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2006 Rd.10 アメリカGP観戦記

本来であれば、フェラーリ完勝と書くべきだが、今回ばかりはブリヂストンが勝ったと言ってもいいだろう。 それほど、ブリヂストンのパフォーマンスはずば抜けていた。 元々、ブリヂストンはここインディアナポリスを得意としており、これで7連勝となった。 これはやはりオーバルコースでの経験の差なのだろう。 さらにミシュランは昨年の撤退騒動で、今年はかなり保守的なタイヤを持ち込んだ可能性が高い。 ここまで差が開くとアロンソもなすすべなし。 彼の連勝もストップした。 ミハエル・シューマッハーはタイヤの力もあり、余裕でポール・ポジション。 三位のフィジケラを1秒近く引き離す、圧倒的な速さだった。 スタートでマッサの先行を許し、アロンソのアタックを受けたが、それをかわした後は、余裕の走りでルノー勢を引き離す。 だがここで、一つの疑問が浮かび上がる。 第一スティントを順調に走行していたマッサのインラップが3秒も遅かったのだ。 なぜだ? 理由はわからない。 フェラーリは当然、チームオーダーを否定している。 これはレギュレーション違反だからだ。 だが、このチームは皇帝ミハエル・シューマッハーのチームであることははっきりしている。 これを見たらキミ・ライコネンも気が変わるかもしれない。 疑惑のインラップでマッサをかわしたシューマッハーは、レースを完全にコントロールして圧勝。 マッサも二位で、1-2フィニッシュを成し遂げた。 終わってみるとフェラーリ独走で、昨年と似たようなレース展開だったと言えなくもない。 ブリヂストンがいかにすごかったかは、他のブリヂストンユーザーを見ればわかる。 佐藤琢磨がスーパーアグリでのベストグリッド18位をゲット。 もう少しで第二ピリオドが見えていた。 そしてミッドランドはなんと二台とも第二ピリオド進出という快挙なしとげた。 まだまだブリヂストン勢の攻勢は続く。 ピットスタートのツゥルーリは、三位フィジケラと僅差の4位。 これには上位勢のリタイヤに助けられた面もあるが、ブリヂストンタイヤの性能とワンストップ作戦が上手くはまった。 ツゥルーリは予選第一ピリオドでリアサスペンショントラブルに襲われ、車高が落ちてしまい満足なアタックができず、ピットスタートを選択。 これが幸いし、スタート直後のクラッシュに巻き込まれなかった。 燃料が重くても、他のマシンと遜色のないタイムを記録してあと少しで表彰台だった。 ラルフ・シューマッハーも終盤まで5位を走行。 この時点で、上位5台中4台がブリヂストン装着マシンだった。 惜しくもラルフ・シューマッハーはリタイヤとなったが、ブリヂストンにとっては満足いく結果だろう。 アロンソも今回は、フェラーリが1-2フィニッシュすることを前提に、予選から三位狙い。 終始、ハンドリングが安定せず、5位なるのがやっとだった。 これでミハエル・シューマッハーとの差は6ポイント縮まり19ポイント差。 ただ、ここは特殊なコースなので、次のレースを見てみないと今後の展開は占えない。 次はミシュランの地元フランスなので、必ず巻き返してくるだろう。 ▽苦しいルノー ルノーは金曜日から苦戦していた。 セットアップがうまく決まらず、ハンドリングに問題があったからだ。 いつもは土曜日の予選までにはなんとかしてくるのだが、今回は上手くいかなかった。 特に序盤、アロンソが速いフィジケラを押さえ込んでいたために、みすみすフェラーリに独走を許す結果となってしまった。 アロンソは終始、ハンドリングの不調を訴えてペースが上がらない。 彼は土曜日の予選で、アンダーステアに悩まされていて、予選5位に沈んだ。 そしてレース前に、ウィングとタイヤプレッシャーを変更したところ、裏目に出た。 今度はひどいオーバーステアになってしまったのだ。 全くペースが上がらないアロンソは、何とかコースにとどまり続けて何ポイントかを拾うことしかできなかった。 