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予選モード禁止はレースを面白くするのか?

ベルギーGPからパワーユニットの予選モード禁止がFIAから各チームへ通達された。彼らは目的はメルセデスの予選での速さを抑制して、レースを面白くさせたい意図があるのでしょう。では予選モードを禁止すればレースを面白くなるのであるのでしょうか。

今のメルセデスはサーキットの特性や長さにも寄りますが予選で平均0.9秒ほどのギャップをメルセデスを追いかける一番手であるレッドブル・ホンダに対して持っています。そのうちPU側が持っているアドバンテージは0.2秒から0.3秒ほどではないかと考えています。つまり今のメルセデスのアドバンテージの大半は車体側、すなわち空力的なアドバンテージから来ていると思っています。

その一端は先日のブログで紹介させていただきました。
メルセデス 驚速の秘密
https://blog.passion55.com/archives/11382

実際、ホンダもメルセデスには追いついてはいませんが、差をかなり縮めているのは確かです。そんなに大差がついている状況ではありません。そうであるならばパワーユニット側の予選モードを禁止しても、予選でのタイム差は縮まりますが、スタート順位を大きく変えることはないでしょう。予選では0.1秒でもライバルより速ければいいわけですから。それにレースでも0.4秒ほどの差がレッドブルとの間にありますから、予選順位に変化がなければ決勝レースでも大勢に影響はないですよね。

実際、メルセデス陣営は余裕の構えを見せています。ハミルトンは「明らかに私たちを遅くするためのものだけど、彼らが望む結果をえるとは思わない」と語っていますし、メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウルフは、予選モードの禁止はむしろレースにおける競争力の向上につながるだろうと余裕です。

しかも「予選の数周でパワーユニットが負うダメージを防ぐことができれば、Q3とレースの一部ラップでのダメージは劇的に下がる」とまでトト・ウルフは言いました。つまり全く影響はないし、なんならうちらに有利な変更だよと言っているわけです。

それにどうやって予選モードだけを禁止するのかと思っていたら、予選モードを禁止するのではなくて、予選から決勝レースがゴールするまでモードの変更を認めないようにするようです。これはマシン側のセットアップが予選Q1出走したら、その後変更できないのと同じです。

ただどうやってPUのモード変更を検知するのかという問題があり、今はそこで止まっているようです。なので今日の時点ではベルギーGPからのPUモード変更禁止の適用はなく、イタリアGPまで延期されるようです。

それは当たり前と言えば当たり前で、これまでPUモードは変更可能という前提で予選・レースを走らせてきたわけですから、モード変更が禁止された場合、どのモードにすれば予選・決勝を適切に走れるのかは、これからシミュレーションして決めていかなければならないわけで、ある程度の時間が必要です。

これは単純にパワーを落として走ればいいという単純な話ではなく、パワーや燃費、エンジンへのダメージ等を考えて、もっとも競争力のあるモードを選択しなければいけないので、パワーユニットメーカーにとっては頭の痛い問題でしょう。

モード変更を禁止すると言っても、どこまで禁止するつもりなのでしょうか。ガソリンのミクスチャーなんかは変更できるんでしょうか。もしゴール直前で燃料が少ない場合はどうすればいいのでしょうか。一切変更できない場合、ガス欠で止まれと言うことなんでしょうか。リフト&コーストを多用して燃費を稼ぐのでしょうか。

小さなトラブルがあった場合でも、性能を下げてパワーユニットを守ることができず、エンジンから白煙を上げてリタイヤしてしまうのでしょうか。そんなレースをファンは望んでいないと思います。

こんな本質でないことに労力を使うより、もっと本質的にレースを面白くするような取り組みを期待したいものです。