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F1新時代への入口 マッサとバトンの引退

_H7I0820-monacoGP2016 ベテラン・ドライバーであるフェリペ・マッサとジェンソン・バトンがF1フィールドから去ることが決まった。バトンは引退ではないというが、彼が復活する可能性が低いのも事実である。これは長年F1を見続けてきたものとしては大変感慨深いものがある。 これでシートを得ているベテラン・ドライバーはキミ・ライコネンとフェルナンド・アロンソの二人となった。この二人も遠からず第一線を去ることは明らかである。 そしてF1は新しい時代に突入していく。残ったドライバーは少なくとも全盛期のミハエル・シューマッハーと走ったことのないドライバーがほとんどである。最近は昔と比較してF1ドライバーの現役年数は増加する傾向にある。かつては大けがや最悪死亡事故でF1から去るドライバーも多かったし、そうでなくてもある程度結果を残せば早めに引退することも多かった。 だが幸い最近のF1マシンは安全になり大けがや死亡事故が起こる回数も昔に比べるとはるかに少なくなった。F1が安全になったのは素晴らしいことなのであるが、これによりベテランドライバーがグリッド多く占めることになり、若手ドライバーが活躍する場が少なくなっているのも事実である。 かつては今とは違いマシンの数も多く、新人ドライバーが下位チームからデビューして徐々にステップアップすることも珍しくはなかった。また競争力のあるチームが新人ドライバーを抜擢することもあり、新人ドライバーがデビューできる機会は多かった。 新人ドライバーは実際にF1マシンに乗せてレースをさせてみなければ速いか遅いか判断が難しいので、こういう状況は新人ドライバーにとっては恵まれていたと言えよう。 だが今やF1ドライバーはたった22人しかいない、狭き門である。昔のようにスポット参戦することも難しく、デビューを待っているドライバーの数は増えるばかりであり、ペイドバイバーが支払う金額も以前の10倍以上と桁外れの金額になり、誰もがF1に乗れない状況となっている。 こういう状況を考えるとマッサやバトンのように大きな後ろ盾がないドライバーが、F1にデビューして長年活躍し、一人はチャンピオンになり、もう一人は惜しくもチャンピオンは逃したがタイトルを争えたことは大きな幸運であった。 そもそも自分自身の引退記者会見を開けるドライバーはほんの一握りである。また自分自身で引退を決められるドライバーもまたごく少数の恵まれた人間に許された特権である。 そう考えると二人ともF1で不遇の時代があったにせよ、恵まれたF1人生だったと言えよう。 来年はF1のマシン側のレギュレーションが大きく変わる。そこにフェルスタッペンやバンドーンなどの若いドライバーが挑戦し、新しいF1時代を作り上げてゆく。そればどのような時代になるのかはわからない。 それはセナやシューマッハーの時代とは全く違うものになることは間違いない。それを見ることもまたF1のファンとしては楽しみである。