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2010 Rd.17 韓国GP観戦記

JUGEMテーマ:スポーツ

 ▽スタートディレイの理由 まずはレーススタートが遅れた件について話しておこう。 今回、降水量は早い段階で減少していた。 ところが路面上の水がなかなか乾燥しなかった。 その為、マシンが走り出すと膨大な水煙が発生し、視界を妨げて極めて危険な状況だった。 ジェンソンは自分のフロント・タイヤが見えないと言っていたいし、アロンソも経験した中で最悪の状況だと話していた。 それには、三つの要因が大きく影響していたと思われる。 まず最初の原因は、路面の排水が悪かったことが挙げられる。 アスファルトの質の問題かもしれないが、コース上の排水がうまくいかず、アスファルト上に雨が残り、まったく排水ができてなかった。 その為、F1マシンが水煙を巻き上げ、視界が悪くなってしまった。 二つの原因には湿度の高さがある。 湿度は常に80%以上あり、最高では90%を超える場面もあった。 そのため、路面上の水が蒸発せず、路面上に水が残ることとなった。 最後は風があまり吹いておらず、マシンが巻き上げた水しぶきが飛んでいかず、そのまま路面に降りてきていた。 これにより雨は早い段階で止んでいたにもかかわらず、路面上に水が残り、水煙で前が見えない状況が続き、スタートが遅れる原因の一つになった。 そしてこの雨は多くのドラマを生むことになる。

