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マックス・モズレーの危険な賭け

FIAが29日にUSGPを棄権した7チームの代表を呼んでスポーツ評議会を開催した。 結局、五つの嫌疑のうち、二つの有罪が確定した。 有罪となったのは安全なタイヤを所持することを確認しなかった罪で、もう一つがスタートすることを拒否した罪である。 しかし一つ目の罪は果たしてチームの責任だろうか? チームはタイヤの供給をミシュランから受けている。 もちろんタイヤテストをやり、チームからのフィードバックでどのタイヤをUSGPで持ち込むかミシュランは決めたのだろう。 だからチームに全く責任がないとは言えないかもしれないが、これはどう考えてもミシュランがバンク部分の負荷を軽視したタイヤを持ち込んだのが原因でチームには責任はない。 こんな事でチーム側が責任を取らされてはたまらない。 二つ目の罪はスタートで走ることを拒否したことだ。 しかも1周しただけも問題のあったタイヤがあった事実を考えれば、スタートしなかったのではなく、できなかったと考えるのが妥当だろう。 これもミシュランが危険なタイヤを持ち込み、原因の特定が出来なかったことが原因であり、チームには責任はない。 残りの速度制限に同意しなかった罪、デモをはかった罪、スチュワードに報告しなかった罪については無罪になった。 速度制限については、コラム「インディアナポリスの真実」で述べたようにミシュランは何キロ以下であれば安全であるとの数字を出せなかった。 であれば、チーム側としては何キロ以下で走れと指示するわけにもいかない。 まさか50kmとかで走るわけにはいかないので、この判決は当然だ。 残りの二つの罪は言いがかりに近いものなのでコメントは避ける。 BARホンダの重量問題でのペナルティもそうだが、この状況を考えると、これは明らかに政治的な意味のある判決であると考えることができる。 幸いにしてこの二つの罪に対する、ペナルティは9月まで持ち越された。 チーム側としてはこのような罪を受け入れることは出来ないだろうし、ポイントの剥奪とか罰金とかのペナルティは絶対に受け入れられないだろう。 追求すべきはミシュランの過失であって、チームではない。 チームはレースができるよう、出来る限りのことはした。 FIAはミシュランを罰することができないから、こういう行為に至ったのだろう。 もしこれらのペナルティがチームに課された場合、チームがGPをボイコットする可能性もある。 マックス・モズレーはこの判決をコンコルド協定締結への取引の道具にしようとしているのだろうか。 しかし、それはあまりにも危険な賭けのように見える。 これが7チームがFIAとは別のシリーズを起こすきっかけになるかもしれない。 誰も二度とあのようなGPは見たくない。 モズレーは今、危険な橋を渡ろうとしている。

5 thoughts on “マックス・モズレーの危険な賭け

  1. Lt.

    F-1USGPに関するブログを巡って辿りつきました。
    日本では、ミシュランの責任を追及する声が大きいですね。
    でも、エンジニアの立場から言わせてもらいたいのは、どれだけシミュレーションやテストを繰り返しても欠陥はありえるという事。ミシュランとしては、当然、安全なタイヤとして二種類を用意したのであり、持ち込んだタイヤがレースに耐えられない事など想定外。どんなに備えていても想定外の事は起こるのは当たり前です。
    タイヤサプライヤーは、速く安全に走れるタイヤを供給する事を追求しますが、速さと安全がトレードオフになる面も当然存在します。危険に至らないギリギリの点を探る事はレースである限り当然の事で、それが今回は危険域に踏み込んでしまう結果に終わったのだと思います。
    私にとっては、その過失は追求すべきものではないし、ミシュランの姿はガチガチに縛られた今期F-1の中では歓迎すべき姿に見えます。

  2. Lt.

    追加です。
    そもそも、実際のコースで事前テストがほとんどできないというのに、二種類しかタイヤを持ち込めないレギュレーションに疑問を感じます。これって、「エンジニアは不要。開発や新技術の投入は控えろ」というレギュレーションです。
    まあ、それが嫌なら参加するなって事かもしれませんが、個人的には技術の粋を惜しげ無く注ぎ込んだF-1が好きだったので、残念でなりません。

  3. j.j

    >その過失は追求すべきものではない
    と、上の方はおしゃってますが、私は追及すべきだと思います。
    1レース走る事の出来ないタイヤを持ち込むなど、タイヤメーカーとして恥じるべきです。
    ブリジストンはちゃんとしたタイヤを持ち込めたのですから、ミシュランにそれが出来ないわけ無い。
    どんな理由が有るにしろ、GPをこんな散々な結果にした責任は負うべきです。

  4. 仙太郎

    コメントありがとうございます。
    仙太郎です。
    おっしゃるとおり、完全な製品はありえないと思います。
    ただタイヤという安全上重要な部品を供給するメーカーとしての責任を果たせなかったのですからミシュランが責められるのは当然だと思います。
    事前のテストはできませんが、同じようなオーバルコースでのテストは可能ですし、それを怠った以上ミシュランは言い訳できないと思います。
    それに今回の問題はタイヤの欠陥でないとミシュランも発表しています。
    タイヤメーカーが今回はダメなタイヤを持ち込みました、ごめんなさいではすまないと思います。
    ラルフ・シューマッハーは死亡する可能性もあったのですから。
    また、昨年もミシュランはタイヤトラブルを起こしている以上、弁解の余地はないと思います。
    私の記憶が正しければ、F1で今回のような危険なタイヤを持ち込んだタイヤメーカーはいません。
    いままでできていたのが、今回できなかった理由が私にはわからないのです。
    今回はたまたまだめだったのでしょうか?
    私はミシュランは世界一のタイヤメーカーだと思っています。
    そんな彼らが今回このような事態を招いたことに驚いています。
    私も個人的には2レース1エンジンや、タイヤセットの制限などというせこいレギュレーションはいらないと思っています。
    単純に早いやつが勝つというレースを見たいですよね。

  5. Lt.

    遅まきながら、コメントへのレスありがとうございます。
    >私はミシュランは世界一のタイヤメーカーだと思っています。
    >そんな彼らが今回このような事態を招いたことに驚いています。
    これこそ、現在のレギュレーションがタイヤサプライヤーにとって如何に過酷なものかを表していると思います。
    (ブリジストンはIRLへのタイヤ供給により得ている)フィールドデータ無しに、安全でかつ速いタイヤを作る事は、それほどまでに困難な事なのです。(タイヤに限らず安全と性能の両立を求められるモノの開発に携わるエンジニアなら誰でも理解できる事なのですが・・・。)見る側にとっては、データが無い事は危険を生じさせた理由にならないかも知れませんが、作る側にとっては動かしがたい事実です。
    私のレギュレーションに対する理解が間違っていなければ、ドライバーによるチョイスや路面温度等の変化への対応を考えると「2種類の内1種は安全なものを持ち込むべきだった」というFIAの主張はナンセンスです。ブリジストンも、同構造でコンパウンドが違うタイヤを2種持ち込んでいると思います。ブリジストンは、たまたまデータを豊富に持っていたためトラブルに見舞われなかったとも言えます。
    FIAがミシュランの要求した代替案に合意できなかった事は当然であり、また、然るべき姿だと思います。
    しかし、この様な事態が起こってなお、レギュレーションに対する疑義に耳を貸そうともしない姿には多いに疑問を感じます。
    また、ニュルで明確な危険を承知で走ったマクラーレンに対しては何のペナルティもなく、危険回避の為にリタイヤを選んだチームに対しては有罪の裁定。これには正直呆れてしまう感があります。
    FIAの下を離れた別シリーズがどんどん現実に近づくかもしれませんね。

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