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ドイツGP観戦記 Part1レッドブル圧勝とブラウンGPの迷い

見事なウェバーの初優勝とレッドブルの1-2フィニッシュ。 気温が低くなればレッドブルが1-2フィニッシュすることは十分に予想できた。 問題はウェバーとベッテル、どちらが勝つかだった。 そして、予選Q3の最後のアタックが両者の明暗を分けた。 先にアタックしてトップタイムをマークしたウェバー。 そして、それを追うベッテルは第一セクターを最速で駆け抜けてくる。 だが、ヘアピンとシケインの立ち上がりでリアをスライドさせて、タイムロス。 ブラウンの二台にも先行され予選4番手に終わる。 この時点でベッテルにとって地元ドイツでの勝利は厳しくなった。 ニュルブルクリンクは追い抜きが極めて難しいサーキットの一つで、スタートでウェバーが前に出て、ブラウンの二台に前をふさがられると、ベッテルは第一スティントで大きな差を付けれらてしまう。 シルバーストーンの逆のパターンになるわけだ。 しかも、後ろにはKERSを使うマクラーレンが位置しており、ベッテルにとっては難しいレースが予想された。 ただ、ニュルブルクリンク名物の雨が降れば、別だ。 雨が降れば追い抜きが可能になり、逆転の可能性はあった。 そして、それはポールポジションのウェバーが最も恐れていた事態だった。 そして、天気予報は小雨で、突然の雨があるという。 しかし、これがニュル・ウェザーなのか決勝レース当日は、午前中に雨が降ったもののスタート時刻にはすっかり上がり、路面温度も予想より高くなった。 こうなるとブラウンGPに有利な状況が予想されたが、事態は意外な方向に展開する。 ブラウンGPは本来、軽い燃料でフロントロウからスタートし、最初スティントでレッドブルを引き離したいと思っていたはずだ。 だが、6周分も燃料が重いウェバーがポール・ポジション。 これだけ重くてもポール・ポジションを取れてしまうレッドブルに、ブラウンGPは対抗する術はなかった。 それでも、軽い車重を活かしたスタートでバリチェロはウェバーを抜き、トップでレースを周回する。 しかも、ウェバーはスタート直後にバリチェロと接触した為に、ピットスルーペナルティを受けるというおまけもついて、さらにブラウンGPに有利になったと思われたのだが残念ながら、このサーキットで3ストップを実行するのは難しい。 このサーキットは前のマシンがミスをしない限り、追い抜きが不可能であり、どんなに速くても3ストップに勝ち目はなかった。 軽くしてタイムを上げたいと思っていても、前のマシンにふさがれれば、そのペースに付き合うしかない。 実際、バリチェロは最初のストップの後に、マッサに抑え込まれてペースが上げられなかった。 今回、ブラウンGPはタイヤ選択に悩んだ。 日曜日は二つ想定外の出来事があった。 一つは、午前中に雨が降り、路面のラバーが流れた。 二つめは、晴れ間も出て路面温度が想定していたより上昇した。 これらの理由により、第一スティントでラバーがのらない路面上をソフトタイヤで走ったドライバー達は、大きなタイヤのタレに見舞われた。 ブラウンGPの3ストップ作戦は、スタートダッシュで先行するのと暖まりの悪いハードタイヤでの走行距離をできるだけ少なくする為だったと思うが、第一・第二スティント共にソフトタイヤを履いてタレが大きかった彼らは、第三スティントでハードタイヤを選択した。 しかし、タイミングの悪いことにレース中盤から雲が出てきて、路面温度が下がり、今度はタイヤが最適温度にならないという状況に陥る。 これでは、さすがのブラウンGPも為す術がない。 確かに、結果だけ見れば第二スティントはハードタイヤで、第三スティントはソフトタイヤが正解だったが、雲が出てきて路面温度が急激に下がるところまで予想するのは、難しい。 本来、気温が上がったことでブラウンGPに流れが来るかと思われたが、それが脚を引っ張るとは皮肉な結果である。 今シーズン、ここまでは素晴らしいレースマネージメントを見せてきたブラウンGPだったが、今回は変化する天候に翻弄されて迷いが見られた。 寒いコンディションではどちらにせよ、レッドブルには勝ち目がなかったのであるから、オーソドックスな2ストップにしていれば、もう少しポイントを稼げいただろう。 