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ハミルトン 痛恨のリタイヤ 2007中国GP観戦記

▽謎が謎を呼ぶハミルトンのリタイヤ おそらくほとんどの方が、なぜハミルトンがタイヤ交換しなかったのか疑問に思っただろう。 彼はトップを走っており、しかも予定していたピットインは迫っていた。 ピットに戻らなかったのはチームからの指示なのか、ハミルトンの判断なのか。 その前の周から、ハミルトンはコーナーを曲がりきれていなかった。 これは、おそらくリアタイヤの磨耗がひどすぎて、トラクションがかからなかったからだろう。 F1マシンはハンドルでターンしているのではない。 ドライバーは、ハンドルでターンするきっかけを作っているに過ぎない。 ドライバーはハンドルを少し切った後は、アクセルワークで姿勢制御をし、コーナーをクリアしている。 だから、ハミルトンはリアタイヤがだめにもかかわらず、コーナーを曲がりきれなかったと思われる。 実はハミルトンがストップする5周前からブリヂストンはタイヤ交換することを、アドバイスしていた。 ストップする前には、バイブレーションも出ていて、チーム側も異常が起こっていることを認識していた。 ハミルトンとマクラーレン側からすると、天候が変化すると予想し、ピットインをできるだけ遅くしたかったのだと思う。 実際、彼がピットへ向かう2~3周前に、雨が降っている。 だからその後で、タイヤ交換したいのは当然である。 雨の状況を見て、ドライタイヤかレインタイヤか選択するというのは、おかしいことではない。 ドライ・タイヤ交換した直後に、雨が強くなれば彼の順位は落ちるので、これは当然の作戦であった。 ハミルトンは予選順位を優先して、軽い燃料でレースの主導権を握る作戦だったので、ライバルに比べて早め早めに動かざるを得なかった。 この戦術も間違っているとは言えない。 今年のF1は他のF1マシンの後ろにつくと不安定になるので、ポール・ポジションから逃げ切るのが勝利の方程式なのだ。 マクラーレン唯一の誤算は、スタンダード・ウェットタイヤの磨耗があそこまでひどくなると想定していなかったことだ。 実際、ライコネンやアロンソのタイヤはあそこまでひどく、磨耗していなかった。 ハミルトンもタイヤの磨耗を懸念して、ストレート部分では濡れた路面を走り、注意していた。 マクラーレンはフェラーリよりも、タイヤへの負荷は大きいマシンである。 特にリアタイヤの磨耗にはシーズン当初、苦しめられた。 ただ、今回アロンソには問題が発生していない。 セットアップの問題なのか、ハミルトンのドライビングに起因するものなのか。 アロンソは乾いた路面での、スタンダード・ウェットタイヤのマネージメントがハミルトンより上手かったと考えるのが妥当だろう。 このレースでハミルトンにとって、最悪の事態とはリタイヤすることであった。 だから、私はハミルトンがピットに入るとき、スピードをかなり落とすと思っていた。 それまでも、彼は何度もコーナーをまっすぐ抜けていた。 ところが、彼はかなりのスピードでピットの入り口へ飛び込み、そのままグラベルへ飛び出し、立ち往生してしまった。 ピットレーンの入り口は、コース上よりも濡れていたようだが、他のドライバーは問題なくクリアしていたので、これはハミルトンのリアタイヤが磨耗していたからとしか言いようがない。 つまり、ハミルトンがタイヤ交換を引っ張ったことは、ミスとは言えないと思うが、ハミルトンがスピードを十分に落とさずにピットへ飛び込もうとしたのは、明らかに彼のミスだと思う。 スピードを極端に落とさなければ、飛び出すことは、想定できることだった。 彼はピットインする周のストレートでも、かなりのスピードを出していた。 あそこまで、タイヤが磨耗していればいつタイヤがバーストしてもおかしくはない。 幸運にもタイヤはバーストしなかったが、ピットレーン入り口で彼のレースは終わった。 予選から決勝レースそれまでの彼の走りや、戦術はほぼ完璧だっただけに、悔やんでも悔やみきれない結果となった。 チャンピオンのタイトルをほぼつかみかけていたが、両手からこぼれていった。 ▽緊迫するチャンピオン争い 一方、チャンピオン争いをするライコネンとアロンソは、ハミルトンのリタイヤ後は順当に1位と2位でフィニッシュした。 アロンソはマッサをピットストップでかわすと、ハミルトンとのポイント差を自力で逆転可能な2ポイント差にするべく、ライコネンを追ったが、フェラーリの敵にはなりえず、2位で満足するしかなかった。 これで、ハミルトンとアロンソ、ライコネンのポイント差は4ポイントと、7ポイントとなった。 