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メルセデスやフェラーリがフロントウィングが壊れても速い理由

P-20160418-00809_News-chaGP2016 読者の方から質問をいただきました。今回はその質問にお答えしたいと思います。 「フロントウィングが壊れたメルセデスやフェラーリがマクラーレン・ホンダより速いのはどうしてですか?」 そうですよね。不思議ですよね。でもそこにも当然、理由があるのです。   フロントウィングは二つの役割を持っています。ひとつは皆さんもご存じの通り、ダウンフォースを生み出す機能です。これでタイヤを押しつけてコーナーリングを速くするのですね。 もうひとつは空気の流れを整えることです。空気を整えるとはどういう事なのでしょうか。 F1は大きく分けて三つの部分で下向きの力、ダウンフォースを作っています。 一つ目がフロントウィング、二つ目がリアウィング、そして三つ目がフロア(ディヒューザー)となります。 クルマの場合、基本的に空気は前から後ろに流れます。と言うか正確にはクルマが空気の中を進むので、クルマが前から空気に向かって進んでいくという方が正確なのですが、それではわかりにくいのでこういう表現にさせていただきます。 まずフロントウィングに空気は当たり、その後リアに向かって流れていきます。フロントウィングやフロントタイヤに空気が当たると乱れた「汚い」空気がリアに行きます。 汚い空気がリアウィングに当たると、リアウィングのダウンフォース量が減るのですね。また汚い空気がリアのディヒューザーの上に流れると同じくダウンフォースが減ることになります。 その理由について書くと、とても長くなるので詳しくは別の機会に説明させていただきます。 汚い乱れた空気がリアに流れるとダウンフォース量が減ることはご理解いただけたと思います。そこでフロントウィングです。最近のフロントウィングは複雑化を増しています。その大半の理由はできるだけきれいな空気をリアに流したいからなのです。 P-20160308-00439_News-barcelona test2 現在、もっとも複雑と言われているレッドブルのフロントウィング。ここまでくると何か生き物のように感じられて不思議です。 ちなみに単独走行している場合、フロントウィングは最初に空気に当たるのでこのような現象は起こりません。ただバトルをしていると前を走るマシンが巻き起こす乱れた空気の影響(特にディヒューザーの)を受けるので、フロントウィングのダウンフォースを失います。最近のF1がオーバーテイクが少ないのはこの影響が大きいのです。 ここで重要なのは、汚い空気によりリアのダウンフォースが減るのですが、劇的に減る(例えば50%減る)わけではないのです。ここで失われるダウンフォース量は僅かです。 ただ今のF1はとても細かい数字を積み重ねて、ダウンフォース量を増やしています。だからフロントウィングの翼端板も重要なのですが、それがなければいきなり遅くなるかというと、そうではないのです。翼端板自体がダウンフォースを生み出しているわけではないからです。 特に決勝レース中は路面のラバーの乗り具合、タイヤの状態、気温、路面温度など多くの理由が複雑に絡み合ってタイムに影響してきます。そうするとフロントウィングの翼端板がなくても、その影響は相対的に小さくなり、タイムに大きな影響を及ぼさないのです。 さらに決勝レース中はドライバーも多少のマージンを持って走っています。例えば予選だと100%、もしくはドライバーによっては101%の力で走ることができます。失敗してもやり直しがきくからです。でも決勝レースでは失敗すると大きく順位を失い可能性が大きいので、多少余裕を持って走っています。 もちろんフロントウィングが脱落すると、フロントのダウンフォースがゼロになるので、速く走れなくなります。でも少なくともフロントウィングが残っていて翼端板がないような状態だと、速いマシンは速く、そうでないマシンはそれなりに走れるのです。 おわかりいただけましたでしょうか。みんさんからの質問をお待ちしています。