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ベッテル 抜群のトラクションはエキゾーストブロー効果

166987979_PG_3949_3F966FCEC9158257FE5FF1008D3E9702-s のコピー さてシンガポールGPでのジャンカルロ・ミナルディ氏の発言から勃発したレッドブルのトラクション・コントロール疑惑。 韓国GPを見ていて、少し気になったことがある。それはレッドブルではない。ザウバーのマシンを映したものである。ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグは韓国GPで並み居るチャンピオン・ドライバー達を引き連れ、抑え込んだ。その時、後ろのマシンから彼を映した車載カメラの映像が流れた。そこで驚いたのは、彼のトラクションの掛かりの良さである。後ろにいるハミルトン達をターン2の立ち上がりで見る見るうちに引き離す彼のマシンを見て、全ては理解できた。 そうトラクションの掛かりがいいのは、コントロールしているからではない。ザウバーはコーナーの立ち上がりで、見事にエキゾーストブローを利用してダウン フォースを生み、トラクションを稼いでいる。そうとしか考えられない。ザウバーは夏休み明けに新しいリアのボディカウルを投入している。これが彼ら にリアのダウンフォースをプレゼントしている。ヒュルケンベルグはベルギーGPからリアの安定性が増したと明らかにしている。 そう考えるとグチエレスがシンガポールGPでQ3に進出した理由もよくわかる。つまり彼らのマシンは明らかにトラクションが改善されている。では彼らは何をしているのだろうか。 やっていることは単純で、エキゾーストのガスをリアブレーキのウィング状になったフィンに直接吹きかけていると推測できる。 ここはタイヤに直接ダウンフォースを伝えることができる、最も効率のいい場所である。少しダウンフォースが増加するだけでも、大きな効果が得られる。だから ほとんどのマシンがブレーキ冷却用のダクトに設けられたフィンをウィング状にしている。厳密に言うとこれはレギュレーション違反だと思うのだが、FIAは これを認めている。そこに直接、エキゾーストガスを吹き付ければ、その効果は驚くべきものになる。おまけにこれだと複雑なオフスロットル制御はいらない。オンスロットルの時に出る排気ガスを吹き付ければいいだけで、貧乏なザウバーでもエンジンマッピングを変更する必要すらない。 とはいえ誰もが すぐに同じ事ができるわけでもない。というのも今のレギュレーションでは排気ガスの出口は、より高く、より中心に近く、よりリアタイヤより遠くなって いる。昔はリアタイヤの近くに直接、エキゾースト出口を設置できたので、それほど苦労はしなかった。だが今はより遠いところから、ガスを目標であるリアタ イヤの内側に吹き付ける必要がある。これは言葉に書くと簡単そうに見えるが、そんなに簡単にできることではない。走行中のマシンにはサイドポンツーンの上 からも横からも高速の空気が流れてくる。それらの空気の干渉を最低限に抑えつつ、離れたエキゾースト出口からターゲットにガスを吹きかけるというのは、一 種の芸術と言ってもいいかもしれない。 ほとんどチームはこの領域の開発を困難を理由に諦めている。チームの人的ソリューションは限られて おり、同じ人数で効率よく開発するには、タイムに貢献する開発を取捨選択をしなければならない。効果が高いとはわかっていても、時間がかかると判断すれ ば、他のパーツを開発した方がいいからだ。F1はほぼ隔週でレースがあるので、のんびりと長期間の開発を手がける余裕がないチームも多い。だがザウバーは これをやり遂げた。そしてレッドブルもまたやり遂げたと考えるのは理にかなっている。 レッドブルは元々、このエリアの開発のパイオニアで あり、第一人者であり続けている。このエリアの開発でゲインが大きいことを理解している彼らがこの領域の開発を進めて、成果を手にしているとしても何の不 思議もない。シンガポールGPでベッテルは誰よりも早く、トラクションをかけているとハミルトンは証言している。これはヒュルケンベルグと同じである。 そう考えると同じ事をレッドブルがやっていることは間違いがない。だからこそ、メルセデスが得意なトラクションが必要なサーキットで独走することができた。もっともレッドブルはザウバーより巧妙かつ効率よく使用している。全体的なダウンフォースも多い。 で はこのソリューションを他のチームは真似することができるだろうか。残念ながら開発には時間がかかるので、シーズン終了までに間に合わないだろう。リアエ ンドのエアフローは各マシン一台一台違う。オマケに空気の流れは見えないので、簡単には真似ができない。シミュレーションはできるが、排気ガスのエアフ ローまで精密に再現するのは難しいだろう。そう考えるとレッドブルのベッテルが日本GP以降の全てレースで勝っても、驚きはしない。 ちなみにトラクション・コントロールにKERSを利用しているとの疑惑もあるようだが、これは考えにくい。複雑すぎて開発する時間と費用が割に合わない。この件に関して問われたニューウェイは「KERSから違う成果を得ているとは思わない」と語った。「我々 は、他のチームと同様、最善の使い方を研究しているが、使い方に関してはみな同じだと思う」述べている。 ニューウェイが自分たちの秘密を簡単に明かすとは 思えないが、これに関しては本音だと思う。エキゾーストブローを利用した方が遙かに安上がりである。もっとも開発は簡単ではなくレッドブルもザウバーも シーズン当初から開発を続けて、投入したのは8月末であり、とても効率がいいとは言えないが、その効果は今のところ抜群で、しばらくは他の追随を許さないようだ。 関連記事:ベッテルとレッドブル 驚速の秘密

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