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アメリカGPウラ観戦記 アロンソ敗北の真相

▽ミシュランの危機再び 10万人以上の観衆が来場したアメリカGP。 ミシュランの無料チケット配布作戦の効果もあり、昨年の大惨事を思い出すと、大成功と言えるのではないだろうか。 しかし、その裏で危機的な状況が発生していたことはあまり知られていない。 実は今回のGPでも、ミシュランタイヤにはトラブルが発生していた。 今のレギュレーションでは、各チーム二つのタイプのタイヤを持ち込んでいる。 各チームが持ち込むタイヤの種類は同じではない。 各チーム、自分たちのマシンに合うタイヤを事前のタイヤテストで選んで持ち込んでくる。 ミシュランが持ち込んだある構造のタイヤを金曜日のフリー走行後に確認したところ、数台のマシンにタイヤ表面の剥離が確認された。 これは昨年のようにいきなりバーストするような深刻な事態ではないが、そのまま走行を続けると危険なのはかわりがない。 そこで、ミシュランはこの構造を持ち込んでいたチームにこのタイヤの使用した場合、安全を保証できないと告げた。 この構造のタイヤを使用していた一つがルノーだった。 しかも、ルノーは予選、決勝でこのタイヤを使用する予定だった。 ところが、フィジケラのタイヤにも異変が見つかり、結局ルノーはタイヤを変更することにした。 選択の余地がないルノーは、もう一つのタイヤを選択した。 しかし、それはルノーにはあわなかった。 予選ではアンダーステアがでてアロンソは5位になるのがやっと。 そして、アンダーステアを消そうと、決勝スタート直前にタイヤプレッシャーとウィングの角度を修正。 ところが、これが裏目に出て、決勝ではひどいオーバーステアに悩まされた。 とにかくどこのコーナーでもオーバーステアが出るのだから、勝負にならない。 レースが進むにつれ、リアタイヤの摩耗がひどくなりますますオーバーステアになるという悪循環。 さらにカナダGPで酷使したエンジンがパワーダウンしてきた。 バンクと長い直線が続くインディアナポリスでパワーが落ち、低速なインフィールドではオーバーステアが出てはまともに走ることは難しい。 それでもアロンソはスピンすることもなく、淡々と走り続けた。 結果的にラルフ・シューマッハーやバトンのリタイヤ、マクラーレン、ウィリアムズの自滅、などもあり、5位入賞を果たした。 アロンソが表彰台を逃したのは、今シーズン初だが、他のどのレースよりもタフなレースだったはずだ。 私がアロンソとルノーにとってこの結果は悪くないと言うのはこういう理由があるからだ。 さらにこのサーキットは特殊なサーキットであり、次のフランスGP以降は普通のサーキットに戻るので、ミシュランもルノーも以前の力を発揮してくるだろう。 もし、次でもブリヂストンタイヤが今回のようなパフォーマンスを見せれば、チャンピオンの行方はわからなくなるが、それはあり得ない話しだ。。 ▽ホンダの健闘 ホンダのタイヤにも問題は発生していた。 金曜日にアンソニー・デビッドソンが走行した固めのプライムタイヤでゴムの剥離が発生。 二回走行して、二回とも同じ現象が発生したので、ホンダはこのタイヤの使用を止めた。 ただホンダは軟らかいオプションでも耐久性に大きな問題がないことを確認していたので、レースには影響がなかった。 ホンダはバリチェロが軽い燃料で予選4位、バトンは燃料を積んで予選7位。 両方ともそんなに悪い結果ではない。 気温が上昇したこともホンダに味方した。 タイヤの温度上昇が鈍いホンダには、気温が高かったことで有利に働いた。 ただホンダも走行を続けるとリアタイヤの摩耗が速く進み、オーバーステアがひどくペースが上げられなかった。 もしバトンが最初のマルチクラッシュでリタイヤしていなければ、アロンソより前でフィニッシュできていた可能性はあった。 ちなみにマクレーレンはルノーやホンダとは違う構造のタイヤを選択していた。 彼らが最後まで走っていたら、どうなったかは興味深い。 ▽ブリヂストンの経験 ここインディアナポリスは長い直線と低速なインフィールドセクションがバンクでつながっている。 直線が長いので各マシンのウィングはかなり寝ている状態での走行となる。 だが低速コーナーの多い、インフィールドセクションではグリップが欲しい。 だがウィングは寝ている。 そうなるとタイヤはできるだけ柔らかいグリップ重視のタイヤを持ち込みたい。 だがここで、一つ問題がある。 インディアナポリスにはバンク部分があるため、他のサーキットとは比べものにならない位のストレスがタイヤにかかる。 これが昨年のミシュラン撤退騒動を引き起こしたことは記憶に新しい。 そのストレスがタイヤに発熱をもたらす。 高温になるが、できるだけやわらかいコンパウンドを使用したいタイヤメーカー。 このやわらかいコンパウンドと耐熱性のバランスを取るのが非常に難しいのがここインディアナポリスなのだ。 そこのバランスのノウハウをブリヂストンタイヤは持っている。 それはファイアストーンタブランドでオーバルコースでの経験がミシュランより遙かに豊かだからだ。 ミシュランには昨年のデータがなかったことも痛かった。 ミシュランタイヤは今年、昨年の二の舞を避けたかったこともあり、耐久性重視のタイヤを持ち込んだ。 それでもこのような事態になってしまった。 ミシュランは一昨年もラルフ・シューマッハーやアロンソのクラッシュを引き起こしている。 やはりこのサーキットは特殊なのだ。 今回のブリヂストンは昨年と同じ構造のオプションと、さらに攻めたコンパウンドを搭載したプライムという二種類のタイヤを持ち込んだ。 このプライムタイヤが今回、完全にコースと気温にマッチした。 その為、ミハエル・シューマッハーはフィジケラに予選でも決勝でもほぼ1秒近いアドバンテージを得ることができた。 ほぼ全てのブリヂストンユーザーがこのプライムタイヤを選択した。 スーパーアグリF1の佐藤琢磨が予選18位になったのもこれが大きな理由だ。 元々、旧式のマシンを使う彼らのダウンフォースは現在レベルには遠くおよばない。 それが直線が長いインディアナポリスでは有利になった。 彼の予選のトップスピードは10位だ。 低速なインフィールドセクションはブリヂストンタイヤと佐藤琢磨のがんばりで、なんとかしのいでこの結果をもたらした。 と言うわけで、今回のアメリカGPは外から見ているほど簡単ではなかった。 もしかしたら、昨年の二の舞になっていた可能性もゼロとは言えなかったからだ。 何はともあれ、今年のレースが無事に終わったことを素直に喜びたい。 来年はブリヂストンタイヤのワンメイクだから、このような問題に悩まされることもないだろう。

One thought on “アメリカGPウラ観戦記 アロンソ敗北の真相

  1. あにやん

    仙太郎さん、こんにちは
    いつも、深い洞察のある文章を楽しませていただいております。
    今日配信されたメルマガの内容が、タイトルと食い違っていて
    前回配信されたものと同じ内容だったようです。
    というわけ、ここに来て読ませていただきましたが
    ライコネンの移籍情報とか、他にもいろいろ読むところがあってよかったです。
    「災い転じて福となす」ですね。

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