フェラーリの不運とハミルトン圧勝 モナコGP観戦記
▽不運なフェラーリ
結果的には、惨敗に終わったフェラーリだが、致し方ない部分も多かった。
決勝が雨でなければ、フロント・ローを占めたフェラーリ・ドライバーのどちらかが勝てる可能性はあったし、たとえ負けても2位3位は堅かっただろう。
燃料は重かったとマッサが証言しているので、ハミルトンさえスタートで抑えきれば、チャンスは十分あった。
それだけに、決勝の雨はフェラーリにとっては不運だった。
レース序盤は、ポールからのスタートを活かしたマッサがリード。
最大のライバル、マクラーレンのコバライネンはピットスタートで脱落し、ハミルトンがハイドロプレーニングを起こし壁に当たって、早々に後退したからだ。
ところが、これがハミルトンに味方するのだから、雨のモナコはわからない。
彼がピットインした直後にSCが導入されギャップが縮まる幸運もあった。
そして路面が乾いてドライタイヤで走れる頃に、最後のピットイン。
まるで、ハミルトン勝利のシナリオがあるかのような展開。
二度目のSCで、差を詰められてしまったが、それでも難なく逃げ切り今季二勝目、伝統のモナコで初勝利をおさめた。
もっとも、ハミルトンが運だけで勝ったわけでは、もちろんない。
路面が乾きかけてきた時の、彼の速さは抜群で燃料搭載量の差があったとはいえ、驚異的な走りだった。
マッサやクビサはタイヤのグレイニングに苦しんでいたので、太刀打ちできなかった。
燃料搭載量に差がなくなった最後のスティントでも、クビサやマッサを圧倒し瞬く間に差を広げた。
マッサの敗因として、1コーナーで飛び出たことや、ピットでのミスなどが上げられるかもしれないが、これだけ混乱したレースでは致し方ないだろう。
二回目のピットの時間が長引いたのは、クルーのミスだが、彼を責めるのも酷だろう。
フロント・ウィングを調整するのにクランク状の工具を使う。
通常だと数回、回転させるだけなのだが、ウェットからドライ用に調整するのに通常の何倍も回す必要があった。
あの工具は回し始めると速く回せるが、一度リズムが狂うとなかなかスムーズに回すのが難しい。
1回目のストップで燃料搭載量を多くしたのも、天候を睨んで作戦の柔軟性を確保したかったからであり、路面が急速に回復しなければ功を奏していた可能性がある。
大半のドライバーが1回以上のミスをしており、マッサは逆にロスを最小限にとどめたので、褒められても良いかもしれない。
少なくともマッサは3位で6ポイントを獲得したのだから、満足だろう。
だが、もう一人のライコネンは違う。
彼にとっては厳しいレースになった。
ライコネンも不運な部分はあった。
スタート前のタイヤ装着に関する制限時間を守らなかったので、ピットスルーペナルティで後退。
それでも、最後には5位まで持ってきたのだが、ブレーキングをミスし自滅してポイント圏外に沈んでしまった。
前を走るのがフォース・インディアのスーティルとは言え、あそこで無理をする必要があったのか、理解しにくい走りだった。
もっとも、フェラーリのドライバーはこれらの不運がなくても、勝つことは難しかっただろう。
このレースは、ハミルトンとマクラーレンに完敗だった。
ハミルトンのペースはフェラーリを凌駕しており、どうあがいても勝てないレースだった。
であれば、差を縮められないためにも、ポイント獲得する必要があったのだが、ライコネンが1ポイント多く取りに行き、結果的にゼロポイントに終わったことは、痛い結末となった。
ここまで6レースを終わり、フェラーリが圧倒的な速さを見せつけているにもかかわらず、ハミルトンがランキングトップにいる事実をどう受け止めるべきなのか。
有利なマシンをドライブしながらライコネンとマッサがランキング2位3位であるのは、理解しがたい現実である。
今シーズン、それでもライコネンがチャンピオンになる可能性は高いが、このままであればチャンピオンになっても、高い評価は得られないだろう。
昨シーズン、ライコネンがチャンピオンになったのは、スパイ疑惑でマクラーレンが自滅したことが、有利に働いたことを忘れてはいけない。
▽悲運のスーティル
今回のレースで大活躍したのが、スーティル。
戦闘力の劣るフォース・インディアをドライブしながら、難しいコンディションを走りきり4位入賞が目前だった。
5位ライコネンとの差もあり、後は走りきるだけだったのだが、最後にSCが入り、ライコネンとテール・ツゥ・ノーズになる。
それでも、モナコでは抜けないので、ミスさえなければ4位は確実だった。
それが、ライコネンのミスで全てが吹き飛んでしまった。
フェラーリとライコネンは謝意を表したらしいが、それでスーティルとフォース・インディアが失ったモノが返ってくる訳もない。
彼らが次にこれほどのビッグチャンスを得る機会があるのかさえわからない。
それだけに、現役の世界チャンピオンが犯したミスは、非難されても仕方がないだろう。
▽ミスなく走りきったクビサと一貴
ここまでレースが荒れると、ミスなく淡々と走りきるのも一苦労である。
そんな中、クビサはミスなく2位に入賞。
フェラーリのトラブルがあったとはいえ、素晴らしい結果だ。
ここまで、安定した結果を残しているクビサはチャンピオンシップポイントを32に延ばし、3位のマッサと2点差。
トップのハミルトンとの差は6ポイント差である。
レースペースでは、フェラーリやマクラーレンに少し遅れをとっているBMWだが、この安定感は侮れない。
中嶋一貴も難しいコンディションの中、走りきり7位に入賞。
これで、チームメイトのニコ・ロズベルグとは1ポイント差となった。
荒れたレースをきっちりと完走することはすばらしい。
ただ、予選でのニコとの差はまだまだ大きく課題は多い。
この問題を解決できないにも関わらず、結果を残しているのはいい面ばかりではない。
完走できるのはいいのだが、このままでは荒れないレース以外は、ノーチャンスである。
ホンダのバリチェロが完走し、23戦ぶりの入賞で6位。
ただ、ホンダの戦闘力が上がったわけではない。
上位陣の脱落の結果、このポジションに来ただけである。
予選では二人ともQ2で脱落。
ホンダの苦悩は続きそうだ。
トヨタの二台は、共にQ3に進出し期待されたが、回復する天候の中でエクストリーム・ウエット・タイヤに交換したことが裏目に出て12位と13位でレースを終えた。
さて、次はカナダGP。
モナコではきっちりと対策を施してきたフェラーリが、昨年惨敗したカナダをどう攻略してくるか注目。
トルコの低速区間とモナコで速かったフェラーリは、トラクションがかなり良さそうなので、カナダでも戦闘力がありそうだ。
逆にハミルトンが勝てれば、チャンピオン争いはおもしろくなる。
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仙太郎さん毎度どもです。
いやぁ凄かったですねぇ。何がってSCの出動回数もさることながら、そんなとこでクラッシュしたら後続が大変でしょっていうところでやってましたよね。
カジノホテル越えたところでクルサードがクラッシュしたところにブルテーが追突、プールサイドシケインでロスベルグが派手にクラッシュと自動車レースのクラッシュ場面のオイシイとこが凝縮した展開でした。