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2010 Rd.4 中国GP観戦記

JUGEMテーマ:スポーツ

▽冷静なバトンの勝利

荒れるレースというのは年に何回かあるものだが、ここまでめまぐるしく順位の変わるレースも珍しい。 レース直前から降り始めた小雨は、スタート直後から雨量が増え始め最初のセーフティ・カー(以下SCと略)出動中には、かなりの量となっていた。 当時は、ドライタイヤで走り続けることはできるが、今後雨量が増えるのであれば早めにインターミディエイトに交換した方が有利という状況。 ただ路面は非常にスリッピーで、ドライタイヤで走り続けた場合、コースアウトする確率はインターミディエイトよりも高く、非常に危険な状態だった。 急速に増える雨量に反応した、ほとんどのドライバーがここでピットに向かう。 その中でニコ・ロズベルグやバトン、クビサなどが我慢してコース上にとどまる。 結果的にこれが勝負を決めた。 インターミディエイトを履いたドライバーは、SC後にペースが上がり出すとタイヤにグレイニングが出てタイムが伸び悩み、スリックタイヤに交換するために再びピットに戻った。 雨量が予想より増えなかったのが原因だった。 レース中はスリックでもインターミディエイトでもタイムが同じような路面状況が多く、できるだけ今履いているタイヤで我慢して走り続けるドライバーは有利な展開に持ち込めた。

