天候に左右されなかったハミルトン 日本GP観戦記
▽厳しいコンディション
正直言って、レースをやれるコンディションであったかどうか、疑問が残った。
土曜日11時の時点で、霧によるメディカル・ヘリコプターの飛行不能を理由にフリー走行をキャンセルした基準を厳格に適用するならば、日曜日のレースは開催することは、出来なかったろう。
霧は相変わらずひどかったように見えたし、なによりマシンの巻き上げる水煙は、ピットからのサインボードを見ることや、前を走るF1マシンのテールライトすら認識するのが困難な状況であった。
40分もセーフティー・カー(以下SCと略)を走らせるのもどうだろうか。
単純にTV中継を意識したとしか思えない。
天候状況が回復する見込みがないのであれば、マシンを止めたまま待てばいい。
いくら富士の天気を予測するのが難しいとはいえ、レーダーや衛星を使えば短時間の予報は十分可能であろう。
自前の設備を持たなくても、今は民間の気象情報会社と契約すれば、かなりの情報が入手可能である。
SCがピットに入り、レースがスタートした後も、雨は強くなったり弱くなったりを繰り返した。
SCが走っていた時より、ひどいコンディションの時もあったが、レースは続く。
SCが入っているときですら、コースアウトするマシンがある中、レースを続行するのはかなり無理があるように思えた。
アクアプレーニング現象が起こっていたと証言しているドライバーも複数人いる。
かなり危険な状況であったのは間違いがない。
もっとも10万人以上入った中でイベント自体を中止にすることは出来なかったとは思う。
正直に言って、けが人が出なくてよかったと思う。
もちろん、ハミルトンの優勝にケチをつけるつもりはない。
コンディションはどのドライバーにも公平であるし、彼が有利にレースを展開できたのも、土曜日の素晴らしい予選アタックのお陰である。
Q3でアロンソに先行されていた彼の見せた、最後のアタック。
微妙なコンディションの中、大逆転アタック。
もっとも路面状態がいい最後のアタックを選択したハミルトンの作戦勝ち。
これがワールド・チャンピオンを決めたといえるアタックだった。
もし、これが逆だったらレース展開はまったく違ったモノになっていただろう。
アロンソは水煙を避けるために、ある程度の距離を持って二位につけていた。
その為、一回目のピットストップ後に4位集団の後ろで復帰して前に4台いる状態だった。
これだけの水煙があると前のマシンを抜くのは相当な勇気とリスクをとる覚悟が必要である。
アロンソはそのリスクを取りに行き、ベッテルと接触し、マシンにダメージを負った。
そして、100Rの立ち上がりでスピンして、クラッシュした。
今シーズンのチャンピオンシップに決着がついた瞬間だった。
アロンソは、クラッシュした時はアクアプレーニング現象が出てどうしようもなかったと証言している。
普通、あの場所は突っ込む所ではないので、彼の証言は正しいだろう。
さらにSCが導入があんなに長引かなければ、もっと後続との差を広げることが可能だったし、そうすれば4位グループの前で復帰できただろう。
そう言う訳で、アロンソにとって、このレースは土曜日の予選で敗れた瞬間から、悪循環にはまってしまったと言えよう。
それにしても今回の異例のスタートは、疑問が多い。
土曜日の時点で、セットアップや戦略を固定させておいて、スタート方法を変更しSCを延々と走らせるのはどうなんだろうか。
彼らは当然、通常のスタートがおこなわれることを前提に、作戦を考えている。
安全上の理由でSC先導でのローリング・スタートになったとしても遅くとも三周から五周程度で、スタートさせるべきだ。
そうでなければ、止まって雨が弱くなるのを待つべきであろう。
土曜日のドライセットアップを変更できないというのも、安全性という観点から見て問題が多いだろう。
土曜日と日曜日のコンディションが違う場合には、セットアップの変更を認めるくらいの柔軟性があってもいい。
あの雨の中をドライセットアップで走るのは、かなり危険な行為である。
そういう悪コンディションの中でも、ハミルトンの走りは見事だった。
トップで水煙がない状況を活かし、一度目のピットアウト後も3位でコースに復帰した。
クビサと接触した以外は、危なげない勝利。
クビサと接触した時に、マシンを破損しなかったのは幸運であったが、チャンピオンには幸運もまた味方するモノだ。
ヨーロッパGP、突然の豪雨でコースアウトして、無得点に終わった教訓を生かし、今回は最後までノーミスで走りきった。
とてもスムーズなブレーキングも見事だった。
それにしても、この大雨の中オーバーステア気味のマクラーレンを完全に操る彼のステアリングワークは、最高であった。
彼はワールドチャンピオンの称号にふさわしい、偉大なるレーサーである。
▽フェラーリまさかのピットイン
フェラーリが序盤にピットインしたとき、不思議に感じた方も多いはずだ。
TVの解説では燃料搭載量が少ないので、ピットインしたのではないかと言われていたが、レース後とんでもない事実が判明した。
それは、フェラーリはなんと雨が上がる方にかけて、スタンダードウェットでスタートしたのだ。
あれっ、SC先導でのスタートで全車エクストリームウェットでスタートしなければいけなかったはずだと、皆さん思うだろう。
その通りである。
だから、フェラーリは強制的にピットストップさせられたのだ。
フェラーリ曰く、その通達が届くのが遅く、スタートに間に合わなかったというのだ。
これらの通達は、なんとe-mailでおこなわれた。
