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2010 Rd.15 シンガポールGP観戦記

JUGEMテーマ:スポーツ

▽アロンソのすごさ 現役No.1ドライバーの呼び声の高いフェルナンド・アロンソの実力を見せつけたレースとなった。 このコース、速さだけを見ればベッテルのレッドブルが最速なのは明らかだった。 それでも勝ってしまうのがアロンソのすごさである。 では彼はどうしてシンガポールGPを勝ったのだろうか。 基本的にシンガポールのような市街地サーキットは、追い抜きが極めて難しい。 だから予選順位は極めて重要となる。 予選と決勝レースは1セットと考えて作戦を考えなければならない。 その予選でアロンソはQ1、Q2ともに突破確実なタイムを刻んでいたにもかかわらず、2回目のアタックをしてタイムを縮めてくる。 レッドブルとフェラーリの差は思っているより遅くないと言うことを見せつけて、レッドブルにプレッシャーを掛ける。 そして迎えたQ3で、レッドブルはミスを犯す。 1回目のアタックでは、シューマッハーに引っかかるという凡ミス。 それにより1回目のアタックを台無しにされたベッテルは2回目のアタックで、プッシュしすぎてタイムロス。 アロンソは渾身のアタックを成功させてわずか0.067秒差でポール・ポジションを獲得。 ベッテルのミスがなければポールは獲得できなかったとは思うが、アロンソは彼ができる全てのことをしてポール・ポジションを獲得した。

