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2007 Rd2 マレーシアGP観戦記

ロン・デニスを含めて今回、マクレーレンが1-2フィニッシュすると予想した人はいなかっただろう。 それほどに驚きのマレーシアGPとなった。 これにはいろいろな要因があるが、まずはハミルトンの活躍から話をしよう。 まだ、開幕二戦目だが、このスーパー・ルーキーには驚かされっぱなしだ。 スタート直後にライコネンとマッサをかわしたときの、マシンコントロール。 今回のレースはこの瞬間に決まったと言っても過言ではないだろう。 そして、その後マッサに猛追されながらも、しのぎきった精神力。 特に第三スティントで、明らかに自分よりペースの速いライコネンに差を詰めらた時に見せた冷静さは並大抵のものではない。 ハミルトンはライコネンより遅いペースだったにもかかわらず、残り周回数を計算に入れ、最後まで大きなミスをせずにライコネンをおさえきった。 決して、楽なレースではなかったが、ライコネンとのギャップをコントロールしていた。 しかも、レース終了後のチームとの無線会話の中で、「次は勝ちたい」との発言もでて、大物振りを見せてくれた。 とにかく、ハミルトンはミスが少ない。 にもかかわらず速い。 精神的にも強いことを今回披露し、今年の台風の目となることは間違いなさそうだ。 追い詰められても冷静さを保っており、もはやベテランの域に達しているかもしれない。 彼より冷静なドライバーは現役の中でも、数名しかいないのではないか。 このドライバー、将来チャンピオンなることは、間違いないだろう。 ハミルトンの加入で、マクレーレンにはいい影響がある。 この新人ドライバーの活躍により、チームの士気は上がり、アロンソにもいい意味でプレッシャーをかけている。 もちろん、アロンソはプレッシャーには強いので問題ないのだが、それがチームメイト間の争いにならず、チームの雰囲気がいいのが見て取れる。 こうなると、チームメイト同士で争っているフェラーリに対抗していくことも可能になる。 アロンソの走りは今回も素晴らしかったが、彼はこのくらいやって当然なので、驚きはしない。 しかし、この勝利が彼抜きでは成し遂げられなかったことは間違いない。 苦戦しているとはライコネンのかわしての予選2位は誰にでもできる話ではない。 ハミルトンはこのアロンソが目標であり、これを乗り越えればGPに勝つことができるし、その先にはチャンピオンが見えてくる。 この二人のドライバー・ラインアップは現時点では、最強だろう。 ▽自滅したマッサ 一方、今回自滅のフェラーリ陣営だが、マッサにはダメージが大きい5位だった。 予選では圧倒的速さでポール・ポジションをゲット。 ここまでは、よかった。 今回、ライコネンは第一戦で水温上昇したことによるエンジンのダメージが心配されており、ペースを無理に上げられない状況だった。 スタートでダッシュできれば、そのまま勝てるはずだったのだが。 マッサのスタートも悪くはなかったが、アロンソの偶数グリッド側の方がラバーグリップがのっていたので、スタートでアロンソに前に出られたのは仕方ない。 しかし、ハミルトンにまで前に行かれるのは予想外だった。 マッサはアロンソに抜かれた直後、スピードを落としすぎた。 直後にいたライコネンはマッサを避けるために、スピードを落とさざるを得ず、ハミルトンはフェラーリ二台をインからかわす。 1コーナー手前まで、ハミルトンは4位だったので、このマッサのブレーキングは高くついた。 それでも、マッサはハミルトンより遙かに速いペースで走れていてた。 特に低速からのトラクションが良かったので、ハミルトンを何度も抜くチャンスがあったし、実際、一度は抜いたのだが立ち上がりでクロスして抜き返されてしまった。 そして、6周目にコースアウト。 マッサはコース上でハミルトンを抜けなくても我慢して、1回目のストップで抜くチャンスを待つべきだった。 マッサは燃料搭載量が少なかったので、1回目は抜けなかったかもしれないが、それでも我慢し2回目のストップにかけなければならなかった。 実際、フェラーリはレース中盤にタイヤのバランスが崩れて、どちらにしてもマクレーレンに勝てなかったとは思うが、それでも3位は可能だった。 獲得した全ポイントが全て有効になる、チャンピオンシップでは、こういう細かいミスが勝敗を決する。 F1に速いドライバーは多い。 だが、同時にミスの少ないドライバーはほんの一握りだ。 マッサが今後、チャンピオンシップを争うなら二度とこのようなミスは許されない。 もう一方のライコネンは3位。 エンジンが2レース目のマレーシアGPでは、耐久性に少し不安があったから、彼はこの結果に満足しているだろう。 その為、土曜日の予選でも不利な戦いを強いられた。 レース中も、エンジンをいたわっていたと予想されるので、6ポイントを獲得できたのは満足だろう。 チャンピオンシップ争いでは、アロンソに逆転されたが、フェラーリの強さは確認できた。 マクレーレンとの差が縮まってきてはいるが、まだアドバンテージがある。 マクラーレンのレースペースは予想外に良かったが、マレーシアGPは特殊な環境でもあるので、それほど心配する必要はない。 どこまでアンダーパネルを強化したことで、フェラーリのパフォーマンスが落ちたのかは不明だが、まだまだ戦うことは可能だ。 