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ベッテル 薄氷の勝利とその理由 バーレーンGP観戦記


ベッテルが開幕戦に続き二連勝を飾ったが、最後はボッタスに追い詰められてなんとかギリギリ勝てたというレースだった。
 
レース前には2ストップ作戦が一番速いとみられていたので、それを選択するドライバーが多いとみられていたが、トップ争いはワンストップで戦われた。これには伏線がある。
 
ベッテルとメルセデスの二台の中で一番早くタイヤ交換したのはベッテル。本来なら二位のボッタスがタイヤ交換してからピットインしたいはずのベッテルだったが、状況がそれを許してくれなかった。
 
レース序盤のベッテルはボッタスを順調に引き離し3.3秒差をつけたが、途中からタイヤのタレが大きくなり、ボッタスに約1秒差まで迫られた。暑いバーレーンではフェラーリの方がタイヤの持ちがいいと考えられていたので、これは意外な展開だった。
 
この差だとボッタスが先にタイヤ交換するとアンダーカットで抜かれてしまう。だからベッテルは先にタイヤ交換して、2位のボッタスから順位を守ろうとした。
 
そしてボッタスも同じ周にタイヤ交換し、アンダーカットを仕掛けようとしていたが、ベッテルがタイヤ交換するのに気がついて、アンダーカットできないと見るやボッタスをステイアウトさせた。
 
ベッテルがどのタイヤに履き替えるのかを見てから、自分達のタイヤを選択しようとしたのである。この時にはメルセデスはソフトタイヤを用意していた。つまりメルセデスはボッタスにソフトタイヤを履かせアンダーカットでベッテルを抜こうとしていた。
 
最大で30周しか持たないソフトをベッテルが装着したのを見て、2周後にメルセデスはボッタスにミディアムを履かせる。
 
この時点でもメルセデスはまだワンストップで行くとは決めていなかった。ミディアムのペースが読みきれてなかったからである。もしベッテルのペースが速くてもう一度タイヤ交換しても逆転されるのであればワンストップにする必要はないからである。
 
だがボッタスのミディアムでのペースはよく、ベッテルはソフトタイヤでボッタスより0.5秒程度しか速く走れなかった。ここでメルセデスはワンストップに変更する。タイヤ交換のロスタイムは約23秒あるので、ベッテルがツーストップならボッタスはトップにたてる。
 
そこで絶体絶命のベッテルはタイヤ交換をしないでレースを走りきろうと考えた。ただこれはこの週末誰も走ったことのない距離だった。ピレリはソフトでは最大30周と考えていた。ベッテルが走りきるのは、それよりも9周も多い距離である。
 
もっとも3位ハミルトンと4位ガスリーとの差は30秒以上あったので、ベッテルは例え最後の数周でタイヤがダメになって交換しても3位表彰台は確保されたので、失うものが少ないという計算もあった。
 
そしてベッテルはタイヤを持たせつつレースのフィニッシュを目指す。ベッテルがタイヤ交換すると考えていたメルセデスも途中からベッテルがタイヤ交換しないとわかり、ボッタスにベッテルを追いかけされる。
 
ベッテルのタイヤは予想通り残り10周で極端にグリップが落ちた。そして最後の2周でボッタスはベッテルに追いついたが、オーバーテイクを仕掛けるのも難しく、ベッテルが逃げ切った。
 
もっともボッタスのタイヤも残り数周の時点でグリップが落ちてきていたので、あまり責められないかもしれない。
 
これをただのフェラーリの作戦勝ちと考えるのは間違いである。ベッテルのタイヤは最後の2周ほとんどコンパウンドがなくなっていて、グリップがない状態だった。実際ベッテルは最後の2周で何回かかコントロールを失いかけている。しかもこの状態で後ろから来るボッタスを抑えられるほどのスピードを維持するのであるから、並大抵のドライビングではない。
 
もし最終周にベッテルがスピンしても、私は責められないと思う。それくらいベッテルのタイヤはダメになっていた。普通のドライバーだったら、ハーフスピンして順位を失っていただろう。ここが4度の世界チャンピオンとそうでないドライバーとの違いである。
 
逆に言うとボッタスはベッテルを抜かなければならなかった。タイヤのグリップが少なくなってきていてもまだベッテルよりはあったのどから。もしボッタスではなくハミルトンだったら、必ずベッテルにアタックをしていたに違いない。抜けるかどうかは別の話ではあるが。
 
ボッタスとベッテル、ハミルトンとの差はその部分である。それにしても本当にベッテルの素晴らしいドライビングであった。