クビサの初優勝とハミルトンのミス 2008 Rd.7 カナダGP観戦記
▽クビサ、初優勝おめでとう
いつでも、初優勝を見るのは気持ちのいいものだ。
予想通りに荒れたレースを制したのは、評価が上り調子だったロバート・クビサ。
ピット出口でハミルトンがライコネンに衝突するという幸運はあったが、コバライネンやマッサを下しての堂々の勝利。
特に、二回目のピットインを前に1分17秒を連発し、ハイドフェルドと1周2秒づつ差を広げていく、その走りは圧巻。
最後のタイヤ交換を終えて、クビサはトップでコースに戻り、初優勝。
BMWにとっても、チーム買収後初の勝利となった。
ポーランド人であるクビサがここにたどり着くまでは、様々な障害があったことだろう。
モータースポーツをバックアップしてくれるような企業のない、ポーランドからF1にたどり着くのは並大抵のことではない。
そう考えると、自動車メーカーのバックアップで、ドライバーを送り込んでいる日本の環境が恵まれているとは、一概には言えない。
チャンスが多いことは、悪いことではない。
ドライバーの良し悪しは、実際にマシンに乗せてレースに参加させない限りは、わからない。
ただし、その後は本人の能力とコミットメントに左右される。
私は、メーカーのサポートやお金の落ち込みでF1マシンに乗ることが悪いとは思わない。
ミハエルだってベンツのお金を払ってもらってジョーダンからデビューを飾ったし、ニキ・ラウダだって生命保険を担保にお金を借りて、マーチのシートを得た。
つまりどんな障害あろうとも、それを乗り越えられるだけの情熱がなければ、トップにまで上り詰めることはできない。
F1には、速いドライバーしか存在しない。
才能はあって当たり前の世界なのだ。
そういう意味で、やさしい日本人が生き残るには、厳しい世界だ。
クビサがこの後、どこまで上り詰めるかはわからない。
ただ、多くの偉大なドライバー達は、早い段階で初勝利を収めている。
その例に倣うとクビサの今後は、明るい。
確かに、今回のクビサは幸運だった。
だが、チャンスのあるときにつかみ取れる速さと頭の良さと確実さがなければ話にならない。
そう言う意味では、今回のクビサの勝利は当然の結果といえよう。
この勝利で、移籍市場で評価の高かったクビサの契約金が暴騰することだけは間違いがない。
そして、このことはフェラーリ移籍を狙うアロンソにとっては大きな障害になるかもしれない。
BMWは来年のドライバー・ラインアップにクビサとアロンソを狙っているという噂である。
そうなれば、BMWも真のトップチームに向けて大きなステップを踏み出すことになる。
思い返せば、一年前、大クラッシュを経験したクビサが同じカナダGPで初優勝したのも何かの縁を感じる。
▽SC導入の是非
まさかのリタイヤだった。
トップを独走し、優勝は間違いないと思われたハミルトンがピット出口でライコネンに追突するという、事態が発生した。
おそらく、ハミルトンは信号を見てなかったのだろう。
だが、ハミルトンだけを責めるのは酷なような気がする。
そもそも、SCを導入する必要はあったのだろうか。
イエローフラッグが出てから、SCが出るまで3周ほどあった。
しかも、レコードラインからは外れていたし、ブラインドでもなかった。
コースには半分かかっていたが、そのまま放置していても、問題なかったと思うのだが。
消火活動はSC以前に行っていたし、危険というならばもっと早く入れるべきだろう。
クビサとライコネンが二台並んでなければ、ハミルトンは追突を避けられた。
交通事故を起こすときは、最悪のことが重なるのは、自分の経験でよくわかる。
彼が左にハンドルを切ったのは、本能だろう。
右側はガードレールだから、左に切るしかない。
それにしても、ハミルトンはペナルティで、モナコのライコネンがペナルティでないというのも理解に苦しむ。
ライコネンは、モナコとは状況が違うというが、ミスをして後ろから追突するという意味では全く一緒である。
さらに言えばなぜ、ニコ・ロズベルグもペナルティなのか。
ハミルトンはその前に、追突しリタイヤしていたわけだから、ペナルティにする意味がよくわからない。
昨年のカナダGPでも、そうだったがこのSC走行時のピットレーン入り口と出口のクローズは、あまり好きではない。
理由は簡単で、人為的な運不運で勝負が決まってしまうからだ。
私は単純に、速いドライバーが勝つというシンプルな勝負が見たい。
結果としてミハエル・シューマッハーが年間13勝しようが、彼が速くて強ければ仕方がない。
それは個人競技ではよくあることだ。
いつもタイガー・ウッズやロジャー・フェデラーが勝つからといって文句を言う人はいない。
もちろんSC導入により、昨年の佐藤琢磨の活躍や、今回のクビサの初優勝などもあるのだが、今回のハミルトンや昨年のアロンソのようなこともある。
昨年、アロンソがペナルティを受けなければ、チャンピオンシップの行方も左右していた可能性があるだけに、SC導入には明確な定義が求められる。
例えば、コース上をマシンが塞いで明らかに危険な場合などである。
実際、レース終盤では同じようなケースで、SCが入らなかった。
今回、SC導入の必要性があったのか、微妙な判断だったと思う。
実際、同じような状況がレース終盤にあったが、SCは入らなかった。
決して、レースをおもしろくする為に、SCが使われることのないように願いたい。
▽マッサ勝てず
本来、ハミルトンとライコネンがいない場合、勝たなければならないコバライネンとマッサは冴えないレースをおこなった。
ここカナダは、抜くのが難しいのでポジションが重要になる。
そういう意味で、予選ポジションが悪かったこの二人には厳しいレースとなった。
特にマッサは、レース終盤に一度に二人を抜くなど見せ場を作ったが、燃料補給のミスで、大きく後退。
ただ、それがなくてもこのコースでは予選6位からでは、勝てる可能性は極めて少ない。
▽中嶋一貴 チャンスを逃す
中島一貴は、混乱したレースで一度は二位を走行したが、なぜか2ストップを選択した。
恐らくウィリアムズの燃料タンクは小さめなので、1回のピットインでは最後まで持たなかったのだろう。
最後は、スピードの乗らないバトンに接触し、リタイヤ。
得意の荒れたレースだけだっただけに、残念であった。
予想外の展開といえば、バリチェロのトップ快走もあった。
彼は、路面状況が悪い予選をうまく利用しトップ10に入り、レースでもそのポジションを生かして、最後は7位でフィニッシュ。
体調不良だったらしいが、何回かミスをしながらも、走りきり結果を残した。
予選では、不調だったバトンも決勝レースでは、多少盛り返し、11位で完走。
ただ、これもホンダの戦闘能力が向上しての結果ではなく、バリチェロのがんばりと幸運によってもたらされたのであり、安心はできない。
路面状況の悪化に足をすくわれ、珍しく予選Q2で二台とも全滅したトヨタだったが、決勝ではうまく走りきりグロッグ4位、ツゥルーリ6位と二台とも入賞した。
▽これはカナダラリーか?
