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フェラーリの復活 2022年 Rd.1 バーレーンGP観戦記

新しいレギュレーションの元での新しいシーズンにふさわしい、波乱に富んだ開幕戦。フェラーリの3年ぶりの優勝にレッドブルのリタイヤ、ハースとアルファロメオの躍進、メルセデスの失速等話題の尽きないバーレーンGPを振り返って見ましょう。

完全復活したフェラーリのルクレール

話題満載の開幕戦だったが、一番のトピックはフェラーリの復活です。3年ぶりの勝利と1-2フィニッシュ。サインツの2位はレッドブルのリタイヤがあったからですが、それでも実力で3位は走れていました。ルクレールは予選から最速で、決勝でも全体的なペースが一番でした。

レッドブルはスピード面では、問題はありませんでした。フリー走行から絶好調で、予選Q3では燃料搭載量を減らしたことにより、前後のバランスが少変わってしまい2位でしたが、フリー走行でのロングランのタイムは最速で決勝レースでもフェルスタッペンが最有力候補でした。

ところがスタートしてみると、決勝のペースもルクレールの方が優れており、タイヤ交換直後にはフェルスタッペンが一時的にトップに立つことはありましたが、全体的にはルクレールに敵わなかったです。

決勝スタート時のタイヤ選択も興味深かったですね。今年からQ2でのベストタイムを記録したタイヤを履いてスタートするルールがなくなり、上位10台もスタートタイヤを手持ちのタイヤから自由に選ぶことができます。

上位陣はスタートタイヤはルクレールを除いて中古のソフトを選択。ルクレールのみ新品のソフトでした。これは当然、スタートでの加速でトップをキープしたい狙いです。そしてその目論見は成功します。

決勝のスタートは、蹴り出しはフェルスタッペンの方が良かったのですが、その後の加速はルクレールがよく、ターン1ではフェルスタッペンが並びかけますが、ルクレールがインを死守してトップを維持してレースが開始されました。ところがロングランのペースにアドバンテージがあると見られたフェルスタッペンが徐々にルクレールに引き離されます。

このサーキットはタイヤのデグラが大きく、アンダーカット効果が大きなトラックですが、フェルスタッペンはアンダーカット圏内にマシンをとどめることができませんでした。

そして迎えた最初のタイヤ交換時にレッドブルが仕掛けます。第2スティントはミディアムかハードを履くと予想されていましたが、レッドブルは新品のソフトに履き替えてフェルスタッペンを送り出します。ルクレールは次の周に反応してタイヤ交換をしますが、ルクレールはフェルスタッペンに対抗するために新品のハードをスタートで使ってしまった中古のソフトに交換せざるを得ませんでした。

これはミディアムやハードだと、交換直後に温度を上げるのが難しく、新品ソフトを履くフェルスタッペンに対抗するのが難しいからです。実際、17周目に新品ソフトを履くフェルスタッペンは、中古ソフトのルクレールをオーバーテイクすることができました。ただルクレールも黙っていません。バックストレートのDRSが使えるところで、すぐに抜き返します。

バーレーンGP コースレイアウト

この攻防ですが、実はルクレールはターン1の手前で少し早めにブレーキングして、フェルスタッペンを先に行かせています。というのもターン1の直前にはターン3から4へ向かうストレートでDRSが使える検知ポイントがあり、ターン1の手前で早く抜いてしまうと、抜かれたドライバー(この時はルクレール)はターン3はDRSを使えます。そしてルクレールは実際に17周目と18周目の二度にわたり、この第2DRSゾーンでフェルスタッペンを抜き返しました。

17周目と18周目に激しいバトルを見せたルクレールとフェルスタッペンでしたが、19周目にはフェルスタッペンがターン1で激しくフロントタイヤをロックさせて、最初の勝負はルクレールがトップをキープして終わります。

その後もペース自体はルクレールが良くて、フェルスタッペンはアンダーカット圏内にマシンをとどめることできませんでした。特にルクレールのタイヤのデグラが低くて、周回数を重ねるごとにフェルスタッペンとの差が広がります。

フェルスタッペンはタイヤのデグラが深刻で、アウトラップであまり飛ばすなと指示が出たくらいでした。ただそのせいでフェルスタッペンはルクレールをアンダーカットすることができず、トップに立つことができませんでした。ただ全体的なタイヤのデグラ状況を考えると、フェルスタッペンが例えアンダーカットに成功したとしても、その後ルクレールが逆転していたとは思います。

ルクレールを追いかけるフェルスタッペン

トップスピード自体はフェルスタッペンの方が高く、DRSを使った状態では40Kmも速かったのですが、それでも引き離される状態でした。タイヤのデグラが良かったこと、ターン3の立ち上がりが速かったこと、ストレートが遅かったこと考える、ルクレールはダウンフォースを多めに付けていたと想像できます。そしてこのレースではそのセッティングがベストで、少しダウンフォースを削ったレッドブルより優れていました。つまりこのレースに関しては、ルクレールが最速で優勝は順当な結果と言えるでしょう。

レッドブルのリタイヤですが、現時点では燃料ポンプの故障が疑われています(火曜日の時点では)。ただ燃料ポンプのどの部分が壊れたのかはわかっていません。この燃料ポンプはコスト削減のため、共通部品となっているのでポンプ自体の故障と言うことではなく、レッドブル固有の振動によるか、セーフティカー明けに2台ともおかしくなったので、温度が上がりすぎた可能性もあります。

テストでの走り方とレースでの走り方では、やはり後者の方がマシンの負荷が高いので、テストでは出なかった問題が出たのだと思います。ただ部品自体の問題ではないと思われるので、深刻ではないでしょう。問題を解決するにも時間はかからないと思います。ただ翌週には次のサウジアラビアGPがあるので、時間との戦いにはなると思います(レッドブルはサウジアラビアGPでは対策済であると発表しました)。

苦しみながらも表彰台を獲得したハミルトン

▽メルセデスの失速
メルセデスの問題点は、バウンシングです。これは80年前後のグランドエフェクトカー時代にも見られた現象で、サイドポンツーン内で発生するダウンフォースが増してくると、車高が下がり、下がりすぎると空気の通り道が少なくなりダウンフォースが失われ、車高が上がる現象を繰り返すことです。当時はサスペンションをガチガチに固めることで解決し、あまりの固さにドライバーが腰を痛めるなどして問題になったこともあった。

テスト期間中は、どのチームもこの問題に悩まされていたが、開幕戦を迎えるに当たって解決できなかったのはメルセデスだけでした。メルセデスはこの問題を車高を上げることで緩和しています。ただ当然ながら車高を上げるとダウンフォースは失われます。

メルセデスは車高を上げることにより、0.5秒ほどのタイムを失っていると想定され、そう考えると予選の5位、9位も決して悪くはない結果です。少なくともマシンのポテンシャル自体は、フェラーリやレッドブルに負けていないので。メルセデスはこの問題を解決してくると思います。ただ問題はいつこの問題を解決できるかということになります。

テストまでこの問題に気がつかなかったと言うことは、つまり風洞では再現できないと言うことなので、毎レース解決をトライしていくしかありません。あまり時間がかかってしまうと、解決したときにはライバルはポイントで大きくリードしているので、タイトルを取るのは難しくなります。

ただメルセデスとハミルトンのすごさは、これだけ障害があるにも関わらず3位になるところです。レッドブルのダブルリタイヤがあったとはいえ、それでも3位になるのはさすがとしか言いようがありません。

バーレーンGPのタイヤ交換リスト タイヤが厳しかったことがわかる