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2009 Round13 イタリアGP観戦記part1 勝利を呼ぶブラウンGPの決断

▽勝利を読んだ決断 シーズン前半に何度も見せつけられたブラウンGPの優れた戦略が、勝負の行方を決めた。 土曜日の予選Q3で、ハミルトンは2ストップ、ブラウンGPの二台は1ストップを選択。 燃料の軽いハミルトンは、ポール・ポジションを獲得、上位陣の中で最も重い燃料を積んだ、ブラウンGPの二台が5位6位につける。 今シーズン、上位陣のドライバーはほとんど2ストップ作戦を採用する。 Q3で重くすると予選順位が後ろになりレースで不利になり、レース中もタイムが悪くなる。 かといって3ストップだと、よほど速くない限り、ロスタイムが多くなり、ポジションを失う可能性が高い。 2ストップは、Q3でのタイムアタックによるアドバンテージと、レース中の搭載重量のバランスがいい。 だから、今回も上位陣は当然、2ストップで来ると考えたのだが、上位三台以外は全て1ストップを選択。 モンツァは、フューエル・エフェクトが小さいコースであるとはいえ、意外だった。 実は、ブラウンGPの決断には、KERSの存在が大きく関係していた。 KERSマシンに前に出られると、ノンKERSマシンはコース上で抜くことが極めて難しい。 だから、予選のスピードでハミルトンに負けているブラウンGPとしては、優勝を狙う為に1ストップという作戦を選択した。 このコースはフューエル・エフェクトが小さいので、1ストップはシミュレーション上、5秒から7秒速い計算だった。 だが、これはあくまでも計算上 遅いマシンに前をふさがれれば、5秒などあっという間に消えてしまう。 どちらを選ぶかは、ドライバーの能力やマシンの性能など総合的な判断が必要であった。 彼らは1ストップ作戦実行のため、金曜日からロングランテストを繰り返していた。 ロングランでタイヤの寿命を確認したブラウンGPは、長い距離を走ってもペースは落ちないと判断。 バトンとバリチェロはタイヤの選択が違っていたが、二人ともどちらのタイヤを履いても、レースペースを維持できていたので、この判断は正しかった。 だが、予選終了後、大きな問題が彼らに立ちはだかった。 それはKERS搭載のコバライネンが1ストップ戦略で、なおかつスタート・グリッドも彼らの一つ前だったのだ。 ブラウンGPの二台がスタートでKERS搭載のコバライネンを抜けるはずもなく、コース上で抜くのも容易ではない。 コバライネンに捕まってタイムロスするようだと、ハミルトンに逃げられて、1ストップでも逆転が難しくなる。 ところが、このコバライネンはスタート直後のシケインでバリチェロにかわされ、1周目が終わる前にはバトンにも抜かれて、序盤からずるずると後退する。 コバライネンはハードタイヤでスタートしたので、レース序盤は、タイヤの温まりが悪く、グリップが足りずに、スピードが上がらなかった。 また、コバライネンは、一度抜かれたバリチェロをかわそうと、ロッジアのシケインでハードに攻めすぎた結果、立ち上がりで姿勢を乱し、レズモでバトンにも抜かれてしまった。 しかし、同じハードタイヤを履くバリチェロのペースは、コバライネンほど悪くはなかった。 本来、タイヤに優しいブラウンGPはタイヤの発熱に苦しみ、マクラーレンはタイヤの発熱がいいはず。 バリチェロはレース後、ハンガリーでの失敗からセットアップを研究し、タイヤのウォームアップ性能を向上させたと述べている。 もし、これが本当であるならば、ブラウンGPは残りの4レースで競争力を維持できそうだ。 そして、更なる幸運がブラウンGPに訪れる。 予選8位のアロンソは今回、スペインGP以来のKERSを搭載してきていた。 計算上アロンソは、スタートでバリチェロの前に出ることが可能だったのだが、偶数グリッドだった彼はスタートを失敗。 ブラウンGPの二台の後ろでレースを展開する。 この時も、アロンソが順調にスタートしてブラウンGPに前に出ていれば、簡単に抜ける相手でもなく、タイムロスをして、彼らの1ストップ作戦の大きな障害となっていたはずだ。 こうして、ブラウンGPの二台は最大の懸念だった、1ストップ組みのKERSの二台を後方に置いてレースができた。 これが、ブラウンGPが1-2フィニッシュできた最大の要因となった。 ▽好調を持続するバリチェロ バリチェロはレースを通じて、バトンより少しだけ速かった。 予選でバトンより重いにもかかわらず、速かったバリチェロは、レースでもそのペースを維持。 今回、ブラウンGPの二台はほぼ同じ燃料搭載量でスタートした。 ピットインの優先順位は、前を走るドライバー。 よって今回は前を走るドライバーである、バリチェロに優先権があった。 よってバリチェロは、常にバトンより1周遅くピットに入り、バトンにつけいる隙を見せなかった。 このコースはセットアップの幅が狭いので、セットアップ能力が大きなウエイトを占める。 この領域では、ベテランのバリチェロの方がいいセットアップが見つけられたのだろう。 やはり、高速モンツァはメルセデス・ベンツの為のGPとなった。 最後の最後にプッシュし続けていたハミルトンがクラッシュするまでは、上位三台をメルセデス・ベンツ・エンジン搭載マシンが独占。 メルセデス・ベンツのノルベルト・ハウグは否定するが、彼らのエンジンが最強であるのは、予選を見ても明らか。 このパワーサーキットの予選で上位7台中6台がメルセデス・ベンツ・エンジン。 キミは軽い燃料だったで、実質上位6台独占と言ってもいい状況だった。 レースでもハミルトンがクラッシュしなければ、表彰台を独占。 まさにメルセデス・ベンツの為のレースとなった。

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