 レースのスタートではアロンソよりベッテルの方が加速が良かったが、進路を変更してそれを防ぐとレースを完全にコントロールする。 このサーキットではミスさえしなければ抜かれることはないと認識した上で、限界まではプッシュせず、常にマージンを残してドライビング。 それでもタイヤのタレが少なく路面状況が向上し、燃料搭載量が少なくなるにつれベストラップを更新していく。 さらにプッシュする時間帯とペースを落としてマシンをいたわる時間帯を交互に重ねてフィニッシュまで持って行く冷静さは見事としか言いようがない。 アロンソというドライバーの冷静さには驚かされることが多い。。 心拍数が極度に上昇するF1ドライバーは普通、思考能力が下がりドライビング中に冷静にはなれない。 だからピットから無線で指示を受けるのであるが、アロンソの場合は逆に自分で考えてピットに要求をする希有なドライバーである。 常に自分の戦闘力、マシンの状態、ポイント等々を考えて走っている。 これは走っていない我々でもなかなかできることではない。 それをドライビング中にしてしまうアロンソだからこそミハエル・シューマッハーを破り2年連続でチャンピオンになれたのである。 ▽またも自滅したレッドブルと幸運なウェバー 一方、またも最速マシンを手にしながら優勝できなかったレッドブル。 今回も彼らのマネージメント能力の問題を露呈してしまった。 予選Q3で、彼らはミハエル・シューマッハーに追いついてしまい最初のアタックを台無しにしてしまう。 コース上に10台しか走っていない状況の中、前のマシンに追いついてしまうポジションでアタックを始めさせることは、通常考えられない。 結局、彼らはこのミスで高い代償を払わされる。 ベッテルは最初で最後の二回目のアタックで逆転を狙い、プッシュしすぎて少なくとも0.4秒はタイムをロスし、ほんのわずかの差でポール・ポジションを逃してしまう。 追い抜きが実質不可能なこのコースで、しかも偶数列グリッドは致命的とも言える結果である。 ただスタートは思ったほど路面状況が悪くなく、ベッテルはいいスタートをきる。 加速はアロンソより良く抜く勢いだったがアロンソにブロックされ、2位に退くしかなかった。 その後はアロンソのミスを待つ展開だが、アロンソはミスを犯さない。 ベッテルも追い越しが無理なことを承知の上、アロンソにプレッシャーを掛ける時期とアロンソから距離をおいてエンジンやブレーキを冷やす時期とを使い分けたクレバーな走り。 結局は2位となったがレース後のベッテルは意外とさばさばとしており、これまでのような勝てないからといって苛つく場面もなかった。 この冷静さを保てれば終盤に向けてチャンピオンシップ逆転も見えてくるだろう。 チームメイトのウェバーはこのシンガポールを若干苦手にしており、予選5位。 スタートはまずまずで5位のままレースを進める。 ところが2周目にSCが導入されるとトップ5の中では唯一ピットへ入り、ハードタイヤに交換。 タイヤ交換義務を果たして、そのままレースを走りきろうという作戦である。 問題はメルセデスやルノーはタイヤ交換しなかったので、彼らの後ろでウェバーがタイムロスするようだと逆転は不可能となる。 それでもこの追い越しが難しいサーキットで別次元の速さを見せるレッドブルは、次々と前のマシンを追い抜いていく。 不思議なくらい前のマシンのミスも多かったが、ミスを誘うほど速いレッドブルならでの追い上げだった。 しかし結局、アロンソとベッテルには逃げられてしまい、ペースの上がらないマクラーレン二台をかわすにとどまった。 それでもこの作戦がなければマクラーレンを抜くことは難しかっただろうから、作戦は成功したと言えよう。 そしてウェバーには幸運も味方した。 周回遅れに引っかかり加速の鈍るウェバーをハミルトンがアウトから抜くが、ウェバーは続くターン7でハミルトンと接触。 ハミルトンはリタイヤし、彼自身は走り続けられたのだ。 このアクシデント、判断は微妙だ。 確かにどちらに非があると断定はできない。 ハミルトンはもう少しスペースを残せば接触はなかったし、ウェバーが少し引けばこれまた接触はしなかっただろう。 しかしチャンピオン争いをリードするウェバーはここで接触して、リタイヤすればどうなるのかわからなかったのだろうか。 ハミルトンがリタイヤして、ウェバーが走り続けられたのは幸運でしかない。 実際、レース後に彼の右フロントタイヤはリムから外れかかっており、幸運なことに空気は漏れていなかった。 ハミルトンに前に出られたくない気持ちはよくわからるが、今回は完全にハミルトンに前に出られており、決して無理する場面ではなかったと思う。 さらに幸運にもペナルティはもらわなかった。 この接触はペンルティを与えるほどではないと思うが、万が一でもペナルティをもらった場合、26秒ロスすることを考えれば、不要なリスクを冒す必要はなかったと思う。 もしSC明け直後にペナルティをもらっていたら、彼は入賞圏外に落ちていた。 チャンピオンシップをリードするウェバーではあるが、今後も同じ事をしては、彼のチャンスは危機に瀕するだろう。 ▽ペースのなかったマクラーレン ハミルトンはまたも接触で無得点に終わった。 レースでの彼は明らかなペース不足で、アロンソとベッテルにはかなわなかった。 それどころから先にタイヤ交換したウェバーにもかわされてしまい4位に後退。 そのまま終わるかと思われたが、ウェバーが周回遅れのマシンに追いついて加速がほんの一瞬鈍った瞬間にハミルトンが襲いかかる。 ウェバーのアウトから抜き去ったハミルトンがブレーキングをして、ターンインしたとき、ハミルトンの左リアとウェバーの右フロントタイヤが接触。 タイヤにダメージをおったハミルトンは、エスケープロードにマシンを止めてリタイヤしてしまった。 ハミルトンとしてはやりきれない思いだろう。 だがどちらにせよマクラーレンのペース不足は明らかで、鈴鹿までに対策をしないと彼らが逆転するのは難しくなる。 ▽クビサのオーバーテイクショー SCが出やすいコース特性もありここでクビサが表彰台に登ることも十分可能であると考えていたが、予選では8位が精一杯。 上位チームが大量のアップデートをするなか資金に限りのあるルノーは、開発の進展があまり望めず厳しい予選となった。 残りタイヤの制限で1回しかアタックできなかったのも彼の予選を難しくした。 クビサは6位を走行中に右リアタイヤにスローパンクチャーを発見され、二度目のタイヤ交換に戻り13位に落ちる。 ところがここからクビサのワンマンショーが幕を開ける。 前のマシンを抜くは抜くは、結局7位まで順位を戻してレースを終える。 最終的に順位を一つ落とすことにはなったが、追い抜きの難しいこのレースでオーバーテイクの連発は、レースに活気をもたらしてくれ、クビサの実力をまたも知らしめてくれた。 ▽可夢偉ミスでクラッシュ 可夢偉は今回、予選で見事にQ3進出。 マッサがQ1で脱落したことに助けられたとはいえ、決してザウバー向きとはいえないこのサーキットでの素晴らしいアタックだった。 Q2では今回からチームメイトになった、ハイドフェルドに1秒以上差を付けてQ3へ。 ハイドフェルドにブランクがあるにしても、見事なパフォーマンスだった。 デ・ラ・ロサはスピード不足が明らかだったので、ハイドフェルドとチームメイトになることは可夢偉にとってまた一つの挑戦だった。 もっともハイドフェルドも最終戦までには、感覚を戻してくるだろうから、可夢偉も気を抜けない。 その可夢偉のレースだったが、序盤のSCでステイアウトを選択。 途中ミハエル・シューマッハーに抑えられるも、強引に抜いていき、前が空いてプッシュしていたところでクラッシュ。 彼はピットストップをしておらず、彼の後ろにはタイヤ交換を済ませたマシンがいた。 だから彼はタイヤ交換しても抜かれないだけのギャップを築こうと、前が空いた状態でプッシュしてタイムを稼いでおきたかったのだが、リアタイヤがたれてきており、オーバーステア気味になり、ガードレースにぶつかったのだろう。 本人も自分のミスを認めており、鈴鹿に向けて気を取り直して行きたい。

 

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