短くなることにより、タイヤに厳しいサーキットではタイヤ交換の回数が増えることが考えられる。特にシルバーストーンのように高速コーナーが多く、タイヤへの負荷が厳しいサーキットを1回のタイヤ交換でフィニッシュするというのは、より難しくなる。ピレリタイヤをうまく使うコツの一つは、フロントとリアタイヤの温度を作動温度領域に素早く入れて、それを維持することである。 ではなぜFIAはこの時期に、FRICサスペンションを禁止するのであろうか?マクラーレンのエリック・ブーリエによれば、いくつかのチームが極端な使い方をしており、FIAはこの使用方法に疑問を持ったからであると述べている。その一つはメルセデスではないかと噂されている。 さて実際にFRIC禁止はドイツGPから導入されるのか、導入されたらレースでどういう影響があるのか、興味が尽きない。それはドイツGPの結果を見れば一目瞭然である。とても興味深い週末になりそうである。

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