アロンソ気迫の勝利 激動のヨーロッパGP観戦記
荒れに荒れたヨーロッパGP。
山の中のサーキットとはいえ、これほどの豪雨に見舞われるとは、予想もつきませんでした。
コース上は水浸し。
まっすぐ走ることも難しく、危険な状態です。
赤旗が出るのが遅かったくらいです。
これで、一番割を食ったのはライコネンです。
ポールポジションからスタートし、勝利は確実だったのに、1周目のピット入り口でコースアウトして、本コースに戻ってしまったのです。
豪雨の中、1周したライコネンは8位にまで順位を落としました。
これはライコネンにとっては痛いミスでした。
もし、マッサより前にピットインしていれば、マッサは後ろで待つことになり、マッサが後退したのは間違いないでしょう。
それなのに、ピットインできないなんて。
結果的にライコネンは、リタイヤしてしまいます。
これは、フェラーリにとっては幸運でした。
もし、ライコネンがピットインに成功していたら、マッサのトップはあり得なかったからです。
ライコネンのリタイヤはフェラーリにとって痛い出来事でした。
それでも、マッサが優勝すればまだ、救われました。
レース終盤、アロンソが追い上げるも、このコースで追い抜きをするのは至難の業です。
マッサの優勝は決まったも同然でした。
ところがここで、また雨が降って来ました。
豪雨ではありませんが、かなりの量です。
みんなレインタイヤに履き替えます。
ここで、アロンソがマッサに襲いかかります。
ピットイン直前のラップで差を縮めて、ピットアウト後に激しく仕掛けます。
マッサは明らかにアンダーステアが出ていて曲がれません。
そして、その時は訪れました。
アロンソは残り5週で、スピードの伸びないマッサのアウトから並び抜いていきます。
アンダーステアの出るマッサは曲がりきれずに、アロンソのサイドポンツーンに激突。
二台ともダメージをおいますが、ここで勝負あり。
アロンソの逆転勝利で、ヨーロッパGPの幕は降りました。
レース後のアロンソの喜びようは、見ていて驚かされました。
まるで、ワールドチャンピオンと決めたかのように何度も何度もガッツポーズ。
今回はおきまりの動物ポーズも忘れるくらいの興奮でした。
思えば、なれないマシンに、なれないタイヤ、なれないチームで、ここまで苦戦を強いられてきたアロンソ。
必ずチャンスは来ると信じて、耐えてきたワールドチャンピオン。
ここぞというところで見せる、気迫と技術には圧倒されます。
マッサはまだまだ、学ぶべきものがあるようです。
これで、アロンソはハミルトンに2ポイント差になりました。
マッサは二位でしたが、それでもハミルトンに11ポイント差となりました。
ライコネンは、まさかのリタイヤで18ポイント差が縮まりませんでした。
ライコネンにとっては、痛すぎるリタイヤとなりました。
▽もう一人の主役ハミルトン
ポイントを稼げなかったとはいえ、ハミルトンはレースの主役でした。
ヨーロッパGPは、予選のルイス・ハミルトンのクラッシュにより大きく動き出したからです。
Q3でのハミルトンのクラッシュは彼のミスではありません。
チーム側の発表だと、ホイール・ガンにトラブルがありナットを締める力が弱かったからだそうです。
ただ、VTRの車載カメラでは右のホイール内から煙が出ているので、他の原因があるのではと思いますが、詳細は闇の中です。
同じホイール・ガンでタイヤ交換したアロンソは問題なかったのですから。
どちらにせよ、これでハミルトンは決勝レースを10番手からスタートすることになりました。
これで、連続表彰台がピンチと思われましたが、事態は思わぬ方向へ展開します。
スタートでジャンプアップしたハミルトンは1コーナー入り口で6番手まで、順位を上げます。
前を行くのは二台のBMW。
1コーナーにはすでに雨が降っていました。
1コーナー立ち上がりで、ハミルトンは雨で滑るマシンをコントロールしようとしますが、マシンはアウト側に流れます。
すると、イン側にいたBMWの二台が接触。
こうしてルイスは1ラップもしないうちに4番手に上がり、連続表彰台も見えてきたのですが好事魔多し。
