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2010 Rd.3 マレーシアGP観戦記

JUGEMテーマ:スポーツ

 ▽ダンシング ベッテル まったく問題のない勝利。 過去の二レースのリプレーを見ているようだった。 過去二戦との違いは予選が三番手だったことと、最後まで走り切れたこと。 勝負はスタート直後の1コーナーで決まった。 予選三番手から絶妙のスタートでニコをかわすと、ポールスタートのウェバーに迫り、一気に抜き去る。 ウェバーも反撃を試みるが、2コーナーでインに位置したベッテルが、トップに立つ。 第一スティントでは、ウェバーもベッテルに迫る走りを見せるが、彼はタイヤ交換時にナットが締まらないトラブルが出て、一時的に三位に後退。 ベッテルとの差も開き、勝負はほぼ決まった。 その後のベッテルは、マシンをゴールまで運ぶことだけを考えていただろう。 完全にペースをコントロールして、ウェバーがスパートすると翌周にベッテルが引き離す。 彼はマシンに極力負荷を掛けないような運転を心掛けていたと思う。

 チームメイトのウェバーは2位とはいえ、予選では素晴らしいアタックを見せてくれた。 彼はQ3において、唯一インターミディエイトでアタック。 画面を見る限りとてもインターミディエイトで走れる状況ではないと思われたが、その素晴らしい判断はポールポジションをもたらした。 実際のコース状況は場所によって、インターミディエイトとウェットの状況が混在する難しい状態。 単純にインターミディエイトで走れば誰でもタイムが出せる状況ではなかった。 雨の強い場所でコントロールを失えば、全ては台無しとなる。 そう言う状況でのウェバーのドライビングは見事としか言いようがない。 このサーキットは、マシンの総合力が求められるのでレッドブル優位は全く動かなかったが、それでもきっちりと1-2フィニッシュできるのはお見事。 だがレース終盤に至るまでチームは二人のドライバーのペースを落とさせようとはしなかった。 年間エンジン使用8基制限がある中でチームが、この猛暑のマレーシアで最後まであまりペースを落とさせないというのは、不可解だ。 彼らが信頼性に問題を抱えているだけに、この判断は理解するのが難しい。 過去二戦のトラブルは、マシントラブルと言うよりは細かいパーツのトラブルであまり深刻なものではなかった。 だが今後も品質管理を厳重にやらないと、違うトラブルがまた出る可能性がある。 レッドブルがその部分をどう改善してくるかが鍵になる。 この初勝利でベッテルの今シーズンが幕を開けた。 開幕3レース中二回でトラブルが出たにもかかわらず、彼は37ポイントでトップのマッサとはたったの2ポイント差である。 昨年の今頃、バトンに付けられていたい差を思い出すと、そんなに悪くはない状況である。 少しで遅れたが最強マシンをドライブする、このドライバーからは目が離せない。 ▽予選大失敗の二強 フェラーリとマクラーレンのマレーシアGPは予選で決まってしまった。 予選Q1で雨が降る中、状況が改善すると見込んだこの2チームはなかなかコースに出てこない。 ところが予想に反して雨が強まりバトンはなんとかQ2に進出したが、コースアウトしてストップし、予選17位が確定。 他の三人はQ1で落ちることになった。 結果論ではないが、雨の予選はコンディションの変化が予想できないので、燃料を積んで走り続けるのがセオリー。 現在の技術では100%天気を予想することはできない。 特に熱帯地方特有のスコールは、雨雲が突然現れることもよくある。 雨だとフューエル・エフェクトも小さくなるので、燃料を多少多く積んでいてもハンディは少ない。 だから、長い距離を走り続けベストなコンディションの時にベストタイムを出さなければ今回のようになる。 また予想できないのは雨だけではない。 コース上に走るマシンの数によっても、コースコンディションは変わってくる。 コース上に走るマシンが多ければ、それだけレコードラインの水は少なくなり、コンディションは向上する。 実際、Q1終盤はマクラーレンとフェラーリのドライバー必死になってタイムを縮めようと奮闘していたが、上位タイムを記録したドライバーはタイム更新が見込めない状態と見てピットで待つ状況で、コース上に残るマシンは少なかった。 