2006 Rd.13 ハンガリーGP観戦記 バトン&ホンダ 優勝の舞台裏
▽ホンダ39年ぶりの優勝
ホンダが単独参戦では39年ぶりの優勝を果たした。
ドライバーは、これが初優勝となるバトンだ。
ホンダにとっては2000年から参加した第三期活動では、初優勝となる。
本来であれば、諸手を挙げて祝福したいことだがなぜか素直に喜べない自分がいる。
だが、それについては最後に話そう。
▽やはり主役はアロンソ&ミハエル
ホンダが39年ぶりの優勝をかざった劇的なレースだったが、やはりレースの主役はチャンピオンを争うこの二人。
フェルナンド・アロンソとミハエル・シューマッハーだ。
信じられないことに、フリー走行でのルール違反で、この二人に予選の全タイムに2秒加算されるペナルティが下された。
これにより、アロンソは予選15位に沈んでしまった。
ミハエル・シューマッハーは驚異的な18秒台のタイムを刻みながらも、第二ピリオドで脱落。
11位からのスタートとなる。
だが、今週末も全体的にブリヂストンタイヤは好調を維持しており、ミハエルよりアロンソの方が厳しいレースとなりそうだった。
ところが明けて日曜日、21年間にわたり開催されてきたハンガリーGPで初めて雨のレース。
これで昨日までの実績はなくなり、まったく先の読めないレースになる。
特に雨のレースにめっぽう強い、ミハエル・シューマッハーがどこまでいけるかが注目だった。
しかもこのアロンソとミハエルは、予選第二ピリオドで脱落したので、燃料搭載量を自由に決められることも有利に働く。
スタート直後はミハエル・シューマッハーの快進撃が続き、瞬く間に4位まで上昇。
どこまで行くのかと思われたのだが、ここまでミハエルの快進撃に急ブレーキがかかる。
気温が高いことを予想して持ち込んだブリヂストンのインターミディエイト(スタンダードウェット)タイヤが気温が低い状態で、全く機能しない。
この状況では、ミシュランのインターミディエイトタイヤが圧倒的に速かった。
そこで驚異的なスピードを見せて追い上げてきたのがアロンソだった。
予選15位スタートのアロンソは、直前にいるはずの予選13位のクリエンがピットスタートする幸運もあり、スタートでジャンプアップ。
ミハエル・シューマッハーをかわす勢いだったが、スタート直後の混雑の中で接触する危険を冒さず少し後退して1コーナーに飛び込んだ。
このあたりの冷静な判断はさすがと言うしかない。
その後の追い上げて、粘るミハエル・シューマッハーをアウトからかわし、2ストップのマシンがピットインする間に、トップへ駆け上がる。
ミハエル・シューマッハーは次々とミシュランユーザーに抜かれていく。
それでもミハエルは必死の抵抗を試みていたが、フィジケラに1コーナー入り口で抜かれ、立ち上がりでインから抜き返そうとした際に、フロントが急にアウト側にスライドし、フィジケラのリアタイヤとミハエルのフロントウィングが接触、ミハエルのフロントウィングが脱落して、ほぼ一周し大きなタイムロスの後、ピットイン。
さらに大きく順位を落としてし、アロンソに周回遅れにされてしまった。
ここでミハエル・シューマッハーのハンガリーGPは終わったかに見えたのだが、ここでミハエルに幸運が訪れる。
ライコネンがリウッツィに激しく衝突、セーフティーカーが導入され、アロンソなどの上位勢が続々ピットイン。
フロントウィング交換の際に燃料補給していたミハエルはそのまま走行を続け、一時はセーフティーカーに頭を押さえられていたが結局、同一周回に戻り約60秒アロンソとの差を縮めることに成功した。
アロンソにとっては2位とあった40秒の差を失った上に、セーフティーカー導入中に雨が上がり、路面がどんどん乾いてくるという不運もあった。
こうなるとアロンソにとっては不利な条件となる。
ルノーは他のマシンよりタイヤが暖まりやすい。
一方、この時点で2位につけていたホンダはタイヤが暖まりにくい欠点を抱えていた。
本来であれば、気温の低いコンディションではルノーの方が有利なのだが、雨が上がっても第二セクターがなかなか乾かないためにドライタイヤに交換できない。
インターミディエイトタイヤはドライコンディションで走ると温度が上昇してしまうので、ここでホンダの欠点が有利に働いた。
逆にルノーのアロンソはペースが上がらない。
瞬く間にアロンソの後ろまで追い上げたバトンだが、アロンソも譲らない。
そこでホンダ陣営は先にピットインさせて、追い上げさせる作戦に変更。
重量が重くてもアロンソより速いとの判断からの作戦だ。
実際に、燃料を積んだバトンはアロンソより速く差を縮めてくる。
本来であればアロンソはバトンの直後にピットインして、ポジションをキープするのが、追い抜きが難しいハンガロリンクの作戦なのだが、アロンソとルノーはさらに深い読みがあった。
それはここまま行けば、必ずドライタイヤで走れるコンディションになると予想し、燃料が持つだけ走ってドライタイヤに交換する作戦だ。
そうすれば、バトンはもう一度ピットインしなければならず逆転できる。
しかも、この寒い気温の中で、ドライタイヤで走れば、ホンダのマシンはタイヤの温度不足でペースが上がらないはずだから、発熱のいいルノーの方が速いはず。
完璧な作戦に思われたのだが、たった一つのミスからこの作戦は崩れた。
アロンソが最後のピットインした時に、右リアタイヤのナットを完全に締めずに送り出してしまい、右リアタイヤがきちんと装着されていないアロンソはそのままコースアウト、クラッシュしリタイヤ。
