開幕三戦を終えて
1.ルノーは相当遅い
実は、私は開幕前にアロンソがいればルノーのマシンがある程度遅くても、チャンピオン争いに絡んでくるのではないかと考えていました。
テストでは、ロングランのペースは悪くないとの事でしたので。
だが、開幕三戦を見るとその期待は打ち砕かれました。
ルノーのペースはかなり遅いことがわかり、アロンソを持ってしてもいかんともしがたい状況です。
これを確信したのは、バーレーンGPでハミルトンがアロンソに追突したときです。
最初は、アロンソが嫌がらせでスピードを落としたのかと思いましたが、テレメトリーのデータを見た人に言わせるとそのような事実はないそうです。
となると、アロンソのコーナーリング・スピードがあまりにも遅かったので、ハミルトンが追突したと見るのが、妥当でしょう。
ハミルトンも前を走るのが、ピケJrだったら、追突しないように気をつけてのでしょうが、まさかアロンソがそんなに遅いとは思わなかったのでしょう。
それと、CSの解説でアロンソのリア・ウィングの翼端板が壊れていて、ラップタイムに影響があるかのようにいわれていましたが、あの程度の損傷であれば、レースペースでは問題ありません。
今のF1は、空力的に洗練されており、一つのパーツが壊れたからといって、極端にダウンフォースが落ちることがありません。
レース中であれば、それよりもタイヤのたれなどの要因が大きく影響を受けます。
アロンソも、ロングランのペースが上がらなかったのはマシンのせいであると認めています。
開幕戦で入賞できたのは、レースが荒れたのとアロンソが我慢強く走りきったことが大きな要因です。
現状のままですと、フェラーリ、マクラーレン、BMWを実力でかわすことはほぼ不可能。
そうすると、この3チームが完走すると仮定すると、アロンソの狙える最上位は7位となります。
それどころか、序盤のトヨタの好調ぶりを見ると、入賞すら難しい状況であります。
幸いトヨタとの差は少ないみたいなので、アロンソを持ってすれば何とかなりそうですが、スタート前から7位を狙うというのも、厳しいものがあります。
アロンソ自身はこういう状況も、落ち込んではいないようです。
難しい状況の中でも、文句を言わず、自分のベストを尽くし、最善の結果を得ようとするアロンソ。
さすがに、あのミハエル・シューマッハーを破り二度のタイトルを取っただけのことはあります。
一部には、アロンソの契約には、パフォーマンス条項が含まれていて、コンストラクターズのランキングで一定の順位以下だと、アロンソの契約が解除になると言われています。
だから、アロンソはわざと遅く走っているかの、報道も見受けられますが、そんなことはないでしょう。
もし、アロンソがそんなことをしているようであれば、二度のチャンピオンになることはありません。
いつでも、全力で挑戦するからこそ彼は二度のチャンピオンになれたのです。
見習わないといけません。
2.BMWは相当早い
一方、BMWはかなり速いペースを持っています。
ラップタイムは、フェラーリと比べると若干劣ってはいますが、第二グループは完全に抜け出したようです。
昨年もなかなかマシンを送り出したBMWですが、今シーズンも好調を維持しているようです。
この二年連続競争力のあるマシンを開発するというのは、非常に難しいのです。
単発的にいいマシンを作ることは、たまに出来るんです。
でも、連続でいいマシンを作るということは、なぜ今のマシンのどこがいいのかという理解が出来ていないと、次の年には大失敗してしまいます。
ホンダが優勝した翌年に惨敗したのを見ていただけると、よく分かると思います。
昨年、BMWからは多くのスタッフが流出しました。
この影響が出てくるのは、来シーズンでしょうから、心配の種は付きません。
実は、テストの初期段階ではこのマシンは失敗作ぽかったのですが、短期間でBMWスタッフは盛り返してきたようです。
おそらく、BMWのマシンが速いので乗りにくかったのではないでしょうか。
一般的に、速いマシンが乗りやすいと思われているかもしれませんが、ドライバーに聞くとそうではないようです。
だから、トップチームの速いマシンに乗せた時に、そのドライバーの本当の力がわかるのです。
3.ハミルトンは潔い
ハミルトンのレース後の態度は、久しぶりに心地よい気分にさせてくれた。
F1がビッグビジネスになるにつれ、他人を批判する風潮が蔓延している。
遅ければマシンのせいにし、接触すれば他人のせいにする。
そんな中、ハミルトンはバーレーンGP終了後、アロンソに接触したのは自分のせいであることを認め、チームに謝罪しました。
この態度は非常に重要だと思います。
2006年シーズン、アロンソはモンツァでエンジン・ブローしたときに、チームを励ましてこう言いました「まだ、終わった訳じゃない」。
同じシーズン、ミハエル・シューマッハーは日本GPでリタイヤしたとき、チームを責めませんでした。
人間誰しもミスを犯します。
そんな時に、どういう態度を取るかによって人間性が現れます。
過去に見てきた中で、偉大なドライバーと言われている人は、みな素晴らしい人間性を備えています。
いろいろ議論のあるミハエル・シューマッハーもチーム内の人間には、よくしていました。
速ければチャンピオンになれるわけでは、ありません。
エンジニアやメカニックだって人間です。
彼らの助けなしにチャンピオンになれるわけはありません。
もしろん、彼はプロですから手抜きはありません。
でも、最後の最後は、あのドライバーのために頑張ろうという気持ちなのではないでしょうか。
4.フェラーリの開幕三戦は成功だったのか?
キミ・ライコネンは開幕三戦を終えて、ランキングトップ。
昨年のことを考えると、良いで出だしだ。
ただ、シーズン前のテストの状況を考えると、全て1-2フィニッシュで、コンストラクターズ・ポイントで54ポイントでもおかしくはなかった。
だが現実は、29ポイントで約半分のポイントで開幕の遠征を終えた。
だが、速さはあることを証明したし、昨シーズンは鉄壁の信頼性を見せていたマクラーレンが自滅しているので、悪くはない。
BMWの好調さは、心配だろうが、彼らを脅かすほどではないだろう。
ただ、一つご用心。
昨年、残り二戦でライコネンがチャンピオンになると予想した人は、いなかっただろう。
つまり、このことからわかることは、F1では何でも起こりえるということだ。
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