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ハミルトンの幸運と実力 イギリスGP観戦記

天気予報通りに雨になったイギリスGP。 勝ったのは地元イギリス人ドライバーのルイス・ハミルトン。 予選4位からスタートした、彼はスタートで二位に躍り出て、チームメイトのコバライネンをレース序盤でかわし、そのままチェッカーフラッグを受けた。 だが彼にも、危ない場面があった。 路面が徐々に乾いてきた場面では、ライコネンが速くあっという間に、距離を縮めてくる。 マクラーレンは、フェラーリをよりタイヤに厳しので、乾いてきた路面ではタイヤの磨耗が激しく苦しいドライビングを強いられた。 そういう理由で、最初のストップではハミルトンは迷うことなく、タイヤを交換。 一方のライコネンはタイヤ交換せずに、給油だけ済ましたが、これが二人の結果を大きく分けた。 1回目のストップ後、雨脚が強くなってきたことにより、タイヤ交換しなかったドライバーは極端にタイムが落ちた。 1周5秒以上もタイムが違ったので、タイヤ交換のために再度ピットインした方がよかったのだが、フェラーリは二度目のピットインを早めにして、最後まで走れる給油をすることを選択。 結果的にこれが、ライコネンから勝利の可能性を奪い取った。 1周5秒以上遅いのであれば、タイヤ交換のためにタイムロスをしても5周もすれば取り返すことができるので、早めに入れたほうがよかった。 それを二回目のピットインでガソリンを満載して最後まで走りきる戦略に変更したことにより、ライコネンが優勝する可能性はゼロになってしまった。 またもや、フェラーリの戦術ミスによる敗退と思われるかもしれないが、タイヤ交換後に雨が降るかどうかは誰にもわからない。 だから、この結果も致し方ないだろう。 ただ、もしフェラーリがライコネンを早くピットに入れて、エクストリームウェットに変えていれば状況は違っていたが、そこまでのギャンブルをフェラーリに求めるは酷だろう。 彼らにはポイントが必要だから。 これだけのトラブルがあっても、ライコネンは4位。 問題があったにしては、悪くはない。 それに彼は、チャンピオンシップではハミルトン、マッサと同ポイントでトップに並んだ。 ちょうど、シーズン半ばの第九戦を終えて、三人が並ぶ激しいチャンピオンシップ争い。 それにしても、フェラーリはこのイギリスGPでは絶対に勝ちたかっただけに、予選での低調のパフォーマンスなど問題の多いレースとなった。 イギリスGP 前には合同テストもあったし、その時もフェラーリの調子は悪くなかった。 考えられるのは風が強かったので、空力に優れた彼らのマシンは他のチームよりも、風の影響を受けた可能性はある。 ハミルトンにとっては、カナダGPでの追突とペナルティによりノーポイントに終わったフランスGPでの、悪夢を振り払う貴重な一勝。 二戦連続無得点で、チャンピンの可能性は少なくなったと思ったが、フェラーリが自滅したお陰で、またチャンスが見えてきた。 ▽失望のドライバー達 一方、彼らのチームメイト コバライネンとマッサには失望の日曜日となった。 コバライネンは5位に入賞したが、雨のレースをポールポジションからスタートしただけに、残念な結果となった。 しかも、終盤にライコネンに抜かれるというおまけも付いて、チームメイトをサポートすることもできなかった。 マッサに至っては予選9位で、決勝も数え切れないほどスピンしていた。 私の計算では5回は回っていたと思うのだが。 アクセルワークがライコネンより粗いのだろう。 トラクション・コントロールのないマシンになれてきたと思ったが、雨だとその差が明確に出てしまう。 ウェバーも結果にガッカリしたことだろう。 素晴らしい走りで、予選二位を得たのだが、スタートで失敗し4位に脱落。 その後、スピンをしてしまい、10位でフィニッシュ。 ▽ホンダ久しぶりの表彰台 ホンダのバリチェロが久しぶりに三位でフィニッシュ。 表彰台に上った。 彼らの勝因は、雨脚が強まる中いち早くへビィ・レインに交換したことだ。 1周10秒速い時もあり、下位からごぼう抜きをしていった。 ただ、結果は良かったものに、予選ではQ1で早々と敗退したので、決して手放しで喜べる結果でもない。 ギャンブルを仕掛けたのが当たっただけ。 ギャンブルは何度も当たらない。 それでも、この難しいコンディションの中、3位まで持ってきたのはベテランの技。 中嶋一貴は、8位に入賞し、ポイントでチーム名とのニコ・ロズベルグと並んだ。 最終ラップで、ツゥルーリにかわされなければ、逆転していただけに残念だった。 ただし、最後のピットストップを35周目にしてしまった一貴は、47周目に交換したツゥルーリよりタイヤの摩耗は、かなり厳しかった。 しかし、そこを何とかするのがドライバーの力なので、踏みとどまってほしかった。 ただ、チームからすれば晴れていれば、ポイントのチャンスは無かったので、それを考えると一貴の活躍はうれしい誤算だっただろう。 ▽明暗を分けたタイヤ交換 雨のレースだったので、今回もタイヤ交換の選択が明暗を分けた。 ただ、マクラーレンがタイヤ交換したのは、雨が降ると予測したわけではなく、単にタイヤが磨耗したから交換しただけなので、天候は彼らに味方した。 天候はレース中に回復するという予報だったが、降りが予想よりも激しく長かったので、路面が乾くのが遅くなり、バリチェロや一貴などエクストリームウェットへ交換したドライバーが上位に来た。 それだけに、ハミルトンは、あの雨の中、ミスもしないでスタンダードウェットで走りきるのだから、さすがとしか言いようがない。 幸運は彼に味方したが、それをモノにしたのは彼の実力であることを忘れてはいけない。

3 thoughts on “ハミルトンの幸運と実力 イギリスGP観戦記

  1. 特・名機某

    仙太郎さん毎度どもです。
    中継中でも言っていましたがあの上位争いの中に
    "トロロッソ"の"セバスチャン・ベッテル"が加わっていたら
    もっと混乱していたでしょうに。
    でもベッテルからしたら昨年の富士と同じようなヘマをしたっていうのはこの壁を乗り越えない限り彼に栄冠は来ないってことなんでしょう。
    まぁでもデイモン・ヒル以来のブリティッシュドライバーの優勝ってことで彼も来ていたようで白髪のポールマッカートニーっていう感じになってましたね。
    あとはディビッド・クルサードが一周もしないで同士討ちでドライバーを終えるというのも悲しいですね。

  2. 仙太郎

    コメントありがとうございます。
    ベッテルは、本当に惜しかったですね。
    彼が走り続けていれば、かなりの上位にきていた可能性が高いでしょう。
    でも、今年は荒れるレースが多いので、また彼にチャンスが来ると思います。
    その時は、きっと我々を驚かしてくれるでしょう。

  3. aa

    ホンダの表彰台はタイヤのみならず、予選の順位を捨て、雨用セッティングにするなどレース全体を考えて作戦を立てた結果だと思いますが。
    ロスが来る以前のホンダでは考えられなかったですね。

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