ライコネンが優勝した場合、ハミルトンは5位であれば、ライコネンを1ポイント上回る。 その時、アロンソが二位の場合、アロンソとは同点となるが、勝利数は同じで、2位の回数も同じで、3位の回数も同じ、4位の数も同じだが、5位の数はハミルトンが多いので、ハミルトンがチャンピオンになる。 まるでルービックキューブ並みの複雑な組み合わせだ。 ハミルトンが普通に走れば5位以下になることは考えづらい。 ただハミルトンが3位か4位の場合、アロンソが優勝すればアロンソが逆転で3年連続のチャンピオンとなる。 そう考えると、ハミルトンからすればフェラーリが速いほうが戦いやすい。 ライコネンにもチャンピオンの可能性があるとはいえ、最大の敵はやはりアロンソだからだ。 そして、最終戦のブラジルGPではフェラーリが速い可能性が高いと思っている。 この状態であってもハミルトンがチャンピオンに一番近い事実に変わりはないが、思われているほど大きなアドバンテージはない。 たとえば、ライコネン1位、アロンソ2位、ハミルトン4位の状況でも、ライコネンがリタイヤすれば、事態は一変する。 そして、今年のフェラーリは信頼性が低い。 歴史を振り返ると三つ巴で最終戦に突入した場合、ランキングトップのドライバーが勝つケースというのは我々が思っているほど多くはない。 最近、三つ巴のタイトル争いが繰り広げられたのは1986年であった。 このタイトル争いは我々日本人にとって記憶に残るものになった。 それはウィリアムズ・ホンダに乗るマンセルが圧倒的優位な状況で、最終戦を迎えたにもかかわらずタイヤバーストでタイトルを失ったからだ。 そして、同じくウィリアムズ・ホンダにのるピケがチャンピオンと思ったとき、彼もまた安全を考えタイヤ交換をすることになった。 最終的にチャンピオンになったのは、最も不利な立場だったアラン・プロスト。 彼はレース序盤にタイヤ交換を強いられ、タイトルは絶望的であった。 だが、彼はタイヤ交換していたからこそ、レース後半でタイヤ交換する必要がなく、彼が二年連続のチャンピオンに輝いた。 そう、レースでは何が起こるかわからない。 特にブラジルでは、急変する天候は珍しくもない。 誰がチャンピオンになるかは、フィニッシュの瞬間までわからない。 スリリングなレースが見られそうだ。 ▽波乱の結果 日本GPほどではなかったが雨にたたられた中国GPでは、波乱の結果が相次いだ。 4位のベッテルはトロ・ロッソに今シーズン初めてのポイントをもたらした。 チームメイトのリウッツィも6位に入賞し、トロ・ロッソはこのGPで一挙に8ポイントを得て、コンストラクターズ・ランキングで7位に躍進。 さらにホンダのバトンも今期最高位である5位でフィニッシュし、ついにスーパーアグリを上回った。 特に彼がドライタイヤに履き替えた後は、驚異的なペースで表彰台も夢ではないと思われたが、2ストップだったので5位で満足するしかなかった。 それでも、雨でなければこの結果は望めなかったので、ホンダとしては満足できる結果だ。 彼はドライタイヤに履き替えた後、雨が降りタイヤが冷える中でもコース上にとどまり続けた。 これが、彼の入賞を可能にした。 こらえきれずにレインタイヤに履き替えるために再度、ピットインしたバリチェロは大きく後退した。 トヨタのラルフ・シューマッハーは、今期最高の予選6位からスタートしたが、オープニングラップでスピン。 その後は、素晴らしいペースで走り続け順位を上げるが、リウィツィと接触し、最後はコースアウトして、エンジントラブルでレースを終える。 今年のラルフを象徴するようなレースだった。 途中のラップタイムはよかっただけに、最初のスピンが惜しかった。 彼のトヨタでのレースは次が最後となる。 シーズン終盤、戦闘力の衰えが激しいスーパーアグリはトロ・ロッソとホンダの入賞によりコンストラクターズの順位を9位に落とした。 これによる来年の分配金の減少を考えるとかなり厳しい状況だ。 中国GP前までコンストラクターズ7位だったスーパーアグリは、雨さえなければそのまま逃げ切れる可能性が大きかっただけに、雨が恨めしい。 唯一の救いはマクレーレンがコンストラクターズの権利を剥奪されたことで分配金対象外の11位になる心配がないことである。 泣いても笑っても、次が最終戦ブラジルGP。 突然のスコールなど波乱が多いGPだけに、タイトル争いがどうなるか予断を許さない。 ハミルトンも2位でいいなどと思ってレースに臨むと、足元をすくわれる。 そして、歴史はそれを証明している。 誰がチャンピオンになるにしても、素晴らしいバトルを見たいものである。

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