これでは降水量が減少しても、タイムを更新するのは難しい。 Q1は普通にやれば簡単に突破できただけに、この判断ミスは彼らのレースを台無しにした。 オーバーヒートの問題を抱えているフェラーリはサイドポンツーン上にルーバーを切るという裏技を使ったにも関わらず、アロンソはエンジントラブルで今季始めてのリタイヤとなった。 これは後方スタートとなり、後方集団に埋もれてクリーンエアがマシンに当たらず冷却効率が落ちたことと関係がありそうだ。 アロンソはまた、クラッチトラブルを1周目から抱えており、それでも入賞圏内を走行していたのであるから、彼の走りは素晴らしいとしかいいようがない。 落としたポイントは確かに痛いが、ポイント数が少なかったのは、不幸中の幸いであった。 彼らにとっては、本当に痛い痛い予選での判断ミスであった。 だがこの逆境にも関わらず光り輝いたドライバーがもう一人いた。 ルイス・ハミルトンだ。 彼は予選20位からスタートし、たったの4周で10位に! まるでTVゲームを見ているかのような、オーバーテイクの数々。 彼を見ていると、オーバーテイクが簡単に見えるから恐ろしい。 レース中盤では、タイヤ交換前とはいえ一時的に2位まで進出した。 長い直線があり比較的追い抜きが可能なコースで、マクラーレンの直線スピードが高いとはいえ、これはなかなかできることではない。 もしタイヤ交換前に雨でも降ればハミルトン優勝の可能性すら合ったのだから、彼のスピードは本当にすごい。 このレースを最も盛り上げてくれたハミルトンだった。 ▽ニコ初表彰台とミハエルの苦悩 ニコが移籍後、初表彰台に登った。 雨の予選を利用して予選2位スタートだったニコ。 ドライ状態ではレッドブルに対抗できるわけもないが、何とか粘って3位表彰台を得ることに成功した。 一方のミハエルは、ホイールナットのトラブルで10周目にリタイヤ。 復帰後、初のリタイヤとなった。 今の彼はかつてのスーパー・チャンピオンではなく普通の速いドライバー。 彼が持っている現役時代のイメージと現実のギャップはかなり大きいだろう。 今回、ニコが新生メルセデス初の表彰台をものにした今、彼自身は今まで感じたことのない感情があるはず。 彼が3レース連続でチームメイトに負けたのは記憶にない。 現実とイメージのギャップを、早く埋められるかどうか。 ミハエル自身の自問自答は続く。 ▽絶好調クビサと苦戦する可夢偉 クビサがまたやってくれた。 オーストラリアの2位に続き今回も表彰台目前の4位。 これは表彰台にあがれなかったとはいえ、今のルノーで4位は見事な結果である。 雨の予選も手堅くQ3に進出し、晴れの決勝もコンスタントに走りきり、結果を残した。 チームメイトのペトロフもハミルトンとバトルを繰り広げ、初入賞目前だったが、ギアボックスのトラブルで惜しくもリタイヤとなった。 可夢偉は、またレース開始早々リタイヤとなった。 彼は予選前に、このレースから導入する予定だったリア・ウィングのシステムを外す判断をする。 というのもこのシステムが効いたり効かなかったりして、ダウンフォース量が安定せず危険と見なしたから。 ただドライ条件では全く走らずに元のウィングに変更したので、セットアップもできないぶっつけ本番の不安の残るレースとなった。 それでも可夢偉は雨の予選を利用してQ3に進出。 決勝も雨のレースになればおもしろいと思ったのだが、序盤にエンジンのニューマチック・バルブのトラブルでリタイヤ。 デ・ラ・ロサも同様のトラブルでスタートすらできなかった。 マシンの速さもなく信頼性も低い今の状況では、彼にできることは限られている。 それにしても旧BMWが新興チーム並みの信頼性とは、どういうことなんだろう。 お金がないのはわかるが、それ以前のレベルである。 バーレーンGP 12周目リタイヤ オーストラリアGP 1周目リタイヤ マレーシアGP 9周目リタイヤ 彼は開幕3レースで合計22周しかできていない。 これではドライバーはつらい。 彼の苦しいレースはしばらく続きそうである。

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