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2007 Rd3 バーレーンGP観戦記

▽マッサ圧勝も一抹の不安 前回の観戦記で書いたようにマッサは今回、勝たなければならなかった。 自らの失敗により惨敗した直後だけに、勝つ必要があった。 そして、彼は勝った。 しかし、私は一抹の不安を依然としてぬぐいきれない。 優勝してクルマを降りた彼は、何度もガッツポーズをして喜びを表現していた。 それは、誰しもがやることなので普通のことなのだが、インタビューとかを聞いているとどうも彼は、今回のレースに勝ったことを喜びすぎているように思えるのだ。 彼の目標は何なのだろう。 レースに勝つことなのだろうか。 それともチャンピオンになることなのだろうか。 もちろん、彼に聞くと両方だという答えが返ってくるかもしれないが、かつてチャンピオンになったドライバーの態度を見てきた経験からすると、彼の態度には違和感を憶えるのだ。 勝って喜ぶことが悪いと言っているわけではない。 アロンソだって、ミハエルだって勝つ度に喜びを爆発させていた。 だが、それも一瞬で、すぐに冷静さを取り戻していた。 彼らにとっては、レースに勝つことはチャンピオンになる事への最短距離なのであって、2位でチャンピオンになれるのなら甘んじてそれを受け入れる態度がある。 もちろん彼らとて勝ちたい欲求はあるが、より大きな目標のためであれば、自分の感情をコントロールすることができた。 残念ながら、今のマッサにそれを感じることはできない。 史上初めてF1デビューから三戦連続で表彰台をゲットしながら、冷静さを崩さないハミルトンと較べると、その思いを強くする。 それに、今回のマッサには幸運も味方した。 今回のマッサは予想よりも多くの燃料を搭載していたからにもかかわらず、予選でポールポジションを取り、スタートで有利な左側のグリッドを得ることに成功した。 前回は、スタートでマクラーレンに前に行かれた教訓を生かし、必ずポールポジションを取るという意志が感じられた素晴らしい走りだった。 そして、スタートも決めてトップで、レースをリードする。 だが、レースではハミルトンを引き離すことができない。 第二スティントでは、ハミルトンがマッサより遅くピットへはいることが予想されたので、マッサはかなりプッシュする必要があったのだが、ここでマッサに幸運が味方する。 ハミルトンの第二スティントでのタイムが伸びない。 タイヤグリップのバランスが崩れ、ラップタイムが落ちた。 第二スティントで10秒以上引き離されたハミルトンは、二回目のピットストップでマッサの後ろでコースに戻らざるを得なかった。 レースにたらればは禁物だがもし、ハミルトンの第二スティントが第一スティントと同じペースであったなら、マッサは2位だった可能性が高いと思う。 それを考えると、今回のマッサの勝利は、レース後に見せたように手放しで喜べるようなものではないだろう。 ライコネンがアロンソに押さえ込まれたことも、彼にとっては助かった。 本当に優れたドライバーは、マシンの調子が悪くても何とかしてくれる。 優秀なドライバーはポールポジションでないときでも、何とかレースを組み立てて逆転する術を持っている。 マシンがいいときに勝てるドライバーはF1にはたくさんいる。 しかし、マシンが悪いときでもなんとかしてくれるドライバーはいつの時代も多くはない。 マッサの真価が試されるのは次のスペインGP。 彼が調子の悪いときでも何とかできるドライバーかどうか、見極めてみたいと思う。 ▽三戦連続表彰台の新記録 ハミルトンは今回も2位だった。 しかし、彼の評価は上昇中だ。 第二スティントでタイヤのバランスが崩れ強いアンダーステアにみまわれ、マッサから遅れてしまったが、それがなければ優勝していたと思う。 このトラブル実は、マクレーレンのミスだったこをチームは認めている。 最初のピットストップで、タイヤの空気圧とウィングの調整をしたのだが、予想を誤り間違った値にセットしてしまった。 それによりハミルトンの第二スティントはこのレースで最悪のスティントとなった。 これさえなければ、ハミルトンは優勝し、彼の評価はロケットのように大気圏を突き抜けていたことだろう。 もっとも、優勝しなくても彼の評価が下がることはない。 これでハミルトンは22ポイントで、アロンソ、ライコネンと並んで選手権をリードすることになった。 まったくすごいドライバーがいるものである。 一方のアロンソは、タイヤのグリップ不足にレースを通じて悩まされてきていた。 