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フェラーリ 華麗なる復活 2007 Rd8 フランスGP観戦記

▽復活!フェラーリ ここ三戦のマクラーレン圧勝がまるで夢だったのではないかと、思わせるフェラーリの1-2フィニッシュ。 今年のフェラーリはジェットコースターのように好不調の波が激しい。 彼らの失速の原因として、風洞の破損が上げられていた。 当時は、噂レベルだったのだが、フランスGPでジャン・トッドが4月に風洞が壊れたことを公に認めた。 それにより2週間風洞が使用できなかった。 これが、5月下旬からのパフォーマンス低下につながったことは間違いない。 その遅れを短期間で、取り戻してきたフェラーリは素晴らしい仕事をしてきた。 また、タイヤの温まり方が遅く予選でパフォーマンスを出せないこともあった。 今年のF1はとにかく、予選が重要だ。 フランスGPまでの8戦中、ポールポジションからの優勝が7回、残りの一回も予選二位から、スタートで前に出て、そのまま逃げ切った。 また、同じタイヤでもスティントによっては、グリップしたりしなかったりと差が激しい。 これには路面温度の変化や、ラバーののり具合、さらには空気圧の違いによって同じタイヤでも、まったく違う挙動を見せる。 さらにタイヤのグリップが減った分、空力に頼る比率は高まっているが、前のクルマについて走ると、気流が乱れて安定して走ることが難しい。 特にフェラーリは気流の変化に弱い。 これらの理由により沈んでいたが今回、フェラーリは見事に復活。 予選で上位を確保し、スタートで抜け出た後は、有利なポジションを活かして勝つという、今年の勝利の方程式を実践した。 マッサが周回遅れの集団をパスする際に大きくタイムロスし、ライコネンに接近を許してしまったのは不運だった。 周回遅れをかわした後で、マッサはピットインしたが、ライコネンがここでスパート。 逆転に成功した。 開幕戦以来の優勝となるライコネン。 普段はほとんど表情に表さないが、今回は心なしか喜んでいるように見えた。 大金をもらって移籍したチームで成績が残せず、イタリアのプレスからもたたかれていた。 これで、ライコネンも少し落ち着いて仕事が出来るだろう。 ライコネンがチャンピオンシップを逆転するのは極めて難しいから、チームとしてはマッサが優勝したほうが良かったが、マシンが競争力を取り戻したので、これからの追い上げを期待しよう。 だが、現在のポイント制度は追うドライバーにはとても厳しい。 今回、1-2フィニッシュしても三位にハミルトンがいれば、ポイント差は4ポイントと2ポイントしか縮まらない。 そして、ハミルトンは連続表彰台を続けて、安定した走りを見せており、記録が終わる気配すら感じられない。 ▽冴えなかったマクレーレン 今回、とりわけマクレーレンの競争力が低かったわけではないが、結果は惨敗だった。 まず、予選の第三スティントでアロンソに不運が襲う。 ギアボックスのトラブルで一度もアタックできずに予選10位が確定。 エンジントラブルでなく、グリッド降格のペナルティがなかったのは幸運だったが、これでアロンソのレースは終わった。 それでも、抜きにくいマニクール・サーキットで奮闘して7位に入賞。 ハイドフェルドとのバトルは見ごたえがあったが、チャンピオンシップでハミルトンを追うアロンソにとっては、痛いレースとなった。 一方のハミルトンは予選では、マッサに僅差の2位だったが、路面状況が悪い方のグリッドだったこともあり、スタートでライコネンにも先行を許し、それを追うだけの力は今回、なかった。 それでもハミルトンは3位に入賞し、アロンソに対してポイント差を広げることができたので、彼にとっては、まあ満足のいくレースだっただろう。 これでアロンソとのポイント差は14、マッサとは17ポイント、ライコネンとは22ポイント差。 これだけのポイント差があれば、ハミルトンは無理をする必要はない。 自分に有利なときは勝負するが、そうでないときは確実にポイントを取ればいい。 