2006年シーズン レビュー
長く激しいシーズンが終わった。
今年は例年になく話題が豊富なシーズンだった。
激しいチャンピオン争いに、ミハエル・シューマッハーの引退。
それにホンダとバトンの初優勝等々。
では、シーズンを振り返って見よう。
▽厳しくフェアなチャンピオン争い
今年のチャンピオン争いは厳しい戦いだった。
アロンソとミハエル・シューマッハーが争った今年のチャンピオン争いは歴史に残る名勝負と言っていいだろう。
マシンの差はほとんどなく、タイヤの性能もシーズンを通して見れば拮抗していた。
新しい時代のチャンピオン アロンソとF1界に長年君臨していた皇帝ミハエル・シューマッハーの争いは激しかったがフェアな争いだった。
最終的に、ミハエルはタイトルを失ったが、皇帝らしい戦いを最後まで繰り広げF1の世界を去った。
見事な走りだった。
ほとんど性能に差がないマシンとタイヤだったが、アロンソとミハエルを分けた差はなんだったのか?
ミハエルは最後の二戦のトラブルにより、チャンピオンを失ったよう見えるがそれは事の本質を見誤ることになる。
確かにミハエル・シューマッハーの後半戦の走りは素晴らしかった。
特にシーズン中盤に引退を決心してからのミハエル・シューマッハーは、ブリヂストンタイヤの競争力向上にも後押しされ、一時期25ポイントあった差を、16戦の中国GPで追いついてしまった。
これには正直、驚いた。
アロンソのミスのない走りと、ルノーの信頼性を考えると25ポイント差は安全圏と考えていたのだが、その前提が崩れるトラブルがルノーに発生した。
最初は、トップを快走中に起こったハンガリーGPでの右リアのホイールナットの脱落。
これでアロンソは10ポイント失った。
そして、記憶にも新しいイタリアGPでのエンジンブロー。
ここでも6ポイント失った。
だが、アロンソ自身はほとんどミスのない走りを披露。
細かなミスは少しあったが、ポイントを失うようなことはなかった。
一方のミハエル・シューマッハーは最後の2戦で15ポイントを失った。
さらにマレーシアGPを予選前のエンジン交換で、数ポイント失っている。
つまり、マシントラブルで失った得点は二人とも大差はない。
ではどこで、二人の差がうまれたのだろうか。
それは、ミハエル・シューマッハーのミスが大きく影響した。
オーストラリアGPでは珍しい単独クラッシュで、4ポイントをなくした。
そしてハンガリーGPでは、ドライタイヤへの交換時期を逸し、接触してリタイヤした。
最終的にクビサのリタイヤで1ポイント拾ったが、ここで5ポイントほど失っている。
そして、重要なのがルノーの開幕ダッシュだ。
アロンソは第九戦のカナダGPまでに6勝を挙げ、しかも残りの三戦も全て2位という抜群の速さと安定感を誇った。
特に開幕三戦で築いた17ポイント差は最後まで、大きかった。
最終的な二人のポイント差は13ポイント差。
ルノーとアロンソは昨年同様、実力でチャンピオンを勝ち取ったと言っていいだろう。
開幕戦で今シーズンを占ったが、懺悔の気持ちも込めて振り返ってみよう。
・ルノー
ルノーは事前の予想通り、ダブルチャンピオンに輝いた。
マシンの信頼性は抜群で、そこにアロンその才能が加わり安定感の高いシーズンだった。
昨年同様、レギュレーションの変化にあわせたマシンを開幕にきっちり仕上げてくる力はNo.1。
開幕三戦でのリードを最後まで守りきることに成功した。
途中でマス・ダンパーの禁止などもあったが、その影響を最小限度にとどめることに成功した技術陣は高く評価される。
ただ、ルノーは確かに速かったのだがアロンソの存在が多きかったのは明らか。
彼が抜ける来シーズンは頭が痛い。
来シーズン、フィジケラとコバライネンのペアで臨むがコバライネンの才能がチームの浮沈を左右しそうだ。
・マクラーレン