これは、ピットレーンの位置で情報が届く時間帯に差が出ないよう、全チーム同意のもとでおこなわれた。
しかし、そもそもe-mailなどは遅延が発生する可能性があるのだし、こんな重要な通達をe-mailだけでするなど、ITの知識が多少でもあれば絶対にしない。
結果的に、フェラーリがスタンダードウェットで走り続けても、ピットインしなければならなかったと思われるので、結果的に問題なかったが、これでチャンピオンが決まっていたらと思うと、ぞっとする。
FIAもこれ以降は、文書での通達も並行しておこなうことに同意したそうだが、なんともお粗末な限りである。
ライコネンは怒濤の追い上げで3位に入賞したが、ハミルトンとのポイント差は17ポイントへと開き、タイトルは絶望的となった。
▽ウェバー、ベッテル、コバライネンの三者三様
そのライコネンとの激しい2位争いを制したのはコバライネン。
シーズン序盤は、ブリヂストンタイヤになれずに、苦闘したコバライネンだがここにきて連続入賞をかざり、初の表彰台を荒れた日本GPで達成した。
ライコネンの追撃を退けた、その走りはこの難しいコンディションの中ではお見事。
トロ・ロッソのベッテルも惜しいレースを逃した。
SC走行中、3位だったベッテルは2位を走るウェバーに追突してレースを終えた。
視界も限られる中、ウェバーが急にブレーキを踏んだのに、反応するのが遅れ追突したのであろう。
また、彼は1コーナーでアロンソにも当たってしまった。
あの時も、彼は避けようとしたかもしれないが、止まりきることが出来なかったのであろう。
新人である彼をこの厳しいコンディションの中で責められはしない。
それにしても、惜しいチャンスを逸した。
彼はレインセッティングにして、雨にかけていただけに、悔やみきれない結果となった。
リタイヤ後の彼は泣いていた。
惜しいのはぶつけられたウェバーもそうだ。
彼の場合は、追突されたのだから、納得がいかないだろう。
まさか、SC走行時にぶつけられるとは思いもしない。
幸運と不運が交錯した、日本GPとなった。
正直言って、土曜日の予選でもっとレイン・セッティングにするマシンが多くないのが不思議で仕方なかった。
インターネットの天気予報も見ても、翌日のレース開催時間は雨になっていたので、雨が降らない方にかけたドライバーがほとんどだったことに驚いた。
一般の我々が入手できる情報ですら、雨の予報なのになぜ雨が止むことにかけたのだろうか。
不思議だ。
▽ホンダの幸運と不運
ホンダも幸運と不運が交互に訪れた。
幸運は予選、決勝とも雨になったこと。
正直、ホンダはドライでは上位勢に太刀打ちすることはできなかったので、このコンディションを恵みの雨にし、バトンは予選7位を得る。
決勝でもロズベルグのエンジン交換と、フェラーリのピットストップにより一時は4位を走り、上位を狙えるかと思われたが、ハイドフェルドと接触。
最後は琢磨と接触し、マシンを止めた。
バリチェロも終盤まで、8位を走行していたが燃料が続かずピットインして入賞の望みを絶たれた。
琢磨はセーフティカー走行中にも、ブルツと接触している。
とにかく今回は、誰が誰にぶつかってもおかしくなかった。
誰の責任でもない。
とにかく、怪我人がでないでレースが終わった幸運を喜ぼう。
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ペースカー先導中のハミルトンの危険過ぎる急発進・急ブレーキの繰り返し(駆け引きと本人は言うだろうが)、それに被害を受けたアロンソ、ウェバー、ヴェッテル、ハミルトンの常識外のラインどりのせいで、ハミルトンにぶつかったからといってペナルティを受けたクビサ、エクストリームウェット装着の通達がされず、被害を受けたフェラーリの2台、それよりもなによりも追い抜き禁止のペースカー先導の周回が異常なまでに長かった事、ここまでハミルトンに勝たせるお膳立てをして勝てなかったら、そっちのほうが驚きです。この傾向は今回に限らずシーズンを通して言えることです。以前、ヴィルヌーヴがハミルトンのドライビングは危険だと警鐘をならしていましたが、今回は特にそう思いました。もうわがままやりたい放題という感じですね。いきなり最強のマシンを与えられるとこういうドライバーになるんですかね?こういうドライバーばっかりになったらF1も終わりだな。
泣いているベッテルを見て、悔しいだろうなぁと思いつつ、二人に謝るのが先だろうと思いましたが、
なるほど、あまり責めるのも酷かも知れませんですね。彼にミスが多く、危機回避能力というか反射神経が少しばかり鈍いように見えてしまうのも、驚異の走りを見せるハミルトンのみならず、知らず知らずのうちにセナやシューマッハ、ミカのルーキー時と比べてしまっているからでしょうか。
土屋さんがGPニュースで、後ろが流れやすいおもしろい(難しい)サーキットでハミルトンのカウンターステアの当て方がすばらしいと細かく解説していて、とても納得しました。ご覧になりました?
それにしても、上記の方のコメントは大分偏見に満ちていますね;
残念な結果
でした、レースの運営に?!でした
無理矢理なスタートに
Eメールで通達という方法
はたしかにおかしいですね。
目の前にいるのに
掲示するとか
ITは万能ではありませんから
観客がかわいそうでした。
アクセスラインを増強しないと
鈴鹿の状況をみてるものですから
予想はつきましたが。
もしライコネンが2位だったら
1位は無理として
F-1が衰退しないことを
願います。
相撲もかなり危険な状態ですから
TOPの運営次第だと思います。
ホンダは来期に期待です
今期は、ワーストマシン決定ですね。