 ▽ベッテルとアロンソ 勝負の行方 ベッテルとアロンソの戦い。 1位と2位は入れ替わっていたが、シンガポールの再現を思わせる戦いとなった。 ウェットはいたレース序盤、ベッテルは1周目に楽々ギャップを開いて、その後はアロンソとの差を見ながら走り、アロンソが差を縮めてきたときだけプッシュしていた。 ところがウェットからインターミディエイトに履き替えてからは、バランスが崩れたのか、簡単に差を広げることができない。 それでもベッテルはプッシュして数秒のギャップを作り上げる。 だがアロンソも簡単には引き下がらない。 タイヤを労りつつも、ベッテルを追い続ける。 プレッシャーを受けつつも、このコースはストレート以外では追い抜きができないため、ベッテルは完全にレースをコントロールして、大きなミスさえなければ優勝確実の状況だったその時、事件は起こった。 ベッテルが急速にスピードダウン。 そしてバックストレートで煙をまき散らし、コース脇にストップ。 まさかのエンジンブローだった。 ベッテルは優勝できなくてもポイントを稼げていれば、最速のマシンに乗るだけにタイトルの可能性は大きかったのだが、これで彼のチャンピオンへの扉は完全には閉じられていないが、苦しい状況になったのは間違いない。 アロンソはベッテルの自滅で勝ちを拾った結果となったが、レッドブルが性能的にフェラーリを凌駕していることを考えると、すばらしい結果といえる。 マッサは表彰台に登ったが、依然として厳しい状況が続く。 好調とは言えないハミルトンを脅かすことができずに3位ではチームは満足しないだろう。 コンストラクターズポイントには貢献したものの、チームがマッサに期待するのはチャンピオンを争うライバルからポイントを奪うこと。 彼の後ろにいたチャンピオン争いするドライバーは12位のバトンだけだった。 それにしてもこの時点でアロンソがランキングトップに返り咲くとは誰も予想がつかなかっただろう。 直近の4レースで3勝。 しかもその全ては楽勝ではなかった。 イタリアではピットインのタイミングでギリギリでバトンをかわし、シンガポールでは予選でのベッテルのミスにつけ込み、韓国ではレッドブルのメカニカルトラブルで勝利を得た。 最速マシンを持たないアロンソが4戦3勝するのは、想像するのが困難なほど凄い。 もちろん幸運もあったことは否定できない。 イタリアではマクラーレンが先にピットに向かい、シンガポールではベッテルが予選でミスをし、韓国ではベッテルのエンジンが壊れた。 だがシンガポールと韓国ではチームメイトのウェバーが勝つのが普通である。 その全てをアロンソが勝つというところに、アロンソの価値がある。 最速のマシンを持たないアロンソが勝つためには、相手にミスにつけ込むしかない。 だがそのチャンスをつかめるかどうかは、全てドライバーにかかっている。 そこにこのフェルナンド・アロンソの凄さがある。 ▽レッドブルまさかのダブルリタイヤ ベッテルが搭載していたエンジンは1,600Km程度走行したエンジンで、耐久性の目安とされる2,000Kmには達していなかった。 しかもこの日は雨でエンジンの全開率もドライより、はるかに少ない。 気温も低くベッテルがトップを走っていたことも考えても、冷却系の問題はないだろう。 SC走行も長くエンジンの負荷は低かった。 となると部品の品質不良が一番疑われる。 昨年のルノーエンジンはよく壊れたが、今年はここまで壊れていなかった。 今年のレッドブルのトラブルも大きいものは少なく、発生するのはマイナートラブルだったのだが、ここにきて大きなトラブルに見舞われてしまった。 もしベッテルが勝っていれば彼がポイントリーダーで、アロンソに8点差、ウェバーに11点差となっていた。 現在、最速のベッテルにとってこのアドバンテージがあれば、逃げ切れる可能性は高かった。 それを考えるとあまりにも痛いリタイヤとなってしまった。 ベッテルのエンジンブローの原因はバルブ系ではないかと疑われている。 ただエンジンの壊れ方をみると、もう少し大きい部品の破損であるように思われ る。 だがベッテルはなぜスローダウン直後に、エンジンを止めなかったのだろう。 あれだけ派手にエンジンを壊してしまうと、破損原因を究明するのも難しくなる。 雨に強いとはいえないウェバーにとっても難しいレースとなった。 スタートが遅れる中でもウェバーはこのコンディションでのレーススタートに懐疑的だった。 ウェバーは、スタートに反対したドライバーの一人だろう。 一度気持ちが落ち込んでしまうと、そこからたち直せるのは難しい。 彼はSC明け直後のターン12の立ち上がり外側の縁石にタイヤを滑らせスピン。 そのままであれば、順位を落としながらもレース続行が可能だったが、ニコ・ロ ズベルグと接触し、レースを終えた。ピットへ戻るウェバーの心情はどうだったのだろう。 このターン12のコーナーは、ドライ路面でも非常に難しいコーナーだった。 その前のターン11が左に回り込む中速のコーナーで、そのターン11が終了すると、すぐに右コーナーのターン12が現れる。 その為、ターン11通過で過重が右タイヤへ大きくかかっている状態から、すぐに 右へ曲がり今度は左に過重が急速かかる。 さらにこのコーナーは逆にカントがついており、非常に滑りやすくなっている。 路面状態が悪い金曜日は、全てのドライバーがここを抜けるとき、苦労していた。 雨で滑りやすい状態で、ウェバーはその罠にはまってしまった。 さらにウェバーにとって最悪な状況が発生した。 レースはコンディションが悪く視界が妨げられていたのと、15時という遅いス タート時間で暗くなるのが早く、さらに厚い雲に覆われコースの視認性が悪かったので、半分の距離で終了し、ハーフポイントレースとなると思われていた。 ところがレース終盤には、雲がはれ薄日が差す状況になり、日没してかなり暗い状況にもかかわらずレースは最後までおこなわれることになった。 その為、ライバルのアロンソは優勝し満額25ポイントを追加し、チャンピオンシップで逆転されてしまった。 ウェバーにとっては最悪の韓国GPとなってしまった。 このレースでコンストラクターズ・チャンピオンを決める可能性もあったレッドブルだったが、これで2位のマクラーレンとの差は27ポイント。 こちらのタイトルはレッドブルが取る可能性が高いが、タイトル争いは最終戦まで続きそうである。 ▽マクラーレン 深刻なスピード不足 ハミルトンは予選で3位のアロンソと0.4秒もの大差を付けられた。 これはかなりマシンの戦闘力に差があると見て良いだろう。 実際雨の中、レーススタートを主張したハミルトンだが、レースがスタートしてみればレッドブルとアロンソにはまったく歯が立たなかった。 一時はフェラーリのタイヤ交換ミスにより、アロンソの前に出たハミルトンだが、抵抗することすらできずにコースアウトしてアロンソを前に出してしまった。 こういう難しいコンディションをハミルトンは苦にしないし、雨はマシンの性能差を消してくれるのだが、にもかかわらず為す術がないというのは、マシンの差としかいいようがない。 これではハミルトンも2位になれたのは満足としか言うしかない。 バトンは早めにインターミディエイトに変えたのが裏目に出て、グリップ不足のマシンで苦しむことになった。 前半戦では、タイヤ戦略により勝利を飾ったバトンだが、このレースではまったく競争力がなかった。 これでバトンとアロンソの差は48ポイント。 残り2レースで計算上は逆転可能であるが、その間に3人の手強いライバルがいることを考えると、バトンのチャンピオンシップは終わったと考えるべきだろう。 ▽好調メルセデスと可夢偉

