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楽勝ではなかったフェルスタッペン オーストリアGP観戦記


 
▽荒れたオーストリアGP
荒れたレースになったオーストリアGPだが、どちらにせよスタートが重要な要素だったことは他のレースと変わりがなかった。
 
まずレース前はほぼ全車がワンストップレースを計画していた。だが実際はワンストップもいれば、ツーストップもいた。彼らを分けたのはなんだったのだろうか。
 
実は金曜日と土曜日は比較的涼しかった。レッドブルリンクは高地にあるのでこの時期でも過ごしやすい事が多い。だが日曜日は一転して晴れて気温が急上昇。これがタイヤ作戦を分ける鍵になった。
 
スタートではライコネンがベストスタートでポールスタートのボッタスをかわす。トップは予選2位のハミルトンであった。この後ライコネンはコースアウトして戻る際にイン側にいた三位のフェルスタッペンに幅寄せした。これでフェルスタッペンはスピードダウン。そのすきにアウトからボッタスが二台をオーバーテイク。これでメルセデスのワンツーである。
 
その後、フェルスタッペンはコーナーでライコネンに軽くヒット。両者にダメージはなかったがフェルスタッペンがライコネンを抜く。ここがこの日のレースの分かれ目になった。この時ライコネンがポジションを守っていれば勝ったのはライコネンだったかもしれない。この時フェルスタッペンにはペナルティは課されなかった。
 
そして15周目、ワンツーだったメルセデスのボッタスが油圧系のトラブルでギアシフトができずにコース脇にマシンを止める。これでマシンを撤去するためにVSCが提示された。
 
最初のピットストップのタイミングは18周から28週と予想されたが、ここでレッドブルとフェラーリは二台ともタイヤ交換に入る。VSCでコース上のマシンのスピードが下がりロスタイムが少なくなるからである。ここでハミルトンはピットインしなかった。
 
私はこの判断をメルセデスはタイヤに厳しいので、このタイミングでタイヤ交換すれば、最後までもたないと判断したと考えていたが、事実はそうではなかった。
 
実はメルセデスはボッタスがリタイヤしたことにより後続のライバルチームが作戦を分けてきた場合の対策を考えていた。つまりハミルトンがタイヤ交換すれば、レッドブルやフェラーリは一台はタイヤ交換し、もう一台はこのタイミングでタイヤ交換しないと作戦を分けられるとメルセデスは苦しい立場になるからだ。
 
 
そしてメルセデスはタイヤ交換をしなかった。これを見たライバルチームは二台ともタイヤ交換を実施した。これでメルセデスが次の周にタイヤ交換すればよかったのだが、彼らは16周目もタイヤ交換せずに、この周の途中でVSCは解除されてしまった。
 
これによりハミルトンはこのタイヤで長い距離を走って失った10秒を稼ぐ必要があったが、彼のタイヤはグリップを徐々に失いタイムは上がらない。結局彼はベッテルの前で戻るために25周目にタイヤ交換し、4位でレースに戻った。
 
だがハミルトンのペースは上がらない。彼はタイヤ交換後にブリスターが発生し、ベッテルにも抜かれ、52周目に2度目のタイヤ交換をした上に燃料ポンプが故障して63周目にリタイアとなった。
 
二台のメルセデスがメカニカルトラブルでリタイヤしたのは彼らがブラウンGPを買収して以来初めてかと思っていたら、別の記事でメルセデスがワークスとして参加していた1955年のモナコGP以来初めてらしい。どんだけ信頼性あるんやという話である。(もちろんブランク期間も長いのだが)
 
メルセデスの二台がリタイヤしたので、フェルスタッペンは楽勝だったかというそうではなかった。先ほども述べたようにこの日は気温が上がりブリスターが発生するマシンが続出した。彼のチームメイトであるリカルドもブリスターが発生し二度目のタイヤ交換を強いられ、2位の座を失いレッドブルはワンツーを逃した。
 
だが後方からフェラーリが追ってきている状況で、フェルスタッペンに2回目のタイヤ交換する余裕はなかった。そこで彼はタイヤを労わる走りをするのだが、これがまた素晴らしかった。高速の右コーナーであるターン8と9で左リアタイヤを守る走りをし、彼のリアタイヤは左より右タイヤの方が温度が低いくらいだった。高速の右コーナーが多いレッドブルリンクでは左リアタイヤの温度管理が肝になるのだが、彼はそれを完璧にやってのけた。しかもタイヤを労わり終盤にフェラーリは猛追してきても余裕を持ってフィニッシュした。
 
これでこれまで彼を批判してきた人を見返したと思っているのかもしれないが残念ながら、ことはそんなに簡単ではない。フェルスタッペンはレース序盤にライコネンと接触しており、それにより順位を上げていてペナルティが出てもおかしくはなかった。さらにライコネンとの接触がもう少しでも大きければ彼のフロントウイングは壊れて彼は優勝することはなかっただろう。
 
そういう意味では彼の優勝を手放しでは喜べない理由がここにある。彼にはワールドチャンピオンになれる才能があるだけに、ここをどう改善するのか。ぶつかった後に相手を非難しても失ったポイントは帰ってこない。
 
 
▽調子の戻らないトロロッソ
今回はマシン側にアップデートのあったトロロッソだったが、順調な週末とは言えなかった。
 
予選ではガスリーがQ2進出したが、ハートレーは予選19位だったので予備のPUを作るために交換した。19位からペナルティで後退しても失うものはあまりなく、実際アロンソがピットスタートだったのでスタート順位は19位のままで変わらなかった。
 
レースではガスリーが序盤にバンドーンと接触してフロアを痛めた。その為ダウンフォースを失いコーナーでスライドしまくりタイヤの磨耗が激しかった。レースはメルセデスのリタイアなどもあり入賞圏内にいたが最後にタイヤがなくなりアロンソやザウバーなどに抜かれて11位でフィニッシュ。
 
ハートレーも日曜日にセットアップを少し変更したところ、見違えるようなペースで走れて入賞目前だったのだが、マシンのリアに異常が出てリタイアとなった。これはホンダのPUのトラブルではないようだ。
 
それにしても入賞目前だったので、とても残念な週末となった。
 
ちなみに今回からルノーも予選モードを解禁した。これで予選モードを使用していないのはホンダだけ。中団争いは0.1秒を争うからホンダも予選モードの投入が待たれる。