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2014 Rd.16 ロシアGP観戦記 ロズベルグのほろ苦い2位

169046121-43561511102014-s レース前にメルセデスの1-2を予想していた人は多かった。だが1周目を終わって、メルセデスの1-2を予想していた人はいないだろう。 ロシアGPでのロズベルグは天国と地獄を経験した。スタートはハミルトンもロズベルグもいい蹴り出しを見せて、メルセデスの1-2体制でターン1を迎えた。だがハミルトンはターン1で少し姿勢を乱してほんの一瞬、加速が鈍る。 それをロズベルグが見逃すはずもなく、ハミルトンの右側から抜いていく。そしてスタート直後、実質の最初のコーナーであるターン2へはロズベルグが前で入った。 だがここでロズベルグは大きなミスをした。ロズベルグはブレーキングで大きくフロントタイヤをロックアップ。派手な白煙を上げて、ターン2を曲がりきれずコースアウトしてしまう。ターン2の外側には広いエスケープゾーンがあるので、速度を落とさずコースに戻ったロズベルグは、トップを維持していた。だがこのままでは当然、ペナルティを受ける危険性があったので、彼は無線からの指示通り、ハミルトンにポジションを譲った。 しかもロズベルグのブレーキングの際に、フロントタイヤに大きなフラットスポットを作ってしまい、ひどいバイブレーションが発生。1周目の終わりにタイヤ交換を強いられた。これでロズベルグのレースは終わったと思われた。もしこのレースでハミルトンが優勝し、ロズベルグがノーポイントだったら、チャンピオン争いは大きくハミルトン優位に動いたはずだった。 だがここからロズベルグ陣営は大きな賭けに出た。この時、ミディアムタイヤに履き替えた彼は、そのタイヤで残り52周を、この1セットのタイヤで走りきる決断をする。これはかなりのギャンブルであった。今回、初開催となったこのサーキットは、市街地コースと言うこともあり、路面がスムーズでタイヤにはとても優しかった。また中高速コーナーが少ないこともタイヤの寿命にとっては好都合だった。実際、各チームはミディアムタイヤで40周は走れると予想していた。だがそれ以上は未知の領域である。 ミディアムを履いたロズベルグのペースは、ソフトタイヤを履くボッタスやバトンよりも良く、順調に順位を上げてくる。そして上位陣が最初で最後のタイヤ交換をするタイミングで、ロズベルグは大きく順位を戻し、コース上でボッタスを抜いて2位に復帰する。 タイヤが最後までもつかは最大の懸念であったが、ロズベルグは最後まで大きくペースを落とすことなくフィニッシュ。彼は全体のドライバーで2番目に速いタイムをレース終了直前に、51周も走ったタイヤで記録している。タイヤの性能的には全く問題ないことを証明している。これはピレリタイヤとしては、驚異的なタイヤの寿命であり、ロズベルグにとっては幸運であった。 これでロズベルグは被害を最小限度に抑える事に成功した。2位の結果にロズベルグは満足はできないだろうが、それでもノーポイントで終わっていたかもしれないと考えると満足せざるを得ないだろう。 ただ最近のロズベルグを見ていると、チャンピオン争いのプレッシャーをうまく扱えていないように見える。今回もターン2の手前でロズベルグはハミルトンの前にいてイン側を抑えていたわけで、あそこまでブレーキングを遅らせる必要はなかった。もちろん彼はレコードラインを外れていたのでグリップは低く、ロックさせやすい状況ではあった。だがここでタイヤをダメにしてノーポイントに終わるかもしれない危険を冒してまで、無理をする必要があったのか疑問である。 もちろんハミルトンはソチのような路面のグリップが低いサーキットでは無敵である。彼はこのようなトラックコンディションを好む。だからロズベルグが最初に前に出なければ勝つのが難しいと考えたのかもしれない。だがレースは53周あるわけで、最初に一か八かの勝負を挑むのはあまりにもリスクが高い。 幸運にも2位で被害を最小限度に抑えたロズベルグであったが、もしセーフティーカーが入っていればハミルトンに挑戦するチャンスはあったかもしれない。だが長距離を走ったロズベルグのタイヤでは、ハミルトンを抜くのは難しかったとは思われる。 一方のハミルトンは、スタートの蹴り出しは良くロズベルグに対してリードを保っていたが、ターン1でイン側に寄りすぎてスピードを少しロス。その為、ターン2までにロズベルグに抜かれてしまった。だがロズベルグがブレーキングでミスをしたお陰で順位を戻し、その後は全く危なげなく勝利したハミルトン。 これで2人のポイント差は17ポイントで、まだまだ1レースでひっくり返る差である。最強のメルセデスでもトラブルと無縁ではない。まだまだチャンピオン争いは激しく続いていきそうである。