昨年までのアロンソと同じ必勝パターンだ。 普通、若いドライバーはそこまで計算してレースをできないが、ハミルトンならできるだろう。 そうすれば、トラブルがでることを抑えることもでき、ますますハミルトン有利の状況になる。 ルーキードライバーのチャンピオンが誕生するのか。 少しづつ現実味を帯びてきた。 ▽ホンダ 小さな一歩 事前のテストで大きな進歩が噂されたホンダだったが、言われているほどではなかった。 当然、他チームも進歩しているからだが、それでもレースでは1分17秒から18秒台の安定したペースで走れてきた。 BMWには追いつかないが、ルノーの背中は見えてきた。 予選ではスピードが足りず、今回もQ2で脱落したが、レースではバトンがいい走りを見せて今季ホンダに初ポイントをもたらした。 ただ、今回の入賞も諸手を挙げて喜べない。 1周目にコバライネンとツゥルーリが接触し、大きく遅れたので、この入賞が完全な実力かというのは疑問の余地がある。 今のF1で予選結果が悪いのは致命的なので、一発の速さをどうだすかが、今後の課題だ。 とにかくQ3へ進出できないと、勝負にならない。 ホンダは最近、空力関係の人材を多く採用しているが、どうも採用方針が見えない。 チーム全体をまとめる人がいないのに、その下の人材ばかり補強すると、方向性がないまま開発がすすみ、結果的にマシンは速くならないと、危惧している。 昔から「船頭多くして船山に上る」と言うことわざもある。 彼らに必要なのは、優秀な一人の船頭なのだが。 スーパーアグリF1は二台ともQ1で脱落。 佐藤琢磨はUSGPでのペナルティで10番手降格して、最後尾からスタート。 スタート前にクラッチが不調になりゆっくりスタートし、レースではギアがサーキットにあわずペースは上がらない。 ピットストップでは給油リグがはまらず大きくタイムロス。 レースは完走したものの、不運が束になって襲ってきたような日になった。 デイビッドソンはスタートで接触して、早々にリタイヤ。 スーパーアグリF1は今回、完全なスピード不足だった。 他チームの開発が進む中、資金的に厳しいスーパーアグリF1の今後は難しい戦いになりそうだ。 ▽好調を持続するBMW BMWのクビサは、あのカナダの大クラッシュから復帰。 見事に4位に入賞した。 あの事故からわずか三週間。 一般の人から見れば信じられないが、弱肉強食のこの世界。 休んでいる間に、他のドライバーにシートを取られることもよくある話し。 クビサとしてもゆっくりは休んでいられない。 ハイドフェルドも予選で苦戦しながらも、決勝ではアロンソとバトルし、5位に入賞。 調子の悪いときもなんとかしてしまう、ハイドフェルドの走りはお見事。 トヨタのツゥルーリはまたまた素晴らしい予選を見せて8番手からスタートしたが、1周目のヘアピンでコバライネンに接触、早々にレースを終えた。 予選が良かっただけに惜しまれる。 最後に今年で最後になると噂されている、マニクール・サーキットについて。 決して好きなサーキットではなかった。 ここは人工的な感じがするからだ。 ディジョンやポールリカーに較べると、面白味に欠ける。 安全性とかを考えれば、やむを得ないとは思うのだが、ここでのレースは楽しみとは言えなかった。 来年以降、フランスGPの開催が危ぶまれるが、伝統あるGPがなくなるのはさみしい。 なんとか、継続できればいいのだが、他にもGP開催を望むサーキットは列をなして待っており、ヨーロッパでのレースは少なくなるばかりだ。 ベルギーGPは復活したが、サンマリノはGPから消え、ホッケンハイムも隔年開催になる予定だ。 自然が豊かに組み合わされたヨーロッパのサーキットを見ていると理屈ぬきに楽しい。 ビジネス化が進むF1では致し方ないのだろうが、納得はできない。 次は、シーズンの折り返しイギリスGP。 フェラーリの逆襲が続く予感がするが、どうなるだろうか。 楽しみだ。

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