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鈴木亜久里の志 その二

▽スーパーアグリF1の快挙 スーパーアグリF1を駆る佐藤琢磨がチームに初ポイントをもたらした。 チームができてから約1年半という短期間で得た素晴らしい結果だ。 現代のF1で、プライベートチームがこんなに早く、偉業を成し遂げたことは、物事を成し遂げる上で、いかに志の高さが大事なのかを再確認させてくれた。 誤解されている人も多いようなので話しておくが、スーパーアグリF1はホンダが佐藤琢磨をのせるために作ったチームではない。 もちろんスーパーアグリF1は資金的にも技術的にもホンダから援助をもらっているし、佐藤琢磨も乗っている。 だから、誤解が生まれるのは仕方がないのだが、これらは全く別個の事柄である。 元々、鈴木亜久里はF1チームを作ると公言していた。 彼はF1の現状に強い危機感を持っていた。 スーパーアグリF1が参戦する前のチーム数は10。 1チーム二台のエントリーだから、シートの数は20。 ワークスチームが多い現状では、日本人ドライバーがシートを得るのは至難の業だ。 彼が国内で展開しているレーシングチームARTAは、F1ドライバーを育成することを目標の一つにしているのだが、現状ではどんなに実績を上げてもF1のシートを得ることはほぼ不可能。 なぜなら、毎年シートの空きがでるのは、一つか二つくらいで、そこに10人から20人の人間が狙いを定める。 よほどの実力や資金的な裏付けがない限り、シートを得ることは難しい。 そこで鈴木亜久里はF1チームを作った。 これがすごいことなのだが、今のF1でプライベートチームが新規参入することはほとんど不可能に近い。 実際、最近参戦を開始したのはトヨタだけであるし、それ以外は過去から参加しているチームか、古いチームを買収したチームなのだ。 トヨタは昨年度2兆円の利益を上げたことでもわかるように、資金は潤沢だ。 50億円以上と言われる保証金を積まなければ参戦できない。 さらに年間の活動資金も最低100億円は必要だ。 これを個人が用意するのは並大抵のことではない。 昔は違った。 昔は十数人の弱小チームでも参加することができた。 だから、多くのプライベートチームが存在した。 もちろん、多くのプライベートチームが生まれ、そして消えていったが。 レーシングチームは利益を生み出さない。 普通の企業であれば、100億円投資しても、それが何十倍、何百倍になって戻ってくる可能性はある。 だが、レーシングチームは基本的に軍隊と一緒で、何も価値を生み出さない。 ただ、お金を消費してひたすら速いマシンを作り、走らせる。 だから、巨額の資金が必要になるF1チームを作るのは、普通に考えれば割に合わないことなのだ。 鈴木亜久里がそんなリスクを冒す必要は全くない。 彼は国内ではARTAで安定的な活動ができており、資金的な不安は全くない。 彼自身の収入も十分にあるので、普通の人であれば日本で活動するだけで満足するだろう。 ところが、彼はF1チームを作ってしまった。 ただ、日本人をF1で走らせるために。 普通、F1で日本人を走らせるのであればお金を提供し、シートを確保する方が全然楽だ。 お金はかかるが、リスクは少ない。 しかし、それでも彼はF1チームを作ってしまった。 日本のレース界のために。 だからこそ、ホンダも彼のために強力しているのだ。 かつてホンダがF1に初参戦すると表明したとき、ほとんど人は信じなかったことだろう。 バイクでは評判を確立しつつあった、ホンダだが四輪ではほとんど無名で、商品もほとんどない状況だった。 まだまだ、中小企業の枠を超えられていないホンダが、F1なんてできるはずがないと考えるのが普通だ。 ところがホンダはそれをやってしまった。 そしてレースで勝ってしまった。 ホンダはその後、エンジン供給をして世界を制覇することになるのだが、私個人的にはウィリアムズやマクレーレンと組んで、勝ち取った栄冠よりも第一期の成果の方が価値があると思っている。 もともとホンダは無茶をする会社である。 マン島のTTレースに出るときも、無謀な試みだと皆が思ったし、CVCCエンジンを開発して誰もが不可能だと思ったアメリカの排ガス規制を世界で初めてクリアしたときも、ほとんどの人は信じられなかったことだろう。 そんな、ホンダがスーパーアグリF1を支援する。 こう考えると、これは至極当然の流れなのではないだろうか。 もちろん、スーパーアグリF1を純粋なプライベートチームと呼ぶのに抵抗のある人もいるだろう。 今年のマシンに本田技術研究所の栃木研究所の力が、かなり投入されている。 エンジンやトランスミッションは完全にホンダF1と同じものだ。 ホンダからは資金的な援助もされている。 しかし、それでもオペレーションは完全に別物だし、彼らが短期間にここまで上り上げたことに関して、評価が落ちる物ではない。 栃木で開発されていることなどを考えると、、ホンダレーシングよりもスーパーアグリF1の方が、ホンダワークスに近いと思うのは私だけだろうか。 少なくともチャレンジャー・スピリットと言うことに関しては、旧BAR主体のホンダレーシングよりスーパーアグリF1の方が志が近いように思える。 彼らの挑戦はこれで、終わりではない。 まだ見ぬ大きく高い目標に向けて、彼らの挑戦は続いていくのだ。

One thought on “鈴木亜久里の志 その二

  1. 眞中

    はじめまして!いつもブログを楽しく拝見しております。私も亜久里さんの心意気、志に感動しました。たかが1ポイントですが、本当に価値のあるポイントだと思います。
    今シーズン、亜久里さんはじめ、スーパーアグリチームを応援したいです。

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