予選から同様の現象が出ており、BMWのハイドフェルドを抑えることもできなかった。 それでも、オープニングラップでライコネンを抜き返すあたり、さすがだ。 次の地元のスペインGPに向けて、エンジンをセーブしたのではないかという、笑えない話しもあったが、これでもまだポイントトップの座をライコネンとハミルトンと分け合っているのだから、問題ないだろう。 シーズン前はフェラーリが独走するのではと見られていたのだから。 マクラーレンは次のスペインGPで0.4秒タイムが改善するパッケージを投入する予定だ。 もちろんフェラーリも開発を進めてくるので、これでフェラーリを逆転することにはならないかもしれないが、この二チームの戦いは激しさを増しそうだ。 ▽どうなるホンダ ホンダは相変わらず不調のまま。 予選では、なんとか二台とも第二ピリオドへの進出をはたしたが、第二ピリオドでは最下位に沈んだ。 今回の予選もスーパーアグリF1のデビッドソンに前に行かれました。 次のスペインGPまでは1ヶ月弱のインターバルがあるが、テストの制限などもありホンダにとっては厳しい状況にかわりはない。 決勝レースでもバトンは、1周目にリタイヤし、バリチェロも周回遅れの13位がやっと。 この混乱は調整に失敗した風洞のせいなのだろうか? それとも、ジェフ・ウィリスを首にしたことによる混乱なのだろうか。 最近、ここまでひどい失敗を見ることはなかったので、何がホンダに起こったのだろうか。 プロが集まっているF1で、ここまでひどい状況は普通考えられない。 ホンダが元フェラーリのロス・ブラウンにオファーしたとお伝えしたが、マクレーレンも彼を狙っているらしい。 彼らは引退が近いと見られているロン・デニスの後釜に考えている。 マクラーレンのトップと、ホンダのテクニカルディレクターどちらの方が魅力的なのだろうか。 もし、ロス・ブラウンが技術的なことに興味があればテクニカルディレクターを選ぶだろう。 しかし、ロス・ブラウンはフェラーリにいた時から、技術的なことよりもマネージメントサイドの仕事が多かったように思える。 そうなると、マクレーレンにいく可能性が高い。 ポジション的にもマクレーレンのトップの方が高い。 どちらが挑戦的な仕事かと言えば、ホンダだろう。 どん底のチームをトップまで引き上げるのは、やり甲斐のある仕事だ。 一方、マクレーレンは既に完成しているチーム。 どちらもイギリスのチームなだけに、イギリスで働きたいロス・ブラウンの意向にはあっている。 ここでロス・ブラウンを逃すことは、ホンダにとっては痛い。 なんとか、獲得したいところだが果たして彼を満足させられるオファーができるだろうか。 交渉の成り行きを注目しよう。 好調なスーパーアグリF1も今回は2台ともエンジンブロー。 ホンダの悩みはつきない。 ▽好調BMWと復活クルサード ニック・ハイドフェルドはまたまた、堅実な走りを見せて2戦連続4位入賞。 苦しんではいるといえ、アロンソをコース上で抜くシーンは見応えありました。 クビサも6位に入賞して、問題のあった信頼性にも目処が立ってきました。 完全に二強の次の位置は確保したようです。 表彰台に上れないのは、フェラーリやマクレーレンとの差がまだまだあることの証明ですが、トップ二チーム以外はBMWが当面の目標となりそうだ。 最後に、今回はクルサードに触れないわけにはいかないだろう。 このベテランドライバーは予選21位から、8位まで上昇したその走りはレッドブル移籍後で最高の走りだった。 いや、マクレーレンにいたときよりもすごかったかもしれない。 まるで魔法が掛かったように速いクルサード。 引退間近と思われていた、クルサードの走り。 現役最高齢のクルサード。 もう一花咲かせそうだ。

3 thoughts on “2007 Rd3 バーレーンGP観戦記

  1. のりかず

     マッサには同感。トップを走らせたら強いんだけど、2番手以下の時の組み立て、駆け引きが弱いように思います。
     次戦スペイン。4強の内優勝した者が主導権を握り、表彰台を逃した者が脱落か?とにかくマッサは優勝が条件でしょう。

  2. edoi

    メールマガジンを読んで来ました。
    >それとも、ニック・フライを首にしたことによる混乱なのだろうか。
    ニック・フライではなくジェフ・ウィリスですよね。

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