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リカルドの逆転勝利も真の勝者はマックス?

ap-1pr24pa951w11_f1_grand_prix_of_malaysia リカルドが今シーズンの初勝利を飾ったマレーシアGPだったが、ハミルトンのエンジンブローがなければ勝っていたのはマックス・フェルスタッペンだったかもしれない。 レーススタート前のピレリの予測では3ストップが最速と予想されていた。だが当然、レースは順位や前後の間隔など不確定要素が多くシミュレーションとは異なる結果になることはよくある。 スタートで前に出たかったレッドブルだったが、ポールポジションからいいスタートを切ったハミルトンを抜くことはできなかった。そこで彼らはチームメイト二台の作戦を変えてきた。 フェルスタッペンは3ストップでリカルドは2ストップ狙いである。そのためフェルスタッペンはVSC中の9周目にソフトタイヤに交換した。一方のリカルドはハミルトンがタイヤ交換するまで待ち、ハミルトンの次の周である21周目、ハードタイヤに交換した。 このハードタイヤで45周頃まで引っ張って、ソフトタイヤに履き替える作戦である。だがご存じのように40周目にハミルトンがリタイヤした。この時点でリカルドはこのハードタイヤで最後まで行けそうだとチームに伝えている。つまりリカルドのハードタイヤの状態は良かったということである。 だがリカルドがこのハードタイヤで最後まで走るには35周を走らなければならず、これはかなり困難な仕事である。恐らくリカルドは残り5周程度でタイヤ交換をしなければならなかっただろう。 フェルスタッペンはタイヤ交換したソフトタイヤで好調なペースを刻んで、27周目にハードタイヤに交換し、好調なペースを維持していた。そしてハミルトンがリタイヤする前にマックスはリカルドに追いついたのである。この時点でマックスは最後のタイヤ交換を終えていた。彼は27周目にハードタイヤに交換していたので、レース最後まで走りきれる状態であった。 本来ならばレッドブルはリカルドに対してフェルスタッペンを前にやるように伝えるべきだった。完全にフェルスタッペンの方が速かったからである。実際過去にレッドブルは作戦が違うチームメイトを前に出すように指示を出した実績がある。だがこの時、レッドブルはこの二台に順位を競わせていた。この時点でフェルスタッペンはハミルトンより約20秒後方でほぼ同じペースで走っていた。 この時、もしハミルトンがもう一度タイヤ交換をした場合、フェルスタッペンが逆転できる状況であった。この場合フェルスタッペンが優勝する可能性もあった。 だがハミルトンがリタイヤしたことにより状況は変わった。3位を30秒ほど離していたレッドブルは二台をハミルトンのリタイヤで出ていたVSC中にタイヤ交換した。 最後まで走りきれるはずのフェルスタッペンまでタイヤ交換させたのである。チームはもしフェルスタッペンがそのまま走ると、この後SCが出動し三位以下のロズベルグが新品のタイヤを履いていた場合、抜かれる可能性があったと述べている。 だがその場合でもリカルドが最後のタイヤ交換した時点で、フェルスタッペンがタイヤ交換しなくてもリカルドが新品のソフトを履いて2位にいるので優勝は可能は大きかった。わざわざフェルスタッペンのタイヤ交換をする必要はなかった。 もちろんこの時点で1-2フィニッシュを確実にするには、この時点で2台のタイヤ交換する必要はあった。だがマックスがタイヤ交換しなくても1-2フィニッシュは可能であった。 もちろんソフトタイヤに履き替えたリカルドが逆転することもありえたし、フェルスタッペンがそのまま逃げ切る可能性もあった。 更に最後のスティントでソフトタイヤを履いたリカルドとフェルスタッペンだが実はリカルドは新品のソフトで、フェルスタッペンのは予選で3周走ったソフトタイヤであった。そのためフェルスタッペンは最後の数周でタイヤの美味しいところを使い果たしてしまいリカルドを追い詰めることができなかった。 これはどういう意味を持つのであろうか。リカルドはスペインGPでチームの作戦ミスにより勝利を失った。そしてモナコGPではチームの作業ミスにより勝利を失った。彼はここまで勝てるレースをふたつ、チームのミスにより失っている。 だからチームがリカルドを勝たせたとは言えない。だがそう考えなければ納得のいかない作戦であったことも事実である。