今回、メルセデスが好調だったのは意外だった。 ニコ・ロズベルグが予選5位に付けマッサとバトンを出し抜いたのは驚きだった。 レースでも早々にハミルトンを追い抜き4位に浮上しただけに、ウェバーのスピンに巻き込まれなければ表彰台の確率はかなり高かった。 ミハエルも好調で今シーズン最高位タイの4位。 表彰台への道はあと一歩届かなかったが、往年の走りを思い出させる走りだった。

今回も出入りの激しいレースとなった可夢偉。 予選ではまたもトラフィックに引っかかりQ2敗退で、12位と不利な偶数スタートも、雨のレースを見据えて、あわてなかった。 難しいレースをスーティルやリウッツィと激しく争いながら8位。 もはや定番となった入賞を果たした。 7位にコンストラクターズ・ランキングのライバルであるウィリアムズのバリチェロがいたので、満足いく結果ではなかったが、安定したいい走りだったと思う。 ▽チャンピオンの行方 それにしても、アロンソの凄さを見せつけられたレースとなった。 第10戦イギリスGP終了時点でランキング5位のアロンソとトップ ウェバーの差は47ポイント。 彼はこの時点でも、「最終戦が終わって何ポイントなのかが重要であって、今の順位やポイント差は関係がない」と述べていた。 当時のフェラーリはペナルティ問題やマシンのパフォーマンスがよくなく、このコメントは強がりに聞こえたのだが、こうなるとお見事としか言いようがない。 アロンソは最速マシンとはいえないフェラーリをドライブし、この4レースで3勝し、ポイントランキングトップとなった。 2位のウェバーとの差は11ポイント差、3位ハミルトンとは21ポイント差、4位ベッテルとは25ポイント差。 今年は波乱のレースが多く依然としてチャンピオンの行方はわからないが、アロンソが首位にたったことで、今までとは違う局面を迎えた。 チャンピオン経験者であり、常に状況を考えながらドライブできるアロンソは、その状況に合わせたドライビングができる稀有なドライバーである。 アロンソが残り2戦を3位でフィニッシュした場合、ハミルトンとベッテルは逆転できない。 実際問題としてマクラーレンの戦闘力はフェラーりにも及ばない状況が続いており、いくらハミルトンとはいえ、マクラーレンが自力で二連勝するのはかなり困難だろう。 レッドブルは1-2フィニッシュが可能なマシンを持っているが、それでもアロンソを自力で逆転できるのはウェバーのみである。 当然アロンソはそのことを頭に入れてドライビングする。 彼はウェバーのポジションを見ながらプッシュしたり、ペースを落としたりする ことが可能だ。 アロンソが3位で、ベッテルが1位、ウェバーが2位の場合、レッドブルがどう行動するかは興味深い。 ウェバーを勝たせるのが合理的な判断だと思うが、レッドブルはベッテルのチームである。 そう考えるとレッドブルはそのままベッテルを勝たせるだろう。 ここでもアロンソは有利である。 アロンソの最大の問題点は、かなり前に8基目を投入済みで、マイレージを走ったエンジンしか残っていないことだろう。 ブラジルはエンジンには比較的楽なサーキットであるにしても、心配な点ではある。 だがアロンソはそのことを考えた上で、エンジンをいたわって走ることができるドライバーである。 アロンソの敵は唯一、彼がコントロールできないメカニカルトラブルのみである とすれば、彼は3度目のチャンピオンに大きく一歩を踏み出したといえよう。 だが次は天候が読めないブラジルである。 まだまだチャンピオン争いは楽しめそうだ。

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