ホンダは今年勝てるか【エンジン編】
昨年、ホンダは第三期活動において初めての勝利をあげた。
しかし、その勝ち方は今ひとつ納得がいかないものだった。
では、今年ホンダは勝つことができるのだろうか。
開幕まで1ヶ月をきった現時点で占ってみよう。
【エンジン編】
まずはエンジンから見ていこう。
エンジンはかなり競争力があると思っている。
実は昨年、ホンダはエンジン開発の方向性を大きく変えている。
2005年まではホンダも高回転高出力だった。
高回転高出力型エンジンはパワーがあるので、ストレートで速い。
しかし、メリットがあれば、デメリットもある。
それが中低回転域でのトルクがやせてしまうのだ。
常に高回転域を使用できれば問題はないが、実際にサーキットを走るとどうしても回転数が落ちる場所が出てきてしまう。
この問題を解決するために、F1のトランスミッションは多段化されてきた。
今のF1のギアは7速。
かつては5速で十分だった。
それがエンジンの高回転化にともなう中速域でのトルク不足を解決するために、ギアが増えてきた。
そして、ギアチェンジ回数の増大という問題にはセミオートマチックやシームレスギアボックスで対応してきた。
だが、ホンダは伝統の高回転型エンジンを捨て去る決意をした。
それはなぜか。
もちろん勝つためだ。
通常考えると、パワーがある方が有利に思えるかもしれないが、実際のサーキットではピークパワーを使い切る局面は限られている。
モンツァなどの特殊な高速サーキット以外は、ハーフスロットルを多用している。
そうなると中回転域でのトルクを増した方が、ドライバーは運転がしやすくなる。
高回転型エンジンの搭載のマシンは、中速域での加速が遅く、いきなりパワーがでてきてしまうので、オーバーステア傾向が強くなる。
そうなるとどんなにパワーが出ていても、一周のラップタイム的に見ると差がなくなってくる。
これは昨年から2.4LのV8エンジンにレギュレーションが変更になったことと大きな関連性がある。
排気量が減れば、当然トルクは減る。
特に中回転域でのトルクの減り方は、もはや無視できないレベルまでになっていた。
V10時代は中回転域でのトルクの少なさをトラクションコントロールなどで補っていたが、2.4Lになった昨年はそれではカバーできないくらいに中回転域でのトルクがなくなってきた。
そこでホンダは低中回転域でのトルクを増やす方向で、エンジンを開発してきた。
当然、エンジンの最高回転数は低くなる。
ホンダは昨年、二万回転まで回せなかった。
それでもドライバーが運転しやすいエンジンを載せたマシンであれば、トータルのラップタイムはピークパワー重視のエンジンを搭載したマシンよりラップタイムが向上すると見込んでのことだ。
それが、昨年ハンガリーGPでの優勝につながった。
中回転域重視のエンジンでなければ、コーナーが多いハンガロリンク、あの雨の中で勝つことはできなかっただろう。
そう言う意味で、あの勝利は決して偶然ではない。
そして今年、エンジンの回転数が1万9千回転に制限されることになった。
これはホンダにとって大きなメリットになる。
昨年、高回転型エンジンを開発してきたメーカーは回転数を上げてピークパワーを出すこともできないし、しかも中回転域でのトルクも少ないという窮地に立たされる。
このレギュレーションは急遽決まったことでもあり、どの、メーカーも抜本的な対策はできていない。
唯一、許されているヘッド周りの変更を三月の期限までにするしかないが、当然ホンダも対策は打ってくる。
実はホンダは過去にも一度、高回転型エンジンと決別したことがある。
それはターボ時代のことだ。
ターボエンジンを投入したホンダだったが、なかなか勝てない。
実はターボエンジンは高回転型にするメリットが少ない。
なぜなら、ターボエンジンの場合、回転数を上げなくてもブースト圧さえ上げてしまえばパワーは出てしまうからだ。
それよりも、ターボエンジンの場合、アクセルを踏んでからパワーが立ち上がるまでのタイムラグの方が問題だった。
ドライバビリティを重視したエンジンを開発したホンダは、それから快進撃を続けることになる。
エンジンはそれ単体では走ることはできないし、勝つこともできない。
マシンに乗せてこそ価値がある。
かつてホンダのエンジンはピークパワーを求めて、V12化に走りルノーに惨敗した。
エンジンはマシンを構成するパーツの一つである。
もちろん、非常に重要なパーツでありことには変わりないが、エンジンだけで勝てる時代ではない。
マシンに乗せてラップタイムが出るのであれば、パワーがあろうがなかろうが関係ない。
昨年のフェラーリもピークパワーを最重視してはいなかった。
そう言う意味でホンダの今年は楽しみだ。
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2007.02 News
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