今シーズン初のノーポイントと終わった。
ここまでほとんどミスのなかったルノー陣営が珍しいミス。
これがなければミハエルとの差を決定的なまでに広げられていただけに、悔やんでも悔やみきれないミスとなった。
だが、これもミハエル・シューマッハーが着実に差を詰めてきているから来るプレッシャーだ。
そういう意味ではミハエルの見えない影に怯えたとも言えよう。
▽終盤まさかのストップでノーポイントが一転
これでトップはホンダのバトン、2位は乾燥してきた路面でペースを上げてきたミハエル・シューマッハー。
レース終盤にミシュラン勢は続々とピットインし、ドライタイヤにスイッチ。
だが、ミハエル・シューマッハーはインターミディエイトで走行を続ける。
結果的にこの作戦は失敗した。
後方から追い上げてくるデ・ラ・ロサと激しく競り合い、3位に落ちた後、さらにハイドフェルドに追い抜かれ4位に後退した時点で、スローダウン。
ハイドフェルドと争う中で、接触があり、ミハエルはトラック・ロッドを破損し、ハンドリングが効かなくなってしまい万事休す。
アロンソとの差を縮める機会をみすみす失ってしまう。
もし、安全策を見てミハエルがドライタイヤの交換するために、ピットインしていても3位か4位は確実だった。
アロンソがリタイヤしている状況では、確実にポイントを獲得すれば、さらにアロンソ&ルノー陣営にプレッシャーをかけられた。
それが8ポイントにこだわった為に、結局ノーポイント。
タイヤ交換していないミハエルはデ・ラ・ロサとハイドフェルドにはかなわなかったのだから、彼らを先に行かせてペースダウンしてマシンをいたわった方が良かったと思うのは結果論ではない。
このリタイヤで両者の差は変わらず、残り5戦で11ポイント差。
ミハエル・シューマッハーの自力チャンピオンの可能性は、またも消滅してしまった。
(と、思ったらレース後の車検で、7位に入ったBMWのクピカが最低重量を2kg下回っていたことが発覚し、失格。これにより8位のマッサと9位のミハエル・シューマッハーが繰り上げとなり、ミハエル・シューマッハーはまさかの1ポイント獲得で、再び自力逆転チャンピオンの可能性が出てきた。まさに大混乱のハンガリーGPを象徴するような結果となった。)
▽バトン初優勝、しかし…..
その後はバトンが余裕の走りで彼自身の初優勝を飾った。
彼にとっては113戦目の初優勝だった。
ホンダにとっては、1967年第9戦イタリアGPでジョン・サーティースが獲得して以来、39年ぶりとなる。
彼自身は非常に速くてスムーズな走りのできるいいドライバーなのだが、マシンに恵まれずにここまできた。
だから、彼が勝ったことは何の不思議もない。
この複雑なコンディションの中で、素晴らしい走りだった。
だが、私の胸の中には素直に喜べない気持ちがあることも正直に、話さなければいけないだろう。
F1で勝つことは難しい。
だからどんな形であれ、勝つことは素晴らしいし、ここまで努力を積み重ねてきた人たちの苦労は計り知れない。
決して棚ぼたで優勝したなどと言う気はない。
バトンはエンジンを交換し、予選14位からのスタートにも関わらず、レース中盤にはアロンソに続く、2位に進出。
バトンはエンジン交換をして、優勝した初のドライバーとなった。
この雨が強くなったり、弱くなったりという微妙なコンディションの中で、確実にしかも速いドライビングは見事としか言いようがない。
ホンダは第三期F1活動が2000年から始まり、7年目の初優勝。
奇しくもバトンも2000年デビューで7年目の初優勝となった。
だから、バトンにもホンダにも心からの祝福を送りたい。
しかし、これでホンダが持っていた問題がなくなったわけではない。
旧BARメンバーがこれで安心してしまうと、さらに状況が悪くなる可能性もある。
表彰台に登っただけで、満足するメンタリティを持つメンバーが多いだけに心配だ。
これは終わりではない。
これは単なる始まりでなければいけない。
F1で勝つことはとてつもなく難しい。
だが、勝ち続けることはさらに難しい。
その困難な挑戦を続ける日本人がいることに誇りを持ちたい。
いや困難だかこそ挑戦を続けている、彼らをこれからも応援していきたいと思う。
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二度となさそげな3人の並び?
今回のホンダの優勝はすばらしい。上位陣がリタイヤしたからとの意見もあるが、別に不慮の事故に巻き込まれたわけではなく、彼らなりに精一杯戦った結果としてのリタイヤ。そんな中でホンダは2台とも上位完走。戦略もドライバーもピットクルーもマシンも良く、優勝にふさわしいレースでした。当然と言ってもおかしくない。
ジャントッドは、ともかく2輪出身の監督では厳しいかなと思っていたけど(スミマセン)とんでも無い。良くやってくれました。
時間は掛かったけど、有る意味BAR時代でなくオールホンダで勝てたのはうれしさひとしおと言う感じ。はじめて聞く君が代は意外であり新鮮でした。
今後もがんばれ! トヨタ、アグリも負けるな!
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インパクトレンチは打撃力によってねじ締めを行う工具です。ボルトやナットを回す際、手で回すよりも簡単に大きなトルクをかけることができます。タイヤホイールの締付作業を、軽々と瞬間的にこなすことができる機器です。インパクトレンチの仕