もう少しできると思っただが、ニューウェイ離脱の影響は大きかったのかシーズンが進むにつれ戦闘力がなくなった。
マクラーレンは普通、シーズン後半に向けて調子を上げてくるのが常なのだが、全く逆の展開は意外だった。
ニューウェイ以外にもスタッフの離脱が多かったみたいなので、それも痛かった。
ロン・デニスが残りの株をベンツに譲り渡すという話しが信憑性をおびてきており、チームの変革期なのかもしれない。
チャンピオンのアロンソが移籍してくるという良い話題もあるが、来年以降のマクレーレンは不透明な部分が残る。
・フェラーリ
シーズン序盤は安定せず、ルノーの独走を許したが中盤以降巻き返しチャンピオン争いを盛り上げた。
ミハエル・シューマッハーの引退表明などもあり、チームは盛り上がったが、あと一歩でタイトルを逃した。
結果的にこの序盤のハンディを跳ね返すことはできなかった。
後半はブリヂストンタイヤとのマッチングも抜群。
だがこのアドバンテージは来年はなくなる。
ライコネンの移籍は良いニュースだが、ロス・ブラウンの離脱などの不安要素も多いフェラーリ。
・ホンダ
シーズン前のテストでの好調が嘘のように、失速。
ハンガリーGPで第三期の初優勝を果たすも、思うような成績が残せなかった。
ホンダの弱点は、タイヤの温度上昇が遅いこと。
これによりスタート直後やセーフティーカーがアウトした後で、遅れることが多くチャンスを失った。
バトンは健闘したが、バリチェロは予想通り振るわず。
バリチェロはレースを通じてコンスタントなタイムが出せない。
だから予選が良くても、決勝では伸び悩むことが多かった。
なぜ琢磨の代わりにバリチェロだったのか、今でもよくわからない。
ジェフ・ウィリスのシーズン途中で離脱が、来シーズンのマシン設計の真っ最中だっただけに、来シーズンへの影響が心配される。
・トヨタ
昨年の好調が嘘のように低迷した。
ブリヂストンタイヤの好調にも助けられ、予選では良いのだが決勝ではずるずる後退する場面が多かった。
シーズン途中でガスコインを解雇するも、成績向上せず。
このままでは、来シーズンも期待するのは難しい。
・ウィリアムズ
シーズン序盤は調子が良く、台風の目になりそうな予感のあったウィリアムズだが、信頼性の欠如から結果が残せなかった。
シーズンが進むにつれ精彩を欠くようになり、1980年以来最悪のシーズンを過ごした。
ただ、来シーズンへ向けてトヨタエンジンを獲得するなど、明るい話題も多い。
今ではメーカー資本の入っていない唯一のトップチームだけにがんばって欲しい。
・スーパーアグリ
何も言うことはありません。
全戦出場しただけで、奇跡的です。
しかも、途中で大幅にバージョンアップしたSA06を投入。
ブラジルGPではホンダと遜色のないタイムを出すまでに成長しました。
ただ、来年に向けてはホンダのシャシーを使うことが難しいようなので、彼らの苦しいシーズンはもう一年続きそう。
・タイヤ
シーズンを通してみれば二つのメーカーはほぼ互角の競争力を披露した。
今年のタイヤは最適動作温度のレンジが狭く、気温や天候によって明暗が分かれた。
シーズン中盤以降はブリヂストンがタイヤの構造を変更し、やわらかいゴムを使用できるようになると、予選ではミシュランを圧倒し始める。
だがミシュランも負けてはいない。
路面にラバーがのってくる予選第三ピリオドや決勝ではブリヂストンと遜色のないタイムを出してきた。
やはりミシュランの技術力は恐るべしだ。
▽最後に
開幕戦でマシンの性能差が少なくなったと書いたが、まさしくその通りのシーズンとなった。
ドライバー同士の戦いも多く、見応えの多いシーズンでした。
来年はレギュレーションが変わる部分もあるので、それはまた機会を設けて書かせていただきたいと思います。
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