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ベッテル メルセデス行きの可能性

今シーズン終了後のフェラーリ離脱を発表したベッテルが来年メルセデスと契約するのではとの報道があります。
本当にベッテルがメルセデスに行く可能性はあるのでしょうか。
 
結論から言うと行く可能性はあるけど、その可能性は低いし、それはハミルトン次第でベッテルには決定権がないと思います。
 
まずハミルトンのメルセデスとの契約は今シーズン末に終了します。
当然、交渉が始まっていても良い時期ですが、コロナウィルス大流行によりF1も開幕できておらず、まだ始まっていない状況です。
 
ライバルチームが来年のドライバーを続々と決めているので、メルセデスも早く動きたいはずですが、その気配はありません。
その理由は基本的にハミルトンは来年以降もメルセデスで走りたいし、メルセデスもハミルトンを走らせたいからです。一時期ハミルトンがフェラーリに行くという噂もありましたが、これは0.1%も実現性はなかったと思います。
 
となるとあとは条件面での交渉だけになります。
 
ハミルトンとチームの思いは同じなので焦る必要はないのです。ただハミルトンが気にしているのはメルセデスが来年以降もワークス活動を続けるのかどうかだと思います。だからハミルトンはチーム側に参戦継続の確約を取りたいでしょう。ただチーム側は正直メルセデスが今後どのような意志決定をするのかわからないので、約束したくても約束できない状況になっています。
 
コロナウィルス大流行で世界中の自動車メーカーは大きな影響を受けています。メルセデスも例外ではありません。一般の認識と違い自動車メーカーは大企業だから安泰ではなく、大企業が故に固定費の負担が大きいので、自動車が売れなくなれば途端に巨額の赤字を抱えることになります。
 
コロナウィルス大流行で経済成長がダウンし、失業率が上がり、所得が減れば、誰がどう考えても高額なクルマが売れる理由はありません。
 
しかもメルセデスは取れるタイトルはすべて取り尽くしているわけですから、今年限りで撤退してもおかしくはありません。そうするとハミルトンは契約を焦る必要はありません。メルセデスが態度を決めてから交渉すればいいのです。
 
つまりベッテルがメルセデスと話をしたとか、トト・ウルフがベッテルの可能性を示唆したとしても、それはあくまでもハミルトンとの交渉がうまくいかなかった場合のひとつのオプションとして話をしているわけです。
 
ハミルトンは現在のコロナウィルス大流行下でのレースができない状況に、かなりストレスを感じているようです。そうであれば彼もまた取れるタイトルは全て取っているわけですから、今年の末で引退しても何の不思議もありません。
 
だからハミルトンの契約が決まらないことには、ベッテルは動きようがない状況です。どのみちベッテルにとってはメルセデスと契約する以外には競争力のあるマシンを手に入れるチャンスはないわけですから、どれだけ待たされようとも待つしかないのです。
 
ではボッタスの状況はどうなのでしょうか。以前の記事でボッタスは来年以降も安泰と話しましたが、それはトト・ウルフがメルセデスにいればという条件付になります。トト・ウルフといえどもメルセデスに雇われている代表に過ぎませんから、いつ辞めてもおかしくはありません。今年契約の切れるボッタスが他のチームと話をするのは、おかしな話ではありません。
 
メルセデスはハミルトンの契約が決まらないとボッタスとの契約はできないでしょう。トト・ウルフの状況も気になりますし、メルセデスのJrドライバーも虎視眈々とボッタスのシートを狙っています。
 
であればボッタスとしてもメルセデスと契約交渉する前に他のチームと話をして感触を確かめとく位のことをやるのは、F1の世界では普通のことです。
 
ドイツ企業のメルセデスがドイツ人のベッテルを乗せたがっているという報道もありますが、メルセデスほどの多国籍企業が国籍だけでドライバーを選ぶことはありません。
 
ほとんど全てのトップチームのシートが埋まった現在、残っているのは誰もがうらやむメルセデスのシートだけです。だがこのシートはメルセデスとハミルトンの話し合いが決着しない限り、動かないでしょう。
 
そしてハミルトンはシーズンを経過しながら、契約交渉をしていくことになるでしょう。ハミルトンが尊敬するニキ・ラウダもいなくなっていますし、ハミルトンが引退しても不思議ではありません。
 
ベッテルの未来はすべてハミルトンとメルセデスに掛かっています。