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スーパーライセンス取得制限は正しいのか?

Starting-Grid-of-Italian-Grand-Prix-2013 FIAはスーパーライセンスが簡単に取れないように2016年から取得の条件を新たに設けた。それによるとスーパーライセンスを取得するには下部フォーミュラか耐久レースのランキングで上位に入り、過去3年間の合計で40ポイントを獲得する必要がある。 これは若すぎて経験不足のドライバーがF1に参加し、危険な状況になるを防ぐのが目的である。具体的に言えばマックス・フェルスタッペンが17歳の若さでF1に参加したために設けられた規定である。確かにこれで経験不足のドライバーがF1に参戦することは防げるだろう。だがこの措置は正しいのであろうか。 実はこの制限が課されると現在のワールドチャンピオンの何人かのF1デビューも遅れていた。一番有名なのはキミ・ライコネンであろう。彼はF3すらレースしていない状況でF1に参戦して、2戦目には入賞した。 ベッテルもこのポイント制ではF1デビューできなかったし、アロンソも同じである。リカルドもHRTからF1デビューすることはできなかった。 これらの事実を見ると速いドライバーは何歳でも速いということがいえる。経験の有無はドライバーの能力とは大きな関連が見られない。 またこのポイント制であればマイナーフォーミュラで数年過ごす必要があり、資金的な負担も大きくなる。そうなるとマイナーフォーミュラとWECと掛け持ちでするドライバーも現れてくるだろう。 FIAがこうした制限を導入する背景には、増え続けるマイナーフォーミュラのカテゴリーをコントロールしたい思惑があると思われる。昔はフォーミュラ・フォードからF3、F2と上がってF1という道筋が明確にあった。もちろんセナのようにF3から直接F1に上がってくるドライバーもあったが、基本的にはそうであった。 だが今はマイナーフォーミュラのカテゴリーが増えている現状がある。マイナーフォーミュラの市場が増してきているのは、そこにビジネスチャンスがあるからである。この状態でFIAは新しくF2選手権の導入を考えている。彼らはこの新しいF2カテゴリーに権威を与えて参加者を増やしたい思惑があるのは明確である。スーパーライセンス獲得のポイント数が多ければ、それだけF1を目指すドライバーには魅力的なカテゴリーになる。つまりこのスーパーライセンス制度の導入には、マイナーフォーミュラのマーケットを巡る競争という面もある。 マックス・フェルスタッペンのような若手ドライバーがF1でレースをすることは危険という人も多いが、彼らの多くは小さい時からカートで経験を積んでおり、確かにフォーミュラ・カーでの経験は少ないながらも、レース経験は豊富である。昔は20歳前後からレースを始めてF1ドライバーになる人も珍しくはなかった。だが今では、そんなドライバーがF1にまでたどり着くのは難しくなっている。 それに優れたドライバーであれば、バトルの最中でもマシンのコントロールをすることができる。であれば経験不足を理由にF1の門戸を閉ざすのは間違っているのではないだろうか。 またこのような制限を課すとF1チームの経営にも影響を与える。今のF1チームの半分以上はお金を払って乗るペイドライバーに資金を頼っている。だが不思議なことに資金量と能力は正比例ではなく、反比例の関係にある事が多い。この制限により資金力豊かなドライバーが、チームに資金を持ち込めなくなると、苦しいチーム運営が更に苦しくなる可能性が高い。 そうなると資金を持ち、なおかつスーパーライセンスを所持するドライバーの価値は今以上に上がるであろう。 またこのルールはカムバックするドライバーも難しくする。過去1年間で最低5レースする必要があり、また過去3年間で15レースするのがスーパーライセンスの発行条件である。この場合、2年で戻ってきたライコネンはOKであるが、ミハエル・シューマッハーは復帰できないことになる(その後、FIAは例外措置があることを表明している)。 ではどうすればいいのであろうか? 一つの考え方としては5レースもしくは3ヶ月間だけ有効な前提のスーパーライセンスを発行して、レース内容を見て通常のスーパーライセンスを発行するかどうか判断すればいい。F1のレベルに達していないと判断すれば途中でライセンスを打ち切ればいい。 そうすれば誰も困らないが、FIAの制度導入の意志がマイナーフォーミュラを管理したいのであれば、このルールは2016年から導入されるであろう。 F1スーパーライセンス ポイント
選手権名 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
F2 60 50 40 30 20 10 8 6 4 3
GP2 50 40 30 20 10 8 6 4 3 2
ヨーロッパF3 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
WEC (LMP1クラス) 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
インディカー 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
GP3 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
フォーミュラ・ルノー3.5 30 20 15 10 7 5 3 2 1 0
スーパーフォーミュラ 20 15 10 7 5 3 2 1 0 0
FIAナショナルF4 10 7 5 2 1 0 0 0 0 0
ナショナルF3 10 7 5 2 1 0 0 0 0 0
フォーミュラ・ルノー ユーロカップ 10 7 5 2 1 0 0 0 0 0