それにしても、路面状況は非常に悪かった。
劣悪と言ってもいいくらいだった。
路面がはがれることは、これまでもあったのだが、ここまでひどいのは記憶にない。
そのおかげで大混乱。
マッサやコバライネンが後方に沈むことになった。
まるでラリー・オーストラリアの路面のようであり、とてもF1を開催できるような状態ではなかった。
そういう状況の中でも、荒れた路面を避けてポールを獲得したハミルトンの機転はすばらしかった。
それだけに、このような結果は残念だった。
決勝でも、後半はかなり路面状況は厳しいようだったが、土曜日よりはマシだったようで、予告されていたSCは導入されずに、レースはフィニッシュ。
ジル・ビルニューブ・サーキットは来年に向けて、完全な再舗装を計画するらしいが、もう少し早くできなかったのだろうか。
カナダは夏と冬の寒暖の差が非常に激しいので、アスファルト路面にとって厳しいことは間違いないのだが。
FIAやFOMも、ピットなどの施設面ばかりに注意するのではなく、こういう部分にこそ注目してもらいたい。
【F1 Hyper News動画版のお知らせ】
何を血迷ったかなんと、動画版のF1 Hyper Newsを作成してしまいました。
初回なので、内容的にはまだまだですが、今後も出来たらいいなと考えています。
ただ、毎回作るのは時間的に無理があるようなので、次回予定は未定です。
F1 Hyper News モナコGP篇
前編
http://jp.youtube.com/watch?v=GWWt_CsGuj8
後編
http://jp.youtube.com/watch?v=CSMiGzWgy14&feature=related
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仙太郎
70年代からF-1を見続けているF1フリーク。
F-1以外にもWRC、サッカー、野球、NFLにも詳しい。
サッカー関係のブログもやっています。
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- F1 Hyper News vol.1 Monaco GP
- F1 Hyper News vol.2 カナダGP
ニコは「今までピットの出口で信号を確認するということはなかった。」というコメントまで出しています。
黄旗無視だってペナルティなのですからピット信号無視がペナルティは当然だと思います。
あと、ライコネンはルール無視、信号無視して追突したわけではないし、
強引な追い抜きを試みたわけでもなく単純なブレーキングミスなのでペナルティを受けるのはどうかと思います。
昨年のカナダGPの時の仙太郎さんの書き込みでも気になりましたが、貴方はピット出口の赤信号の意味を勘違いしていませんでしょうか?
セイフティカー走行中は追い越し不可です。コース全体が黄色旗状態になっております。その状況下でピットレーンとの合流があると、「どっちが前か、後か」と揉めるのは容易に想像できます。最悪の場合として、2004年アメリカGPのようにピット前のコースで事故があると、「ピットレーンを使って隊列を追い越す」ことが出来ることも考えられます。
このような問題を防ぐため、セイフティーカー先導の隊列通過中のピット出口は赤信号になります。これは90年代の時から行われておりました。
昨年の仙太郎さんの記事に「今年から施行されたルール」とありますが、明らかな間違いです。
さらに、F1は子供も見る競技です。日常生活で赤信号を無視するのは「道路交通の基礎的なミス」です。子供が真似してはいけません。よって、厳罰を持って対処する必要があります。
よって、去年のマッサとフィジケラは当然の失格です。今回のハミルトンとロズベルグも前を見ていなかったことは明白である以上、厳罰(次戦出場停止など)があってもおかしくない状況であり、グリッド10番降格など、生易しいでしょう。
最後になりますが、ピット「入口」の制限に関しては仙太郎さんにどういいたします。人為的に擾乱をもたらしても面白くないと思います。
ハイドフェルトの2位獲得、レース終了後の表情から察するに自分が1位になったかもしれないのに、、、
そういう表情のような気がしましたが、いかがでしょうか。
要するにチームの無言の圧力があったかも。
ハミルトンとライコネンの追突を同じくくりにするなんて信じられません。
ハミルトンとロズベルグのペナルティは昨年の富士の
ヴェッテルと同じでSC中に接触事故を起こしたからと
思ってたのですが違うのかな。