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2014 Rd.19 アブダビGP観戦記 スタートで決まった2回目のチャンピオン

291970401-1301923112014-s スタートでほぼ全てが決まった。ハミルトンが最高のスタートを決めてトップにたち、リードを広げていく。 レース中のペースもハミルトンが良かったし、スタートのタイヤもロズベルグより1周若かったし、ロズベルグより1周早くタイヤ交換できることも有利な条件だった。つまりハミルトンがギリギリまでタイヤを持たせてタイヤ交換に入ると時には、ロズベルグのタイヤは終わっている計算になる。 アブダビGPが開催されるヤスマリーナサーキットは、追い抜きが難しいサーキット。その為、同じマシンで同じタイヤを履いていると抜くのは極めて困難である。しかも前を走るハミルトンが先にタイヤ交換できるとなると、ロズベルグはアンダーカットを仕掛けることもできない。 ロズベルグの望みはハミルトンがソフトタイヤに交換した後で、バランスを崩すことぐらいしかなかった。しかもシーズン後半のメルセデスは2人のドライバーに大きく違う作戦を使い分けさせていない。これはシーズン前半に2人のドライバーの作戦を変えて順位に変動があった時にもう1人のドライバーからクレームが出たからである。つまりコース上での勝負しかロズベルグには残されていなかった。 だがハミルトンのペースはソフトに変えても好調なままで、ロズベルグは苦しくなるばかりであった。 そうした中ロズベルグはパワーを失うトラブルが発生。彼はERSを失ってしまった。これはカナダGPで発生したのと同様のトラブルである。これにより彼はパワーも失ったが、モーターのブレーキ効果も失うことになった。今年のリアブレーキは強力なモーター・ブレーキがある事を前提にとても小さい容量になっている。その為モーターが使えなくなると、リアブレーキがきかなくなってくる。 そうしてロズベルグはハミルトンだけでなく他のライバル達よりも2秒から3秒も遅くなって、続々とポジションを失っていった。それでもロズベルグが走り続けたのは、ハミルトンがトラブルがあった時に最後の望みをつなぐためである。 ご存じのように、今年は最終戦がダブルポイントである。その為、もしハミルトンがトラブルでリタイヤした場合、ニコは5位に入れば逆転チャンピオンになる。その為、ニコはなんとかして5位になろうとして頑張ったのだが、パワーを失い、ブレーキも厳しいとさすがの最速メルセデスでも厳しかった。 エンジニアからはロズベルグにリタイヤを勧告したが、ロズベルグは奇跡を信じて走り続けた。だがそんな彼も入賞圏内の10位から外れた後にリタイヤを選択した。 チャンピオンシップには敗れたが、それでもロズベルグは素晴らし一年を経験した。彼は予選においてはルイスに対して勝ち越している。これはルイスが現役最速ドライバーである事を考えると驚異的である。 もちろん彼はこの優位さを結果に残すことはできなかったわけだが、これは彼にとっての最初のチャンピオン争いであると考えると、これもいい経験である。 ハミルトンも2007年には、手痛いミスをして絶対的に有利な条件の中、敗れ去っている。その経験を活かして翌年2008年にはチャンピオンを勝ち取っている。 ロズベルグが来年、チャンピオンを取れるかどうかはまだわからない。相手は現役最速の一人であるハミルトンであるからだ。もしロズベルグがハミルトンを破ってチャンピオンを取れるなら、彼は自分自身が現役最強のドライバーであると証明することができる。 その道は決して簡単ではないが、そもそもチャンピオンへの道のりは簡単ではない。 その大きな山を越えた時、ロズベルグはまたひとつ大きく成長することができる。