シークレットF1 Vol.3 エンジニアから見た、いいドライバーの条件
匿名の人物にF1の内側を赤裸々に語ってもらう「シークレットF1」。今回はあるエンジニアにドライバーについて語ってもらいます。
本当にいろいろなドライバーがいる(笑)。10人いれば10通りのやり方がある。ドライバーの個性は大きい。だがやはり成功しているドライバーはやり方が違う。彼らは何か疑問点があると必ず質問してくる。彼らの質問の鋭さは、想像を絶するよ。そんな細かい部分まで感じているのかってね。我々はセンサーを使ってかなりの情報量がある。だから昔と違い、今はエンジニアもマシンの状態を理解することはできる。だけどやはり最後はドライバーの感覚に頼るところは大きい。
感じる部分もドライバーによって差は大きい。少しだけセッティングを変更しても、すぐにわかるドライバーもいるし、わからないドライバーもいる。ただ感じるドライバーが全ていいというわけでもない。あまり感じる能力が高すぎると、セットアップが決まっていないと、全力で走れないドライバーもいるんだ。彼らはほんの少しのバランスの違いも感じるからね。
本当のいいドライバーは感じる能力がありながらも、それを理解して攻めることのできるドライバーだ。彼らはなぜそうなっているのかを理解すれば、全開で攻めることができる。今はレース前のシミュレーションが発達しているから、昔ほどセットアップを外すことは少なくなってきた。でも完全なセットアップを決めるのは難しい。だから不完全でもいかに高いレベルの妥協点を探れるかが、ポイントになる。週末のレースは時間が限られているし、今はエンジンのマイレージを抑えたいから無条件に走れない。タイヤも限られているしね。
でも成功するドライバーは、レースにかける熱意はすごいよ。彼らは練習走行でセッティングが決まらなかったり、タイムが良くなければ、納得するまで質問する。本当に質問魔みたいなドライバーもいるよ。もう勘弁してってね。理由がわかれば対策するし(笑)。でもエンジニアとしては、そういうドライバーは大歓迎さ。大変だけどやりがいも大きい。彼らはそれに応えれば、必ず結果を残してくれるからね。
対照的に文句は多いけど、抽象的で対策しても、それに反応しないドライバーもいる。どんなにやっても文句ばかり。結果が出ない時は全てがマシンのせいで、結果は全てドライバーのせい。とても人間らしいとも言えるけど(苦笑)、やっている方が大変。
最近はペイドライバーも増えてきた。今の経済状況を考えるとしかたないとはいえるけど、残念ではあるよ。いい若手がいてもリザーブドライバーにはなれるけど、レースドライバーへの昇格は難しいんだ。こればかりはエンジニアは推薦はできるけど、最終決定は上層部から決めるからね。なんとかいいドライバーがレースを走れるといいんだけど。
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