F1 ニュース&コラム Passion

ロス・ブラウン ホンダへ

ロス・ブラウンは東へ行くことを決意したようである。 東洋で本拠地登録をしているF1チームはホンダ、トヨタ、スーパーアグリと三つあるが、ロス・ブラウンが選んだのはホンダだった。 これは、F1での成功を目指しているホンダにとって、大きなターニング・ポイントになるかもしれない。 今更、ロス・ブラウンについての経歴を述べるまでもないが、簡単に説明しよう。 ロス・ブラウンはベネトンとフェラーリで、テクニカル・ディレクターとして活躍。 彼はミハエル・シューマッハーがチャンピオンを取った7回全てに、主要スタッフとして関わっていた。 その彼が、昨年いっぱいで引退したミハエル・シューマッハーの後を追うようにフェラーリを離れた。 当初の発表では、ロス・ブラウンは1年間の休息をとって、フェラーリに復帰すると発表されていたが、それが表向きの話であったことは、公然の秘密であった。 ロス・ブラウンは、それまで十分に活躍したテクニカル・ディレクターとしてではなく、次のステップを求めていた。 それがフェラーリのチーム代表になると言うことだ。 そころが、ジャン・トッドは昨年、その職を離れなかった。 そして、今年ジャン・トッドがルカ・モンテツェモロの意向通りにF1チームを離れれば、ロス・ブラウンが後任に収まるはずであった。 ところが、今年のフェラーリは逆転でダブル・チャンピオンを、獲得。 ジャン・トッドは、責任を問われて首になることもなく、代表にとどまることになった。 フェラーリ代表の席が狙えなくなった、ロス・ブラウンは他チームの代表を狙うことになる。 トヨタやレッドブルも興味を示したらしいが、最終的にはホンダを選んだようだ。 ニック・フライは最高責任者として留任するが、チーム運営から技術的な面までロス・ブラウンが管理することになるだろう。 彼にとっては、その責任範囲の広さと、報酬と、最初からアプローチしていたホンダの熱意に動かされたのだろう。 だが、これでホンダの全ての問題が解決されると思うのは、早計である。 まず、2008年のマシンの設計はほとんど終了している。 ロス・ブラウンが100%コミットするマシンが出てくるのは、2009年シーズンとなろう。 来年からホンダが速くなるかどうかは、彼の就任とは別問題である。 さらに、彼が力を発揮できるかどうかも、懸念される点だ。 力のある人物は、非常に個性的であることが多い。 ロス・ブラウンもまたその一人であろう。 彼は自分自身のやり方を通そうとするだろう。 ホンダがそれを容認できるかどうかが、今後の課題である。 さらに実権を手放したといえ、ロス・ブラウンの上にニック・フライが最高責任者として存在する点も気にかかる。 ニック・フライはレース屋ではなく、頭のいいサラリーマンである。 その立ち振る舞いの上手さから、成績不振の責任を取ることもなく、生き残ってきた。 ロス・ブラウンが就任してホンダが成功すれば、彼の立場は悪くなる。 そのとき、ニック・フライが画策して、ロス・ブラウンを追い出すことも考えられる。 トヨタがマイク・ガスコインを放出したようにだ。 ホンダの中本氏と技術面での役割分担も現時点は不明だ。 さらに、ロス・ブラウンはミハエル・シューマッハーという傑出したドライバーと共に成功したという事実は、見逃せない。 果たして、彼はミハエル・シューマッハー抜きでも成功できるのだろうか。 また、テクニカル・ディレクターとして技術面に集中できていたフェラーリ時代とは違い、マネージメントにも深く関わるとなると、テクニカル面でのコミットが少なくなるという懸念もある。 ニューウェイのレッドブル移籍を見ても分かるように、一人の力で勝つことはできない。 チーム全体の力が必要だし、なによりドライバーの能力は重要である。 ロス・ブラウンはF1の世界ではよく知られた存在だし、知人も多い。 その彼がいることで、今後ドライバーの移籍でも有利な立場になることは可能だ。 なによりも、彼が勝ち方を知っているというのは大きい。 この経験は、ホンダにはなかったもので、貴重な贈り物となろう。 このように、ロス・ブラウンという大物の移籍はホンダにとっては薬にもなるし、毒にもなる可能性がある。 どちらにせよ、今年より悪くなることはないので、やるしかない。 来年のホンダがどのように変化するのか、楽しみである。

2 thoughts on “ロス・ブラウン ホンダへ

  1. 特・名機某

    ロス・ブラウンもそろそろジョン・バーナードみたくなってきてるのかなぁとも思ってきてしまいます。
    ジョン・バーナードもマクラーレンでF1史上初のカーボンファイバー・モノコック採用で有名になったデザイナーですが
    フェラーリとベネトンでデザイナーをやったあとはプッツリとその名を聞かなくなりました。
    ロス・ブラウンもロリー・バーンという相方みたいな人が居たからこそ"ベネトン"から"TWRジャガー"のCカーのデザインをやって"フェラーリ"に移籍できたと思うんですが"仙太郎"さんはどう思われます?

  2. 仙太郎

    コメントありがとうございます。
    そうですね。
    名機某さんの言われるとおりだと思います。
    F1の世界で個人の才能は非常に重要ですが、それだけでは勝てないですよね。
    ニューウェイもレッドブルで苦労しています。
    なので、ロス・ブラウンがホンダに来れば全て解決すると思うのは間違っているでしょう。
    旧BARの生ぬるい体質を、ぶち壊すくらいでないと、立て直すのは難しいと思います。
    果たして彼がそこまでの権限を得られるのかが、注目です。
    では、またよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください