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2011 Rd.4 トルコGP観戦記 <br> -ベッテルは今日も速かった-

JUGEMテーマ:スポーツ

 ▽ベッテルは今日も速かった イスタンブールはレッドブルサーキットとも呼べるほど、彼らにとって相性の 良いサーキットである。 予選Q3でベッテルは1回しかアタックしなかったにも関わらず、余裕でポール・ポジション獲得。 同じマシンに乗る2位のウェバーにも0.4秒と大差をつけて、定位置につけた。 レースでも、有利な奇数グリッドを活かして、好スタートを決めるとそのまま独走。 こうなると他のドライバーにできることは、ベッテルにミスかトラブルが出ることを祈るだけである。 ただベッテルもこの週末、不安になった瞬間がある。 金曜日午前中、雨のP1。ベッテルはターン8で外側の縁石に乗りすぎてコントロールを失いクラッシュ。午後のP2も全く走れなかった。 しかしレッドブルは、チームメイトのウェバーがキッチリ走ってデータを収集。 土曜日の朝には、マシンの修復も終わり、その後はまた何事もなかったように、速さを見せた。 前回の中国GPでは、フェラーリが2ストップだったので、マクラーレンの3ストップに合わせることができずに負けたが、今回は上位陣の全てが4ストップ。 ベッテルは2位のドライバーがタイヤ交換してから、ピットインする余裕の作戦で、どう頑張っても、この日のベッテルに勝つのは不可能だった。

