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パワーで圧倒したベッテル ベルギーGP観戦記

 
やっとベッテルが勝った。これまでも最速のマシンを持ちながら、2レース続けてミスで勝利を失ってきたベッテルとフェラーリ。ドイツ、ハンガリーと勝てるレースを落とし、チャンピオンシップもハミルトンにリードされながら迎えたベルギーGPは絶対に落とせないレースだった。
 
だがその勝たなければならないレースも出だしはハミルトンが有利な状況だった。予選Q1,Q2はフェラーリが速くトップタイムを記録。ポールポジションもフェラーリで決まりかと思われたが、ここでまたも雨が降り始める。雨は最初強く降り始めたが、その後弱くなる展開。
 
最後にアタックした方が有利な状況だが、ここでフェラーリはお馴染みのミスをする。ハミルトンが最後のアタックで暫定ポールの位置につける。ところがライコネンは燃料が切れて、一番大事な最後のアタックをすることができず6位に沈む。ライコネンはポールを狙えるほどの速さがあり、6位でなければスタート直後のリカルドとの接触もなかったことを考えれば、このフェラーリのミスは痛かった。
 
そしてベッテルは最後のアタックでデプロイが切れる失態を演じて、ハミルトンを逆転することができなかった。路面状況はどんどんよくなっていたので、普通に走ればベッテルのポールは確実だっただけに、ここでもフェラーリのミスが目立った。
 
迎えたレースは快晴。スタートはポールのハミルトンがリードを奪うが、ここでフェラーリのパワーが炸裂。オールージュを登り切ったところでハミルトンに仕掛けて、あっさりとオーバーテイク。ハミルトンは為す術がなかった。実は昨年も同じようにベッテルがハミルトンに仕掛けているのだが、この時はハミルトンが抑えきっている。
 
 
つまりこの一年でフェラーリはメルセデスよりもパワー競争で優位に立っていると言うことである。しかもスタート直後なのでDRSは使えない。さらにフェラーリは坂を登り切った直後には、メルセデスのすぐ後ろにつけている。普通はスリップストリームを利用し、ストレートの後半に抜くのが普通である。だがフェラーリはストレートの前半で簡単にハミルトンを抜いていった。
 
オウルージュの坂はとても急な上り坂なのでパワーの差が出やすい。そこで一気にメルセデスに迫り、簡単に抜いていったフェラーリのパワーは、メルセデスをかなり引き離しているとみて良いだろう。実際フェラーリはパワー全開率の高いセクター1と3でメルセデスより速く、メルセデスはコーナーの多いセクター2でのみフェラーリより速かった。
 
しかもスタート直後の多重クラッシュでセーフティカーが登場したのだが、これがベッテルがハミルトンを抜いた直後だったのもフェラーリには幸運だった。
 
ハミルトンがベッテルに仕掛けるタイミングは、リスタートのシケイン飛び込みしかなかったのだが、ここで飛び込んでミスをすれば、ハミルトンはフロントウィングを壊す可能性もあった。そうすると彼はチャンピオンシップのリードを失いかねないので、ここはしっかりと自重してアタックしなかった。ここはさすがのチャンピオンである。もっともストレートスピードはフェラーリが速いので、ここで抜いてもこの後のストレートで再び抜かれていた可能性が高かったのだが。
 
例年はタイヤに厳しいはずのスパではあるが、今年のタイヤは耐久性が高いのでこのレースも上位勢はワンストップレースとなった。ここではフェラーリはよく自重して、メルセデスが動くまでタイヤ交換を我慢した。トップを走るベッテルが先に動く必要はない。
 
もしベッテルが先にタイヤ交換するとハミルトンは恐らくもう少しステイアウトしただろう。なぜならコース上で抜けないので、SCやVSCが出ることを期待するしかない。SCやVSCが出ればタイヤ交換する際のロスタイムを大幅に減らすことができる。だからベッテルは先にはタイヤ交換することはできなかった。
 
そうしてハミルトンがタイヤ交換した次の周にベッテルもタイヤ交換する。アウトラップを新しいソフトタイヤで猛追を仕掛けるハミルトンだったが、フェラーリも素早いタイヤ交換をしてハミルトンの前を走っていたフェルスタッペンの前でベッテルを戻すことに成功した。これは素晴らしい仕事だった。もしフェルスタッペンの後ろで戻っていたらハミルトンの猛攻撃を受けるところであった。
 
 
この時点で事実上のレースは終わった。だが元々パワーに劣るメルセデスがこのレースで勝つことは難しかった。ライコネンも好調だったので、フェラーリの予選でのミスがなければフェラーリの1-2もあり得た。それだけにハミルトンは2位を得たことにある程度は満足していると思う。
 
次のモンツァも高速パワーサーキットであり、フェラーリが有利となる。メルセデスにとっては守りのレースが続く。フェラーリとしてはなんとしてもライコネンを2位にさせて、少しでもベッテルとハミルトンとの差を縮めたいところだが、果たしてフェラーリはミスをせずにイタリアGPを終わらせることができるのだろうか。
 
 
▽高速スパで入賞したトロロッソ・ホンダ
シーズン中で最もタイムにパワーの影響力が大きいスパだけに、トロロッソ・ホンダとしてはあまり期待はしていなかった。だがここでガスリーは9位入賞。予選でもガスリー11位、ハートレー12位と健闘を見せた。
 
2台はタイヤ戦略を分けた。ガスリーはスーパーソフトで、ハートレーはソフトを履いてスタートした。ガスリーはスーパーソフトの蹴り出しの良さに賭けた。そしてガスリーは10位スタート(ボッタスがペナルティで下位スタートだったので予選より一つ上のポジションからスタートした)から1周目に8位に上昇。さらに彼は柔らかいスーパーソフトを長持ちさせる自信もあった。ガスリーは当初予定より大幅に遅い25周目にタイヤ交換。
 
途中スピードの全然違うボッタスには抜かれたが、エリクソンは抑えて9位でフィニッシュできた。不利とみられたスパで入賞ができたトロロッソ・ホンダ。しかも周回遅れにもならず、単なる幸運だけではなく、実力で勝ち取った入賞となった。
 
次のモンツァもシーズン中屈指の高速パワーサーキットである。ここでも結果が残せるようであれば来年に向けて、希望が持てる。