 こういうちょい濡れのダンプ状態で、今年のマクラーレンは速い。 オーストラリアGPと同じく適切なタイヤ交換時期を選択したバトンは、終始速いペースをキープしていた。 序盤はニコの後方で2位に付けていたが、ニコが19周目にミスをしたときを見逃さずトップに立つと、そのまま逃げ切り。 4回ピットストップをしたハミルトンがレース終盤、バトンに迫るがタイヤが厳しくなってきていた両者はペースを落とし、そのままフィニッシュ。 マクラーレンは2007年イタリアGP以来の1-2フィニッシュを成し遂げた。 それにしても、マクラーレンのスピードは他を圧倒しており、高いストレートスピードも活かして、オーバーテイクを連発。 見応えのあるレースとなった。 少し濡れた状態の路面をF1での走ることは、氷の上を走るのと同じくらい難しい。 だから濡れた状態では、タイヤを交換したくなるのが普通である。 そこを自分の技術でコントロールして、我慢したバトンの勝利だった。 これでバトンは開幕遠征4レース終了して2勝。 ポイント・リーダーとなった。 ここまでの4レースを見る限り昨年序盤に7戦6勝を上げたのは、マシンの性能が高かっただけでなかったことを証明した。 異なる状況を的確に判断して、正確に実行できるバトンのドライビングが今年も光り輝いている。 だが依然としてマクラーレンの予選でのスピード不足はあきらかで、ここを改善しない限りドライのレースで勝つのは難しいのもまた事実である。 ▽またも勝利を逃がしたベッテル 予選でチームメイトを0.25秒以上も引き離したベッテル。 しかも彼はこの時、セクター1、2ともミスをしている。 それでもセクター3だけで、これだけの差を築いてしまうのだから、驚きである。 チームメイトのウェバーも3位のアロンソを0.1秒以上引き離した。 4位以降のタイム差は1/100秒差単位であり、1/10秒単位で他車を引き離すレッドブルは圧倒的なパフォーマンスを誇っていた。 晴れればもちろんレッドブルの1-2は確実で、雨でもダウンフォースの多いレッドブルの勝利は動かないと思われた。 だが、にわか雨が降り続く状態が、彼ら不利に働いた。 昨年のように、スタート前から本降りであればよかったのだが、スタート直前に小雨が降り始め、ドライタイヤでスタートし、レース中も降水量が増えたり減ったりする状況が続く中、4回ものピットインをして自滅してしまった。 レッドブルは元々作戦面での判断でトップチームに比べると問題が多い。 今回は最速マシンを持ちながら判断ミスでレースを失ってしまった。 開幕4レースで4勝してもおかしくないパフォーマンスを見せながら、細かいトラブルやミスで1勝しか上げられなかったレッドブル。 マシンのパフォーマンス自体はまだまだアドバンテージが大きいので、今後もレッドブルを中心にシーズンは展開していくが、取りこぼしを少なくしないと、昨年と同じ結果を招いてしまうだろう。 ▽アロンソの逆襲とトラブル アロンソは予選三番手からロケットスタートと思われたが、フライイング。 ピットスルーペナルティを受け、それを含めて5回のピットストップをしながらも、ベッテルの前4位でフィニッシュ。 13ポイントを拾う形となった。 晴れのレースであれば、アロンソはもっと苦戦を強いられていただろうし、獲得したポイントも少なかっただろうし、ベッテルの前でフィニッシュすることもできなかった。 それを考えるとこの結果は彼らにとってボーナス以外のなにものでもない。 もちろん変化し続ける路面状況に対応し続け、正確に走り続けたアロンソの走りは見事であったが、天候に助けられたレースとなった。 エンジンに不安のあるフェラーリとしては雨のレースで、エンジンへの負荷が少なかったことも有利に働いた。 だが、この結果にフェラーリは大喜びとは言えなくなった。 20周目、ピットへ向かうマッサをアロンソがピットレーン入り口でインから追い抜いてしまった。 その為、マッサはアロンソのタイヤ交換を待たざるを得なくなり、5秒近くをタイムロス。 順位を落としてしまう。 これをマッサがおもしろいわけはなく、今後の展開次第では、お家騒動が勃発するかもしれない。 ▽ニコ 連続表彰台 ニコ・ロズベルグがまた見事な走りを見せてくれた。 上位陣が雨に耐えかねて続々とピットに入る中、我慢してドライで走り続けた彼は、序盤のレースをリードする。 ここまでの彼のドライビングは素晴らしかった。 19周目の最終コーナーでミスをしてバトンに抜かれたが、今のメルセデスのマシンはマクラーレンにはかなわないのでミスがなくても、これ以上の順位は難しかったと思う。 予選ではミハエルを0.6秒も引き離し、決勝でも約50秒の差を付けた。 レース終了後、メルセデスのノルベルト・ハウグはミハエルのシャシーに問題があったと発言している。 だが今のF1の製造品質でシャシーに問題があるというのは簡単には信じがたい。 もしシャシーに問題があったとすれば、スペインGPで新しいシャシーにのるミハエルのスピードは向上しなければならない。 それでもニコより遅いようだと、問題はかなり深刻である。 ▽好調ルノー 二台入賞 ここまで好調を持続するルノーが、ここでもクビサ5位、ペトロフは8位でキャリア初入賞を記録した。 雨のレースで重いペトロフの体重が相殺されたかどうかは、定かではないが、オーバーテイクも見せつつ、困難な状況でマシンをフィニッシュまで運んだドライビングは見事でだった。 4レース終わってルノーのコンストラクターズ・ランキングは5位。 ビッグ4のすぐ後ろにルノーがつける状況である。 クビサのドライバーズ・ランキングでは、レッドブルのウェバーやミハエル・シューマッハーの上の7位。 6位のマッサとはたったの1点差である。 ここまで勝利こそないがルノーの戦闘力はビッグ4の次にあり、今年のサプライズ・チームとなりそうな気配である。 ▽深刻なザウバー 可夢偉 連続リタイヤ 可夢偉はまたスタート直後にリタイヤ。 1周目にブレーキングでミスをしたリウッツィがスライドしてきてアウト側にいた可夢偉に激突。 またもレース序盤で彼のレースは終わった。 チームメイトのデ・ラ・ロサは、エンジントラブルでリタイヤ。 彼はタイヤ交換を我慢して、5位に進出していたにもかかわらず、またもエンジントラブルでチャンスを失ってしまう。 とにかく完走できないことには、データも取れないし、結果が出ない。 正直言って今の状況でドライバーにできることは限られている。 なんとかスペインGP前の3週間で問題を解決して欲しいと願うばかりである。  

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