 ベッテルは各スティントであと数周伸ばすことができたと思うが、2位のピットインのタイミングに合わせて、タイヤ交換。 彼の第4スティントが7周しかしなかったことを考えると、ベッテルは3ストップでも充分に可能だったが、SCが入った場合のリスクを考えて、4回目のストップを実行した。 この部分はピット戦術で負けた、中国GPの教訓から学んだのだろう。 次のカタルーニャもレッドブルサーキットである。 レッドブルにトラブルがなければ、ベッテルを次のスペインで止めるのは難しい。 そうなると、他のドライバーは2位で満足するしかない。 他のドライバーは、特殊なサーキットであるモナコとカナダまで待つしかない。 この二つのサーキットは特殊で、レッドブル以外でも希望がある。 逆に言えば、この二つでベッテルが勝つようだと、チャンピオンシップは終わったも同然かもしれない。 ▽オープニングラップで終わったハミルトン 予選は5位ながらも戦闘力はあったハミルトンだったが、オープニングラップでウェバーと順位を争う中で、ワイドにはらんでしまい、順位を落としたのが痛かった。 これで第一スティントでバトンと激しく争い、予想以上にタイヤの摩耗が進み早め早めのピットインを強いられた。 タイヤ交換の際にも、右フロントタイヤがはまらずに大きくタイムロス。 どちらにせよベッテルに勝つのは難しかったと思うが、表彰台は十分に狙えただけに痛いミスだった。 バトンの方は3ストップを選択したが、2回目までのスティントの周回数が4ストップ勢と数周しか違わず、結果的に最後のスティントを19周と長距離を走らざるを得ず、順位を二つ落として6位でフィニッシュ。 最後のスティントが長いことが分かった時点で、4ストップに変更しても良かったと思うのだが。 マクラーレンとハミルトンには競争力があるが、それでもレースに勝つにはベッテルのミスがないと厳しいのが現状である。 中国GPではベッテルのスタートとピット戦略のミスにより勝つことができたが、 今回のようにベッテルが完璧だと苦しい。 逆に今回はルイスとマクラーレンがミスをして4位。 多くのミスがあったにしては、悪くない結果だろう。 次のスペインも我慢のレースとなるだろうが、その次のモナコとカナダはルイスのレースになるかもしれない。 今は我慢の時である。 ▽アロンソの本音 3位だったにもかかわらず珍しく笑顔だったアロンソ。 表彰台でも笑顔、記者会見でも笑顔。 通常、3位であればいつものように淡々とレースを振り返るアロンソだがこの日は違った。 本来であれば2位も狙えたレースで3位だったから、不満に思っても不思議ではない。 レース終盤、3位のウェバーがピットに入ったので、それに合わせてタイヤ交換をしたが、最後はウェバーに逆転されてしまった。 ウェバーは新品のハードタイヤを、最後のスティントに入れてきたので、中古タイヤを履くアロンソには為す術がなかった。 それでもこの日のアロンソは、今年始めてレースができた喜びを感じていたようで、3位でもハッピーだった。 彼はまだまだ先が長いシーズンでの巻き返しを狙っており、昨年のように粘り強くベッテルを追いかけて行くだろう。 ▽苦しいミハエル ミハエルはまたも予選でニコに負けた。 だが今回は普通ではない。 二人の差は1秒以上ある。 ニコだけに最新のパーツが投入されているのであれば理解できる。 しかしそれはない。 しかもレースではペトロフと接触するなど、良いところがない。 彼はこのレースで何回抜かれたのだろう。 全盛期の片鱗も見せることのない、ミハエル。 彼が今シーズン終了後に(二度目の)引退しても、誰も驚かないだろう。 彼自身も今はレースを楽しめないことを認めている。 今後も、彼の厳しいレースは続きそうだ。 一方のニコは予選3位と大健闘。 だがこれはニコの個人技だろう。 最近、メルセデスは予選で良いが、決勝でのペースを考えると、彼らは予選を重視したセットアップをしているように思える。 今回は予選重視のセットアップとニコ個人の力で、予選3位を獲得できた。 だがこのチームの問題は予選ではなく、決勝レースである。 一周のタイムは個人の力でなんとかなるが、決勝で長い距離を走るとなると、そうはいかない。 ニコはタイヤがかなり厳しかったようで、スタートで2位に上がるも、その後はズルズルと後退し、最終的には定位置の5位。 悪くはない結果だが、もうこれで満足するニコではないだろう。 予選でのパフォーマンスは向上してきたが、メルセデスの課題は多い。 ▽右へ習えのタイヤ交換 今回、ほとんどのドライバーは4ストップを選択した。 P2のタイムを見ていると、それほどタイムの落ちが厳しくないので、2ストップか3ストップと予想していたのだが、最終的には4ストップがスタンダードなった。 日曜日は金曜日より天候がよく気温が上昇したことが、影響したのかもしれない。 最初のスティントが10周前後と予想よりも短く、その為に3ストップ勢はその後の2スティントで長い距離を走ることになり、苦しいレースとなった。 とにかくタイヤがどこまで持つのかわからないので、交換のタイミングが非常に難しい。 後ろを走るドライバーが新品タイヤを履いて1秒ほどタイムアップすると、抜かれることが怖く、タイヤがまだ残っていても対策上ピットへ向かう。 昨年のブリヂストンの時も、タイヤが残っているにもかかわらず、争っているライバルがタイヤ交換すると、続々とピットへ向かう姿が見られたが、今年も同じ光景が繰り広げられている。 ただ去年と違って今年のタイヤはどこまで持つのか本当にわからない。 金曜日のデータがあまり役に立たないのだ。 これは作戦を立てる人間からすると難しい。 しかもダメになると急激にタイムが落ちる。 そうするとマルチストップを前提とするなら、早めに交換したほうがいい。 ちなみにタイヤに最も厳しいトルコのターン8を乗り越えたことで、ピレリタイヤは今年問題なく乗り切れそうだ。 めでたし、めでたし。 ▽可夢偉 24位から10位へ 予選は、燃料系のトラブルで1周も走れずQ1で脱落した可夢偉。 ノータイムだったが、フリー走行でのタイムが認められて、救済措置により決勝へのスタートが許された。 ハードでスタートした可夢偉は、順調に順位を上げ、10周前後からソフト勢が続々とピットへ向かう中一時は5位まで上げるが、あまりハードで引っ張らず、13周目にピットへ向かいソフトへタイヤ交換。 もう少しハードで引っ張っても良かったような気はするが、今回はハードとソフトで走れる周回数に大きな違いがなかったので、これが限界だったのだろう。 だが可夢偉を不運が襲う。 22周目にブエミをパスする際に接触して、彼のタイヤがパンク。 ほぼ1周をパンクした状態で走った可夢偉はタイムロスして、大きく順位を落とした。 さらにパンクによって、第2スティントの周回数が少なくなった彼は、第4スティントで20周も走行することになり、終盤はタイムを落とした。 それでも、可夢偉は4ストップのマッサとシューマッハーを抑えて10位に滑り込んだ。 だがこのパンクがなければ、可夢偉の順位はもっと良かっただろう。 ただ可夢偉はソフトの新品を3セット残していたので、第4スティントが長距離になるのであれば、4ストップに変更して走らせても良かったのではないだろうか。 入賞できたから良かったが、新品のソフトを1セットの余らせるとは、もったいない。 最終的には10位であり、最下位からのスタートを考えれば悪くはない結果だ。 だが私は可夢偉に最初から4ストップで攻撃的な走りを見せて欲しかった。 彼が考えながらタイヤを持たして走ることができるのは、充分に分かっている。 今回も長距離の第4スティントを乗り切れたのは、彼の実力である。 だがトップドライバー達は皆、スーパーラップを連発する能力がある。 そこが普通のドライバーとの差である。 可夢偉にもスーパーラップを連発してもらい、その能力があることを証明して欲しかった。 それができれば、彼はどこのチームに行ってもやっていける。 次のスペインではポイント狙いではなく、結果はともかく攻めていって欲しい。

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