ブランドとは何か 日本メーカー モーター・スポーツ活動撤退の裏側
ホンダのF1撤退に続き、スズキのWRC撤退が発表された。
そして、ついにはスバルまでWRCからの撤退を発表した。
昨今の金融危機に端を発した急激なマーケットの縮小を考えればやむを得ない決断であろう。
だが、ブランド価値という側面から見れば、この撤退はそれぞれの会社に大きな影響与える。
国内市場は激しい競争に見舞われており、収益を上げるのが難しい状況が続いてきた。
その背景として、自動車の品質が高く安定してきたので、どのメーカーのクルマを買っても、大きな不満がないことがある。
製品で差別化できなければ、販売力が強い会社、価格で勝負できる会社が勝つ。
その為、日本ではトヨタが一人勝ちの様相を見せてきた。
その中でも、ホンダとスバルは独自のファンを獲得してきた。
ホンダと言えばF1。
スバルと言えばラリー。
このモーター・スポーツ活動が多くのファンを獲得するのに役立ってきた。
それでも撤退せざるを得なかったのだろう。
だが、それでも撤退しないという選択肢もなかっただろうか。
業績が悪い=無駄なお金を使うモーター・スポーツ費用を削減
非常にわかりやすい。
普通の経営者ならば、誰でもそうするだろう。
だが、そうしない選択肢もある。
なぜか?
それは、首尾一貫したメッセージを顧客に伝えるためだ。
ブランドとは、企業が顧客に向かって打ち出すメッセージによって確立される。
そして、それは言葉ではなく行動によって判断される。
顧客第一と言う言葉はどの企業でも聞かれる。
だが、リコールの届け出をしない企業が、言葉だけを発しても意味がない。
こういう苦しい状況だからこそ、モーター・スポーツを続けるという選択肢もあった。
それこそが、企業のブランドになるのだから。
我が社はモーター・スポーツを重要視していますと言いながら、撤退するのは首尾一貫したメッセージとは言い難い。
そう言う意味では、19年間WRCに挑戦し続けたスバルは素晴らしい。
だからこそ、彼らはヨーロッパでのブランドを築き上げることに成功した。
そう言う意味で、スバルは今回惜しい機会を逃した。
彼らはラリー界におけるビッグ・ブランドになる機会を失った。
多くの方が勘違いされているが、フェラーリは常に勝っていたから世界有数のブランドになったわけではない。
彼らが常勝チームになったのはこのたった10年ほどである。
それ以前は、歴史はあるが最先端のテクノロジーについていけない大陸チームの一つだった。
連戦連敗の時代もあった。
資金が枯渇しかけた時もあった。
それでもフェラーリはF1に参加し続けた。
だからこそ、フェラーリは世界有数のブランドになった。
ブランドを築き上げるには長い年月がかかる。
それだけに19年間の参加した後の撤退は残念である。
ホンダもそうである。
彼らはF1において9年間活動してきた。
そして、今回の経済危機で撤退する。
だが、続ける方策は他にもあったのではないかと思う。
ホンダは400人近い研究者をF1に関わらせていたらしいが、エンジンの開発が凍結されている現状でこれだけの人間を開発に貼り付けて何をやっていたのかよくわからない。
車体側の研究もしていたのかもしれないが、それにしては結果が伴っていない。
もっと人間を少なくすることの可能だったはずだ。
スポンサー無しで活動していたので、スポンサーを取ることができれば、もっと費用負担が少なく活動も可能だったろう。
もちろん、ホンダとしては全力でやらないのであれば、参加しないというのも、それはそれで一つ見識ではある。
だが、ブランド価値を上げるという意味ではマイナスでしかない。
このまま撤退するのであれば、この9年間は意味がなかったと言われても反論できない。
経営者が我が社のブランド価値上げると念仏のように、唱えるのを聞いていると、不思議でしょうがない。
彼らは大量の広告を出せば、ブランドは築けると勘違いしているのであろうか。
ジャガーやマセラティが少ない販売台数ながらも、ブランドとして認知されているのは、彼らが首尾一貫したメッセージを発しているからである。
顧客の要望に合わせて、販売台数を伸ばそうなどという発想は、あまりないだろう。
世界中で製品の均質化が進む中、ますます差別化が難しくなってきた。
ブランドとして認識されない製品は、価格競争に巻き込まれる。
どんなに製品が優れていようが関係ない。
優れた製品はすぐに真似をされて、競争はより激しくなる。
それこそが、日本市場で起きいていることである。
一かゼロかの発想ではなく、費用を抑えて参戦を継続するという選択肢もあったのではないかと思う。
そうしない限り、永遠に日本車メーカーはブランド価値を上げることはできない。
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