三人の幸運と不運 ハンガリーGP観戦記
▽それぞれの幸運と不運
このレース、マッサにとっては会心のレースだった。
恐らくキャリアの中でも、ベストなレースだったのではないだろうか。
彼は、予選からマシンのセットアップが決まってポールからスタートした場合と、そうでない場合で見せるパフォーマンスが違う。
最近のF1では、追い抜きが難しいので、致し方ない部分もあるが、その部分がライコネンやハミルトンにあって、マッサにない部分で、彼がチャンピオンを狙うのであれば、克服しなければいけないポイントだった。
マッサは今回、予選では二台のマクラーレンに先を行かれたが、会心のスタートを決めた。
1コーナーまでの距離があるとはいえ、予選3位から1コーナーの脱出までにトップに立ったのは見事。
ハミルトンは、イン側を抑える意識が強すぎて、マッサにアウトから並ばれたために、小回りを強いられ、コーナーの脱出速度が遅くなり、マッサに抜かれてしまった。
マッサは1コーナーのブレーキング時に前輪をロックさせたにもかかわらず、見事にマシンをコントロール。
ギリギリのブレーキングに、ギリギリのコーナーリング。
どちらが欠けても、ハミルトンを抜けなかったマッサの走りは、素晴らしかった。
コースアウトするしないは、紙一重だった。
レース・ペースでは、マッサとハミルトンがほぼ互角だったが、決勝当日の路面温度が上がったため、タイヤに厳しいマクラーレンのハミルトンが徐々に遅れてくる。
ハミルトンはピットインの際にも、フロント・ウィングを調整していたが、この日のマッサには歯が立たなかった。
それでも、最後のピットインで逆転すべくハミルトンは走っていたが、タイヤがパンクし大きく後退。
このパンクがハミルトンの走りの由来するのか、破片などを拾ったのかは、不明だが、昨シーズンから続く彼のタイヤトラブルはこれからも続く可能性が高い。
と言うのも、ハミルトンの高速コーナーでのスピードは他の誰よりも速く、それが彼のタイヤを痛める一因となっている。
ただ速く走るだけでなく、レースペースをコントロールしていく方法を考えなければいけないだろう。
今回は、マッサとの僅差の争いだったのでそこまでの余裕はなかったとは思うが、今後はそれを身につけなければならない。
今後は、チャンピオンシップをリードしているのであるから、ポイントを計算しながら走ると言うことも、考えるべきだろう。
それでも、タイヤ交換をして走り続けポイントが稼げたので、幸運だったといえる。
マシンを酷使したという意味では、マッサもそうだった。
彼はハミルトンを引き離すために、彼がパンクするまで全力で走っていた。
気温上昇がタイヤ温度という意味で、フェラーリに有利に働いたが、エンジンという意味では、かなりの負荷だったのだろう。
ハミルトンのパンク以降は、1分23秒台にペースを抑えていたのだが、最後まで持たなかった。
ペースを落としたマッサに対して、コバライネンが1分22秒で追いかけたが、何もなければマッサの優勝は動かなかった。
今回のコバライネンの初優勝は素晴らしいが、今年のコバライネンがハミルトンやマッサ、ライコネンと比べると少し見劣りするは否めない。
彼の速さに疑いはないのだが、ハミルトンと比べるとミスが多い。
そこを改善していかないと、この三人とチャンピオン争いをしていくのは、難しい。
ライコネンは、抜けないサーキットに悩まされ続けた。
路面温度が上がったことで、彼のフェラーリはよみがえった。
恐らくアロンソより1秒以上速く走れたはずだが、このコースではどうしようもない。
予選6位と、スタートでアロンソに前に行かれたことが、全てだった。
ただ、それでもマッサとハミルトンが後退したおかげで、3位に入賞。
ハミルトンとの差を縮めることができた。
フェラーリとしては、マッサのリタイヤは痛いが、もしハミルトンが優勝していれば、チャンピオンが厳しくなっただけに、ライコネンの3位で満足しなければいけないだろう。
まだまだ、チャンピオン争いは続く。
▽トヨタのグロック 2位
トヨタのグロックも会心の走りを見せた。
予選は見事に5位を獲得。
スタートでクビサをかわしたことは、彼のレースにとっては重要だった。
クビサのレースペースは遅かったからだ。
グロックはレース中も、1分22秒台で安定した走りを見せて、マッサとハミルトンのトラブルを味方にして二位を得た。
フランスGPでのツゥルーリの3位に続く、トヨタの表彰台。
ドイツGPでは、サスペンション・トラブルからクラッシュして体を痛めただけに、うれしいだろう。
ツゥルーリも7位に入賞し、このところのトヨタは戦闘力を増している。
このところ結果を残しているトヨタに比べホンダは、相変わらず改善の兆しが見えない。
来期のマシンやKERSの開発のため、今シーズンの進歩は見られないだろう。
アロンソのホンダ入りも噂されているが、彼一人でチームを変えることはできない。
例えアロンソがホンダに来ても、それだけで勝てるようにはならない。
ただ、アロンソのような勝者のメンタリティを持つ人間が、チームに与える影響はあるだろう。
ロス・ブラウンと共に、チーム改革ができればいいのだが、それでも数年かかるだろう。
だから、少なくとも複数年契約が必要なのだが、アロンソ側はその条件を受け入れるのが難しいだろう。
アロンソに一からチームを立て直していこうという気持ちがあればいいのだが、ワールドチャンピオンも経験している彼にそれを求めるのも、難しいと思う。
それよりは、若い才能のあるドライバーを見つけて、一緒に成長するのが良いと思うのだが。
それでは、ホンダ社内を説得できないのだろうか。
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