タイヤがパンクしたハミルトンは順位を落とします。
幸運なことに、雨が激しくなり全車レインタイヤに履き替えます。
どちらにせよ、タイヤ交換する必要のあったハミルトンはラッキーでした。
この後、ハミルトンは1コーナーでアクアプレーニング現象がでて、コントロールすることも出来ずにコースアウトして、レースを終えると思われました。
ところが、ハミルトンはマシンから降りません。
エンジンをかけっぱなしにして、コースマーシャルが来るまで待ちます。
結局、クレーンでつり上げられたハミルトンは周回遅れでレースに復帰。
SC導入で、再び同ラップになります。
そして、赤旗中断の後で、ハミルトンはギャンブルに出ます。
誰よりも早く、ドライタイヤに履き替えます。
ところが、これが裏目に出ます。
ペースの上がらないハミルトンは、周回遅れに逆戻りです。
ただ、この時点でギャンブルする必要があったのでしょうか。
ハミルトンはSC導入の過程で、周回遅れだったのを、同一ラップに戻されました。
マシン自体は速いのですから、普通に走ってもポイント獲得は十分に可能なポジションです。
レースの残り周回数もたっぷり残っていました。
確かに、ギャンブルに成功すれば大きくジャンプアップすることができます。
しかし、失ったモノはあまりにも多かったと思います。
周回遅れになったハミルトンは、結局9位まで追い上げますが、ノーポイントに終わりました。
このレース、ポイントリーダーの彼は、1ポイントでも2ポイントでも稼ぐことが、重要でした。
ワールドチャンピオンはシーズンが終わったときに、ライバルより1ポイントでも上回っていればいいのです。
シーズンが終わったときに、ここのノーポイントが痛かったと言われなければいいのですが。
ライバル達とのポイント差は縮まりましたが、それでもまだ2ポイントをリードしています。
シーズン前からすれば、それでも驚くべきポジションです。
ハミルトンに失うモノはありません。
これまで通り、攻めていくだけです。
▽厳しいホンダ勢
改良型のサイドポンツーンを持ち込んだ、ホンダだが予選でのスピード不足は改善されていません。
バリチェロ14位、デイビッドソン15位、琢磨16位、バトン17位とホンダ勢は下位に沈みます。
予想外の豪雨で、ホンダとスーパーアグリにもチャンスがあるかと思われたが、バトンは豪雨の中スピンアウト。
琢磨はリタイヤ。
バリチェロとデイビッドソンは予選に続き仲良く11位と12位に終わりました。
スーパーアグリの二台は、共にQ2へ進出しましたが、これはバトンとクルサードが沈んだからに過ぎません。
ここ数戦のスピード不足は深刻です。
だが、ホンダは彼ら以上に厳しい状況です。
大幅な改良を施してはいるのだが、予選での遅さは改善の兆しがない。
こうなれば、ホンダ自身もお手上げだ。
▽ウェバーの表彰台とブルツ
荒れに荒れたカナダGPで表彰台に登ったブルツがまたも、混乱をモノにして4位に入賞。
表彰台まであと、一歩でした。
明らかにロズベルグより遅いのに、ロズベルグの5ポイントに対し、ブルツは13ポイント。
経験がものをいっています。
ウェバーは最終ラップのシケインで失速して、あわや表彰台を逃したかと思われたのですが、なんとか再加速に成功し、ブルツを抑えました。
クルサードも5位に入賞して、ベテラン健在をアピール。
まだまだ来年もいけそうです。
【編集後記】
ミハエルがいると、ライコネンが勝てないというジンクスはまたも生きてしまいました。
フランスにはミハエルが来ていたのですが、決勝レースは見ずに帰ると、ライコネン優勝。
次はミハエルが来るのかどうか、気になります。
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レースには運不運がつきものです。スポーツ競技は何でもそうだと思います。ハミルトンのレッカーによるコース復帰は納得がいきません。不運であってもあの場合はリタイアとするべきと思います。あれがライコネンやアロンソでも同じ処置がなされたのでしょうか?今年のF1は不可解な事が多すぎますね。もっと後味の良いルール施行をしてほしいものです。