しかし、ブラウンGPのタイヤの暖まりが悪いのは深刻で、レース後半に雲が出て、気温が少し下がっただけで、タイヤが冷えてしまい、レース中にマシンを左右に振りタイヤを暖めようとしていた。 さらにタイヤのグレイニングもひどく、ペースが上下した。 今後も雨のレースやスパでは苦労しそうだ。 バリチェロは第四スティントでもハードを選択したが、これは疑問が残った。 確かにソフトタイヤはタレやグレイニングがひどく、残り10周のトータルタイムをを考えると、ソフトでいくか、ハードタイヤを選ぶのかは、非常に微妙な選択であった。 だが、抜けないコース特性を考えると、ここは絶対にソフトタイヤだった。 彼は1周後にバトンがピットに入ることは、わかっていたはずだ。 であれば、ソフトタイヤを履いて最初の1周のラップタイムを稼いで、バトンの前に出れば後はタイムが多少落ちようと、最後まで抑えられたはずだ。 ちなみにバトンは第四スティントでソフトタイヤを選択。 グレイニングに苦しめられたが、最後までバリチェロを抑えてフィニッシュしている。 ▽ウェバー歓喜の初優勝と課題 一方でポール・ポジションからスタートしたウェバーも順調ではなかった。 スタートを失敗したウェバーは、バリチェロの位置を見失い、イン側にマシンを寄せて接触。 だが、これは意図的にやったものではなかっただろう。 バリチェロがはるかに軽い燃料しか積んでいないことは、スタート前にわかっていたので、接触してまで抑え込む必要はなかった。 バリチェロに先行されても、最初のストップで簡単にかわせただろう。 逆に接触してどこかを壊してレースを失うリスクの方が大きかった。 ウェバーにも、バリチェロにも影響はなく、レースが続けられたのは幸運だった。 バリチェロとの接触で動揺したのかウェバーは、さらにKERSダッシュで抜かれたハミルトンにも接触。 ここでウェバーのレースは終わっていてもおかしくなかった。 もう少し強く当たっていれば、ウェバーのフロントウィングは砕け散っていただろう。 そうすれば、彼の優勝はなかった。 バリチェロへの接触が原因でピットスルーペナルティを課されたウェバーは、念願の初優勝が夢と消えようとしたが、ここでもウェバーはついていた。 KERSダッシュのコバライネンが、3位に居座り4位以下の速いマシンを抑えてくれたのだ。 これにより、ウェバーはペナルティ後も、コバライネンの前で戻ることができた。 更なる幸運をウェバーが襲う。 最初のピットインを済ませたバリチェロは、マッサの後ろでコースに戻り、遅いマッサのペースに付き合わされたのだ。 これにより、10秒以上失ったバリチェロは勝利の権利を失った。 さらにペナルティが出されたのが11周まで遅れたのもラッキーだった。 もっと早くペナルティが出されていれば、彼もコバライネンの後ろで大きくタイムを失っていただろう。 勝てるときは、こんなものだろうが勝利の女神は、132戦目で初めてウェバーに微笑んだ。 スタートでKERS勢にごぼう抜きされた一時は8位にまで順位を落としたベッテルも、最終的には2位に入り、この日のレッドブルに対抗できるマシンはなかった。 初優勝のウェバーだが課題も残った。 ポール・ポジションからスタートしたにも関わらず、レースをコントロールできなかった。 今回は多くの幸運が重なり勝てたが、チャンピオンシップを考えると、この勝ち方では頼りない。 チャンピオンを狙うのであれば、今年のバトンのように退屈な勝ち方をしないと難しいだろう。 次の二勝目をいつ、どういう勝ち方をするのかに、注目していきたい。 これで、レッドブルが二連勝。 ブラウンGPとの差は逆転したのだろうか。 この結論は、次のハンガリーGPまで持ち越したい。 この2レースは気温が低く、ブラウンGPはタイヤを適温まで上昇させることができずに苦しんだ。 ハンガリーGPは例年とても暑く、しかも低速コーナーが多く、ブラウンGPに有利なサーキットである。 ここで、レッドブルがどのようなパフォーマンスを見せるか、どの程度の結果を残せるかにより、シーズン後半が占えるだろう。

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