F1開幕直前情報 Part1 KERS
いよいよ、2009年のF1が開幕します。
今年はいろいろと、レギュレーションの変更が多いシーズンです。
それらを、開幕前に確認してみましょう。
1.KERS
カーズと呼ぶのだが、これには二つの方式がある。
一つは電気式(モーター式)で一つは機械式である。
モーター式は減速するときに充電し、必要なときにモーターを回してアシストする。
機械式は減速時にフライホイールを回し、加速時にはそのフライホイールの回転を車軸に伝えてアシストする。
ウィリアムズを除くチームは全て電気式のようだ。
だが、このKERSは問題が山積している。
一つは重量の問題。
明らかにされていないが、一説によると30Kg程度の重さがある。
重さ自体は積んでいるバラストより軽いので問題ないのだが、これにより重量配分の変更に影響がでてくる。
重量配分の変更に制限が加えられることにより、セッティングの幅が狭くなるのだ。
現代F1においてこの重量配分は、マシンセッティングにおいて重要な位置を占めている。
これに制限が加われば、不利になることは明らか。
さらには、開発が進んでいないチームも多く、現時点での予想では大半のチームが開幕ではKERSを搭載しない模様。
現時点で搭載すると見られているのはフェラーリ、ルノー、マクラーレンだけとなっている。
BMWは微妙な状況だ。
だが、ここでも問題がある。
と言うのも、あるエンジニアに言わせるとKERS搭載車と非搭載車では、違うマシンを開発するくらい違うというのだ。
今年はシーズン中のテストが原則禁止されるので、シーズンが開幕すると開発が制限される。
この類のシステムは実走テストが不可欠なので、開幕に搭載しないチームがシーズン中にKERS搭載車を投入するのは極めてリスクが高くなる。
昨今のF1マシンの信頼性は上がっており、一つのリタイヤがチャンピオンシップに大きな影響を与えるだけに、悩ましい。
トップチームでは、モナコなどでは搭載しないで、モンツァやスパなどでは搭載するなどと言う裏技を見せるかもしれない。
少なくとも、コースによってバッテリーの容量を変えるくらいのことはやってくるだろう。
さらにブレーキング時に、モーターを回して充電するのであるが、モーターの抵抗があるので、今までのブレーキングとは違う感覚が出てくる。
それにより、ブレーキングが難しくなると言われている。
もっとも、この点については私は、あまり心配していない。
なぜなら、F1ドライバー達の能力は高く、ある程度慣れればコントロール可能だろう。
さらに問題もある。
2010年にはKERSは標準化される可能性が出ている。
標準化とは、簡単に言うと全てのチームが同じシステムを使うと言うことだ。
今年開発した独自のKERSは今年限り。
来年から別のスタンダードKERSを使用する公算が大きい。
なんたる無駄!
まだまだある。
KERSの安全性が疑問視されている。
バッテリー式の場合、リチウムイオン電池を使うと見られているが、この電池はその材料の特性上爆発する危険性が他のバッテリーより高い。
リチウムイオン電池は体積当たりのエネルギーが高い、要するに小さいのに大きな電気エネルギーを蓄えられる。
その為、短時間で急激に加熱するおそれがある。
充放電を厳密に管理する必要がある。
その為、市販のハイブリッド車ではニッケル水素電池が使われている。
しかも、使用するバッテリーの寿命は1レースと言われている。
毎回毎回新しいバッテリーを搭載して、古いのは捨てる。
これが環境に優しいのか?
そもそも、使わなければ一番環境に優しいと思うのは、私だけだろうか?
▽KERSのメリット
このシステム、いつでも好きなときに使えるわけではない。
1周の間で最大6.6秒間80馬力が追加できる。
これにより1周辺り0.3~0.4秒のアドバンテージを得られると見られている。
だが、先ほどの重量配分の問題でタイヤの消耗が激しくなれば逆にデメリットにもなる。
スタート時に使用すれば大きなアドバンテージとなることは間違いがない。
そうすれば、タイヤの摩耗が多少大きくても、スタートで前に出て、抑えるという戦略も使用できる。
ストレートで使用すれば、KERSレスのマシンが、KERSマシンを抜くのは困難だろう。
ちなみに来年以降は、この使えるパワーと時間は増加する予定である。
今年、実戦投入したチームはノウハウを蓄えて、来年以降のアドバンテージを得ることも可能だ。
なにしろシーズン中のテストができないのであるから。
- ブラウン・レーシング誕生か?
- F1開幕直前情報 Part2 ディフューザー、タイヤ、エンジン