アロンソの完勝とハミルトンの逆襲 2007 イタリアGP観戦記
▽アロンソ完勝とハミルトンの逆襲
久しぶりに見るアロンソのパーフェクト・ゲームだった。
ここモンツァでは、マシンのセットアップが決まらないことには、速く走れない。
完全なセットアップを得たアロンソは、自信に満ちた走りで、ノーミスで今シーズン4勝目。
ハミルトンとのポイント差を3に縮めた。
レース後のインタビューでも、自信に満ちた表情を見せていた。
しかし、私が注目したのはアロンソよりもハミルトン。
第一スティントでは、アロンソについていけたが、第二スティントでバイブレーションが発生しペースが上がらず、アロンソから大きく遅れます。
そして、バイブレーションによるトラブルが発生することを嫌ったハミルトンは、予定より早いピットストップを強いられます。
そんな中、ライコネンが予想外の1ストップ作戦を決行。
二度目のピットストップを終え、コースへ戻るハミルトンの前には、ライコネンが走っています。
モンツァで、完璧に負けていたフェラーリの作戦勝ち。
誰もがそう思いました。
しかし、ハミルトンは諦めない。
フレッシュなソフトタイヤを履いたハミルトンは、使い込まれたハードタイヤを履くライコネンに迫ります。
そして、第一シケイン突入のブレーキング競争でインからライコネンをパス。
なんと、二位に返り咲きました。
さかのぼれば、ハミルトンはスタート直後、マッサに逆転されて突入した第一シケインでもマッサを外からブレーキングでオーバーテイクします。
シケインでマッサのタイヤが接触したため、シケインをショートカットしたハミルトンですが、そのブレーキングは見事としか言いようがありません。
直線部分では、マッサの後ろにいたにもかかわらず、完全に前に出ていました。
恐らく、接触がなければハミルトンは、シケインを曲がれていたことでしょう。
接触された後の、マシンコントロールも素晴らしかった。
ショートカットしたものの、マシンを見事にコントロールして、立ち上がります。
ハミルトンが逆転で二位になれたことは、チャンピオンシップでとても重要な意味を持ちます。
もしかすると、この二ポイントがチャンピオンシップの行方を決めたと、言われるかもしれません。
▽フェラーリのジンクス
練習走行から勝ち目がないと考えたライコネンとフェラーリは、ワンストップ作戦という奇策で対抗しました。
そして、アロンソには届かなかったまでも、ハミルトンをかわし、してやったりと思った直後の逆転劇。
フェラーリにとっては失った二ポイント以上にダメージの大きかった、イタリアGPでした。
このレースで勝てなかったフェラーリはドライバーズ・タイトルの望みをほぼ絶たれてしまったからです。
練習走行でのライコネンのクラッシュは、ハードブレーキングでバンプに乗ったのが原因と発表されましたが、その程度のことであそこまでコースアウトするとは思えません。
確かにあの部分は、路面が荒れています。
しかし、それは全てのドライバーが同じ条件です。
ライコネンは、ほとんど修正することもできないまま、コースアウトしています。
これは、ライコネンのマシンに予想外の出来事がおきたと考えるしかありません。
ただ、サスペンションが破損した形跡もVTRを見る限り、見られませんでした。
となると唯一考えられる原因は、ブレーキトラブルでしょう。
あのようなマシンの挙動はブレーキの片ぎきしかあり得ないのではないでしょうか。
結局、原因は不明なままですが、このクラッシュでライコネンは首を痛めたまま、レースに臨まざるを得ませんでした。
彼はほとんど首を左右に動かすことができない状態での運転を強いられました。
ハードブレーキング時にはかなり首が厳しかったと本人も認めています。
これは、ハミルトンがインサイドに突入してきたときに不利に働きました。
そして、マッサのリタイヤ。
これは、彼からチャンピオンシップの望みを奪い去りました。
ハミルトンに、第一シケインで抜き返されましたが、3位を走行中のリタイヤ。
あまりにも痛いトラブルです。