しかし、ルノーにとってそんなに悲観する必要もないだろう。 もっと最悪のケースも考えられたからだ。 ラルフ・シューマッハーのリタイヤで1ポイント余分に取れた。 さらにブリヂストン装着ユーザーのウィリアムズが不調だったことも助かった。 ニコ・ロズベルグは予選19位に沈み、予選12位スタートのウェバーはスタート直後のマルチクラッシュでリタイヤした。 ウィリアムズはブリヂストンタイヤの優位性を活かすことなくレースを終えてしまった。 そう考えると、まだまだルノーのつきは落ちていない。 ▽マクラーレン自滅 スタート直後の混乱で一番の被害者はマクラーレンだった。 マルチクラッシュの中で、モントーヤがライコネンの後ろに突っ込み、マクラーレンはこれで二台ともリタイヤ。 この衝突、モントーヤによるとホンダと接触したのでこうなったらしいが、またもいいところを見せられなかった暴れん坊。 ここアメリカGPではファンも大挙押しかけてくるだけに、彼らをがっかりさせてしまった。 ライコネンは大量の燃料を積んでいたにもかかわらずいいスタートを切れたが、後ろから突っ込まれれば、避ける方法はない。。 だが、この結果はそもそも予選で上位に入れなかったのが原因であり、そういう意味では今回のマクラーレンは競争力がなかった。 ▽ホンダ&スーパーアグリ ホンダはバリチェロが予選4位に入るスピードを見せたが、決勝レースでは淡々と走りきり6位に入賞。 バトンはスタート直後のマルチクラッシュで早々に消えた。 とりあえずカナダGPまでの悪い流れは止められたが、安心できる結果ではない。 と言うのもここは直線が長いコースであり、ダウンフォースが少ないホンダとしては、若干有利に働いたようだ。 もちろんインフィールドセクションでは、苦しいのだがそれを補って余りある効果をもたらした。 ホンダとしてはうれしいやら、悲しいやら、わからないのだが。 ホンダは現在、組織の大改革を断行中。 ジェフ・ウィリスがテクニカル・ディレクターの職から外れ、中本修平氏が代わりにその職を引き継ぐ。 彼は二輪のレース経験が長いが、四輪は市販車の経験もない。 だからジェフ・ウィリスがホンダを離れた場合、その仕事を引き継ぐことはできない。 その場合、別の人間をデザイン部門のヘッドにつけなければならない。 それを内部から昇格させるのか、外部から連れてくるのか? どちらにしても優秀なデザイナーは不足しているのが現状である。 ジェフ・ウィリスを説得して留任させるにせよ、別の人間を後任に据えるにしろ、これが彼の重要な初仕事になろう。 スーパーアグリは佐藤琢磨が過去最高の18位グリッドからのスタートとなった。 モンタニーはスタート直後のマルチクラッシュにも巻き込まれリタイヤしたが、琢磨は順位を大幅にアップ。 しかし、セーフティーカーが入った直後にモンテイロのインに飛び込むが接触、そのままリタイヤとなった。 元のマシンが直線番長のアロウズだったこともあり、ここインディアナポリスではいい走りが見られそうだっただけに残念。 完走が9台と少なかったので、最後まで走れば面白かったのだが。 トロロッソのリウッツィもラルフ・シューマッハーのリタイヤから恩恵を受けた。 これが9位を走っていたトロロッソに初の入賞をもたらした。 また兄弟チームであるレッドブルのクルサードも17位スタートからスタート直後の混乱も切り抜け、決して速くはないマシンをなんとか操りながら2ポイントをもたらした。 これでレッドブルはコンストラクターズでウィリアムズを逆転。 本当、クルサードの走りはいぶし銀のようだ。 何はともあれ、アメリカGPが無事に終わってホッとした。 昨年の騒動にめげずに来たファンに感謝すべきだろう。 次はルノーとミシュランの地元、フランスGP。 シューマッハーの逆襲なるか、アロンソが押し返すか注目のGPになりそうだ。

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