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ホンダ F1撤退の裏側

ホンダF1撤退はある意味、当然というか仕方ないというか、苦渋の決断だった。
ホンダはその収益の大部分を、アメリカ市場に頼っており、そのアメリカ市場が急激に収縮している。

そのアメリカ市場が対前年比で20%から30%ほど下がり続けている。
これは、ホンダにとって衝撃的な数字である。ホンダ自体の売上は、そこまで落ちてはないが、それでもホンダに与えるその衝撃は計り知れない。



なにしろ、ホンダ自体の利益の大半をアメリカ市場から得ているのだ。

多くの方は自動車メーカーは大企業なので、多少の不況では影響がないと思われるかもしれないが、それは間違った認識である。自動車メーカーは、巨額の開発費、製造設備の投資が必要な業種である。その為、限界利益点が非常に高い。
要するに固定費の負担が大きいのだ。

もちろん、単価も一般消費者に売る商品としては桁違いに大きいので、限界利益も大きい。
その為、台数を売ることが重要になる。

多くの台数を売って、限界利益点を超えた瞬間から、自動車は儲かる。
何しろ限界利益が何十万、何百万という世界だから、固定費を償却してしまえば、後は全て粗利である。これは儲かる。

トヨタが2兆円もの利益を上げられるのもこの為だし、瀕死だったホンダがオデッセイのヒットでよみがえったのもこれが理由である。ホンダと同じく重傷だったスバルも、レガシーのヒットにより蘇った。

しかし、これが一度逆流しはじめると、恐ろしい。
巨大な固定費が企業収益を圧迫しはじめる。
 特に世界中に工場を建てているトヨタも、潤沢な現金を持っているとはいえ、安心はしていられない。

市場が20%や30%も収縮すると自動車メーカーは、その固定費を維持できない。
実際、アメリカのBIG3のうち少なくとも、一社は年内か、年明けには破綻するだろう。
アメリカ議会が彼らへの融資を認めるとは思えない。

実際、ほんの数年前まではBIG3は好決算にわいていた。
だが、その時点でBIG3の今日の窮状は予想されていた。
彼らが莫大な利益を得ていたのは、トラックベースの大きくて燃費の悪いクルマを販売していたからだ。トラックベースで開発費も原価も安いこれらのクルマは、大きな利益をBIG3にもたらした。それらのクルマを売ることにより、BIG3は儲けていた。

この時点で、石油の価格が上昇することは誰の目にも明らかだった。
中国が石油輸入国に転落して、膨大な石油を買い始めたからだ。

であるならば、BIG3はその利益を燃費のいい小型車の開発に投入するべきだった。
だが、彼らはそれをしなかった。
それは、小型車は利益が少ないし、原価管理を適正にしないと利益が出せない。
この部分は日本メーカーが得意な分野だ。
要するに彼らにとって小型車は、おいしくなかったのだ。

と言うわけで、BIG3の危機はこの時点から始まっていた。
結果的に、金融危機がトドメをさすような形になっているが、これは最後の一撃でしかない。

GMが昨年から繰り広げているように、社員割引価格で販売などして限界利益を削っていては、自動車メーカーが続けていけるわけがない。

BIG3の破綻は他人事としていられるわけではない。
彼らが発行している社債は巨額であり、一社でも破綻すれば、金融業界に大きな影響を及ぼす。
そして、それはローン審査の厳格化という形で自動車販売に影響を及ぼし、資金繰りの悪化という形で自動車業界へ打撃を与える。

BIG3の問題は、売れるクルマがないことだ。
先ほど書いたとおり、自動車会社は売れるクルマがあれば、莫大な利益を得られる。
もし彼らが2009年に大ヒットするクルマを開発中であるというのであれば、議会から融資をもらえれば、破綻することはないだろう。
だが、彼らは手を着けてはいけない開発費まで削りだした。
これでは、助かるはずもない。

この問題は、全世界の自動車メーカーに影響を及ぼす。
それは、F1の世界においてもだ。

ホンダ以外のメーカーがいつ撤退してもおかしくない。
果たして来年の開幕戦には何台のマシンが並んでいるのであろうか。

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