マッサ完勝 ヨーロッパGP観戦記
▽マッサのパーフェクト・ゲーム
マッサの完勝。
誰も彼に触ることができなかった。
彼を止めるためには、スタートで前に出るしかなかったが、ポールからスタートを決めたマッサはそのまま逃げ切った。
第一セクターが抜群に速い彼は、他を寄せ付けず得意のポール・ツゥ・ウィン。
チャンピオンシップ・ポイントを10追加し、ランキングでライコネンを抜き二位になり、ハミルトンとの差を6に縮めた。
今回、マッサとフェラーリの素晴らしかったところは、コース特性上抜けないと見抜き、軽めの燃料でポールを取り、逃げ切る戦略を立てたことだろう。
そして、マッサはその戦略を見事に完遂して見せた。
▽フェラーリに続くトラブル
マッサの唯一の問題は、二回目のピットを終了し出て行くときに起こった。
マッサがマシンを動かした時に、後ろから走ってきたスーティルと並んだのだ。
一瞬ひやりとしたが、マッサがスピードを落としスーティルを前に行かせることで、最悪の事態は避けられた。
この出来事に対して、スチュワードは審査することを発表。
別に接触したわけではないのだから、審査する必要もないように思えた。
しかも、レース後に審査するというのだから不思議であった。
もともと、レース中に審査をしてペナルティを与えることに批判があったのに導入したのは、レース後に結果を修正することは、視聴者にわかりにくく好ましくないとFIAが考えたからだ。
それを、わざわざレース後に審査するというのであるから、その意図がわからなかった。
だが、レース後に審査すると言う以上、マッサにタイム加算のペナルティが課される可能性は低く、一レース執行猶予付きのペナルティが与えられと予想していた。
結果は、罰金1万ユーロで、なんの為のペナルティかよくわからなかった。
過去にもピットレーンでサイド・バイ・サイドになることは何回もあり、その時は何のペナルティも無かった。
今回だけ、罰金というのも、根拠がわからない。
もっともCSフジで解説の川井ちゃんも話していたが、優勝がほぼ決まっていたマッサがあそこで、無理をする必要は全くなかった。
マッサ曰く、悪いのはスーティルだと主張しているが、横から突然飛び出してくるマッサを、彼がわかるはずもなく、止めるべきだったのはマッサの方であるのは間違いない。
もっともマッサが悪いわけではなく、ゴーの指令を出したフェラーリのスタッフの責任である。
もし、マッサがスーティルと接触しリタイヤして、悪いのはスーティルだと主張しても、失ったポイントが返ってくるわけではないからだ。
追いかけるハミルトンは、インフルエンザから体調が優れず、首に注射を打ちながらのドライブ。
鎮痛剤も飲みながらの出場で、二位は立派な結果である。
実際、ペドロ・デ・ラ・ロサはハミルトンの代わりに、出場する準備をするほど、症状は深刻だったようだ。
ライコネンは、今回も結果が残せなかった。
予選でもクビサの後ろの4位になり、スタートでコバライネンにかわされて5位に後退。
前回と同じくレースを通じて、コバライネンの後ろで、フラストレーションの募るレースを展開した。
気温が上がったこともあり、ライコネンはコバライネンより1秒近く速かったと思うが、このコース予想以上に抜けないコースだった。
ライコネンは二度目のピットストップで、フェラーリのピットシグナルが青になる前にマシンを動かし、給油ホースを着けたまま数メートル動いてしまった。
ここで、タイムをロスしたライコネンは、ツゥルーリにもかわされ6位に落ちた。
そして、さらにライコネンに不運がおとずれる。
二レース目を走っていた彼のエンジンが突然、白煙を吹き出しストップ。
3ポイントを失ってしまった。
原因はコネクティング・ロッドの破損。
前戦ハンガリーでのマッサと同じトラブルだった。
部品も全く一緒だったので、危惧はされていた。
だが、エンジン交換は10グリッド降格なので、不安はあったがそのまま走らせたのだ。
ここに来て、フェラーリのメカニカル・トラブル連発はチャンピオン争いに大きな影響を与えている。
唯一の救いはマクラーレンのハミルトンもトラブルに見舞われていることだろう。
▽好調続くトヨタと驚きのベッテル
フリー走行一回目とQ2でトップタイムをたたき出したベッテル。
これまでも、その存在を注目されいていたベッテルだが、ここに来てその才能を開花させた。
予選6位からスタートして、5位でフィニッシュ。
上位陣の大半が残った状況で、この成績は表彰台に匹敵する。
来シーズン、レッドブルへ移籍する彼だが、果たしてレッドブルは彼の才能に匹敵するマシンを供給できるのだろうか。
トヨタはツゥルーリとグロックが5位と7位でダブル入賞。
好調を維持している。
中嶋一貴は、マシンと相性の良いコースで過去最高の11位からスタート。
ところが、地元の英雄アロンソに追突して、彼のレースを終わらせてしまった。
接触に関してはアロンソが、アクセルを抜いているのは明らかなので、彼だけの責任ではないが、スペイン人の恨みを買ったことだけは確かだろう。
やはり彼の課題である予選順位を上げなければ、安定した成績を残すは難しい。
中団からのスタートは、団子状態になることが多く、事故に巻き込まれることも多い。
ホンダはもはやワークスとは思えないほどの、低空飛行が続く。
いくら今年の開発を止めたとはいえ、二台ともQ1脱落とは。
ブレーキにトラブルを抱えていたバリチェロは、フィジケラにも負けて19位スタート。
決勝でも、見せ場もなく完走したにとどまった。
こんな成績のホンダに、アロンソはくるのであろうか。
ニック・フライやロス・ブラウンは、ホンダにはF1で勝つためのリソースが揃っていると発言しているが、それを活用できないのが問題なのであり、ロス・ブラウン一人の力でどうこうできるレベルの話ではないように思えるのだが。
▽バレンシアの景色
コース幅が広く、ストレート終わりにハードなブレーキングポイントがあることから、パッシング・シーンの増加が期待されたが、ほとんどなく退屈なレースが淡々と繰り広げられた。
次は、ライコネンの得意なスパ。
ここで落とすとライコネンのチャンピオンには黄色信号がともる。
次のスパは、天候が安定しないことで有名で、気温が上がるか下がるかで、勝負の鍵は分かれそうである。
- フェラーリ トラブル頻発の背景
- エンジン凍結の抜け穴