原因はリア・サスペンションのトラブルです。
これで、マッサはランキングトップのハミルトンとは23ポイント差。
残り4レースであることと、ランキング4位であることを考えれば、ほぼ絶望的となりました。
ライコネンも18ポイント差で厳しい状況です。
数字上は逆転の可能性がありますがマクレーレンの二台がリタイヤしない限りは、ほぼ無理な状況です。
今年のフェラーリは最後まで、信頼性不足を克服することができなかったようです。
そして、今年のフェラーリを象徴するジンクス。
ラインキング下位のドライバーが上位でフィニッシュすることと、ミハエルがサーキットに来るとライコネンは勝てないが、またまた実現してしまいました。
これは、もはや現役続行を望みながらも果たせなかった「ミハエルの呪い」とでも言うべきものなでしょうか。
▽白熱した5位争い
マッサがリタイヤした後の4位と5位には、いつものごとくBMWのハイドフェルドとクビサが手堅く入賞しました。
良いマシンと良いドライバーと高い信頼性がBMWを他のチームとの差を産み出しています。
ただ、更に上を目指すのであれば、さらなるステップアップが必要です。
人材流出が進んでいるBMWが来年、どのようなマシンを作ってくるかは大変興味深いところです。
そのクビサと5位を争ったのが、ニコ・ロズベルグ。
クビサは最初のピットストップで、マシンを斜めに止めてしまいタイヤ交換中にジャッキから落ちるというハプニングが発生。
そして、フロントのジャッキが抜けなくて更にタイムロスし、合計で10秒以上を失ってしまう。
ワン・ストップのニコ・ロズベルグに抜かれてしまうが、コース上で抜き返し5位でフィニッシュ。
6位となったニコではあるが、これで3戦連続の入賞。
チームメイトのブルツとのポイント差を1ポイント差とした。
7位にコバライネンもスピード不足に悩まされながらも、5戦連続入賞を果した。
この二人の若手は、しっかりとした存在感を見せています。
▽バトン二度目の入賞
コバライネンの後ろでフィニッシュしたのがホンダのバトン。
これがシーズン二度目の入賞となる。
しかし、このポイントを足しても、年間獲得ポイントはわずかに2ポイント。
依然として、スーパーアグリよりも下のポジションである。
今回もマッサのリタイヤがなければ、無得点だったので、大きな前進があったわけではない。
ただ、新しく投入したサスペンションはうまく機能しているようだ。
ホンダの最大の問題は空力面であり、それに関してはもはや劇的な向上は望めないだろう。
そうなると、スパは厳しいレースとなりそうだ。
佐藤琢磨はブレーキから炎が出ている状態でスタート。
ブレーキ・オイルのオーバーヒートに悩まされ、ずるずると順位を落としてしまう。
ブレーキがきかない状態では、ピットインするしかなかったが、クルサードのクラッシュにより状況が変わった。
スロー走行を続けるうちに、オーバーヒートが収まってしまった。
その後はまずまずのペースでレースを続行し、左近をパスするなどしたが結局、16位でフィニッシュ。
資金不足が競争力に影響を及ぼしてきたスーパーアグリのシーズン終盤は厳しい。
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やっぱり二人のドライバーを同等に扱うということがフェラーリにしてもマクラーレンにしてもライバルチームに圧倒的な差をつける障害になっている気がします。セナもシューマッハもアロンソも同僚ドライバーのサポートがあってタイトルを取っています。今の形で接戦を演出すれば、観ているほうは楽しいですが。でも、来年も余裕をかましてそんなことをしているとBMWあたりに出し抜かれるのでは?個人的にはこのレースでライコネンの男気というか熱い走りが見れてとても感動しました。2007年のタイトルは取れないかもしれないが、フェラーリ・ドライバーらしい走りでした。
ハミルトン 日本GP制す アロンソ…
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