ただ、心配な点は二人のドライバーの争いだ。 ライコネンは相変わらずクールなので、マッサのことを気にしていないようだが、マッサは昨年からチームにいることもあり主導権を取りたがっているようだ。 開幕戦のペナルティはマッサに責任はないが、今回のミスでチーム内での立場が微妙になってきた。 マッサには次のレースで結果を残さなければいけないプレッシャーがのしかかる。 ▽ホンダ出口見えず 事前テストで、新パーツをテストして持ち込んだホンダだが、出口は見えなかった。 バリチェロの予選順位は下から4番目。 下の3台はトラブルでまともなアタックのできなかったブルツと問題外のスパイカー二台。 と言うことは実質、最下位なので問題は深刻だ。 前回もお話ししたが、今のホンダの問題はブレーキング時のリアのスタビリティが悪いことだ。 これを空力パーツで修正しようとすると、アンダーステアになるので結局ペースが上がらなくなる。 シャシー側で対応しない限り、出口は見えないだろう。 新パーツを投入しても、マシンの挙動が敏感すぎて、開発が非常に難しいようだ。 カナダGPには大幅改良されたバージョンが投入されるようだが、どこまで変更されるのだろうか。 エアロダイナミクスだけではなく、シャシー側にも手を入れなければならないだろう。 そうするとほとんど、新車を作るのと同じだ。 恐らく思い切ってホイールベースを延ばしてくるのだろう。 ただ、問題がある。 以前にも話したが、マシンのコンセプトを構築できる人材がいないのだ。 そんな中で、ビッグニュースが飛び込んできた。 ホンダが元フェラーリのロス・ブラウンに接触したようだ。 やっとホンダもコンセプトを構築できる人間の重要性に気づいたようだ。 ただ、ロス・ブラウンを雇うとなると高額のオファーが前提。 下手なドライバーよりも高い給与が必要となる。 ブラウン自体はイギリスで仕事をしたい希望があるようなので、その点では有利だ。 果たしてこの交渉はどうなるのか。 今後のホンダの行く末は、この交渉にかかっている。 スーパーアグリは今回は第三ピリオド進出はならなかったが、、ホンダの前のグリッドを得た。 なんとも皮肉な結果だが、ホンダの不調が続く限りこの二チームでポジションを争うことになりそうだ。 前回は、上位チームが予選で苦戦したこともあり、第三ピリオド進出を果たしたが、佐藤琢磨の予選13位は悪くない順位だ。 ただ、残念なことに、彼はオープニングラップでトヨタやトロロッソと絡んでコースアウト、後退してしまった。 その後、フロントウィングに問題を抱えながらも、ペース的には悪くなく、13位でフィニッシュ。 また、ピット作業でタイムロスをするなど、問題も多いが予選順位よりひとつポジションを上げることができた。 今後は、細かいミスをなくしていけば、初入賞も見えてくる。 一方、スーパーアグリのカスタマーカー疑惑だが、バーレーンGPで進展がありそうだ。 全チームを集めて、この問題を協議するらしい。 問題の核心は、彼らが獲得したポイントの有効性と分配金だ。 噂では、バーニー・エクレストンはスーパーアグリとトロ・ロッソの獲得ポイントをホンダとレッドブルに追加して、分配金はホンダとレッドブルから、それぞれスーパーアグリとトロ・ロッソに分けるという解決案を提示するらしい。 これで、スパイカーやトヨタ、ウィリアムズが納得するかがポイントとなる。 バーニー・エクレストンとしては、この問題が長引いて、F1のイメージダウンにつながることは避けたいはずだ。 だが、バーレーンGPで解決を見るのは難しいだろう。 FIAはコピーされた図面でも、一部改良されてあれば問題ないとの見解なので、スパイカーやトヨタがいくら証拠を出しても意味がない。 マシンの一部をコピーしても問題ないのだから、パーツが同じだと言ってみてもそれでは、解決しない。 技術的な問題ではないとなると、最後は分配金の問題になる。 そうすると、バーニー・エクレストンの今後の出方が注目される。 彼なしに、一銭のお金も動かせないからだ。 バーニー・エクレストンはカスタマーカーには懐疑的で、いい感情は持っていないようである。 彼はF1のステータスを高めたいと思っており、それにはチームが独自のシャシーを持っていた方がいいと考えている。 そんな彼が、どんな解決方法を繰り出してくるのか、注目したい。 ▽好調持続のBMW ハイドフェルドが良い走りを見せて4位に入賞した。 開幕に引き続き結果を残す走りを披露しているハイドフェルドだが、チーム内の評価は低いらしい。 もちろん、彼がワールドチャンピオンになれるかと言われると疑問だが、彼より良いドライバーも数人しかいないのも事実だろう。 非常に安定したドライビングを見せており、優れたドライバーだと思う。 残念なところは花がないところ。 派手に一発ポールポジションなどをとれればいいのだが、彼の性格にもよるのだろうが、決勝のセッティングを重視しているのだろう。 だから、実力よりも低く評価されてしまう。 彼が来年、BMWで走っていなければ大きな驚きだ。

5 thoughts on “2007 Rd2 マレーシアGP観戦記

  1. ユースケ

    初めて読みましたが、奥が深くて面白いコラムだと思います!
    時間があったら、バックナンバーも読みたいですね…

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