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▽ベッテルのパーフェクト・ウィン
このレースまで7戦5勝と圧倒的強さを誇るベッテルだったが、それでも彼が楽に勝ったレースは数えるほどで、だからこそ結果はともかく、レースは面白かった。
だが今回は違った。
彼はあまりにも速すぎただけではなく、隙がなかった。
その為、2位争いは激しかったのだが、それが霞むほどだった。
今回、同じマシンに乗るウェバーは、非常に乗れていたし、今シーズン最高のレースだったと思うが、それでもベッテルには全く敵わなかった。
二人の差である16秒は、ベッテルが無理に引き離さなかった結果である。
ベッテルは自分のタイヤを見つつ、2位との差を考え、マシンの調子を感じ取り、およそ全てのことを自分でコントロールしていた。
だから、今回はセーフティカーが入っても、ベッテルの勝利は動かなかっただろう。
モナコ、カナダ、バレンシアと続いた3レースは、決してレッドブル向きのサーキットではなかった。
それでもベッテルはここを2勝1敗で乗り切り、負けたレースも2位とまったく隙がない。これでは彼のライバル達は、意気消沈するばかりである。
昨年までの彼は、速いが安定さを欠き、トップを走りながら勝てないケースも多かった。
その全てが彼の責任ではないが、今年の彼はその不確実性すらも、コントロールしているかに見える。彼は自分の運命を、自分の手で動かしている。
ちなみに鈴鹿でベッテルがチャンピオンを決める条件は、2位に100点差つけることである。
現在ランキングの1位ベッテルと2位のバトン、ウェバーの差は77点差。
これはベッテルが3戦連続リタイヤして、バトンかウェバーが三連勝してもまだ逆転できない差であり、あとたった23点で、100点差である。
チャンピオンが鈴鹿より早く決まっても、誰も驚かないだろう。
▽逆襲のアロンソ
ついにアロンソが逆襲に出た。
ウェバーとの激しいバトルの末に2位を獲得。
レッドブルの1台を崩した、この2位は価値が大きい。
アロンソとウェバーのバトルだが、今年のタイヤ管理を語る上で興味深いので、細かく見てみよう。
序盤はアロンソが3位で、ウェバーが2位だった。
次の数字は左側がウェバーがタイヤ交換したラップで、右側がアロンソのそれである。
1回目 13 14
2回目 28 29
3回目 42 45
3回のストップ全てで、ウェバーが先に入っている。
タイヤは、最初の2回はソフトへ交換。
最後の一回はハードへ交換している。
このコースでのソフトとハードとのタイム差は1秒~1.5秒差
ソフトタイヤに交換する場合、先に入った方が有利なのが、これまでのレースだった。
だから1回目のストップは3位のアロンソが先にタイヤ交換して、ポジションの逆転を狙ってくるかと予想していたのだが、2位のウェバーが先にタイヤ交換。
当然アロンソは順位を逆転できてない。
その後、アロンソがウェバーをコース上でかわし2位へ上がる。
ところが二回目の交換でもウェバーは先にタイヤ交換して、ここでアロンソを逆転。
フェラーリの作戦は完全に失敗と思われたのだが、アロンソは最後のタイヤ交換をウェバーより3周遅らせて再逆転した。
ソフトタイヤの場合、先に交換した方がラップタイムが良くなるので、有利なのだが、交換するタイヤがハード側の場合、遅らせた方が有利な場合もある。
ハードはラップタイムが悪いだけでなく、タイヤの動作温度まで上昇させるにも数ラップかかるケースもあり、今回のウェバーもタイヤ交換直後のタイムが悪く、アロンソに逆転を許してしまった。
そして、気温が上昇したことはフェラーリに有利に働いた。
彼らのマシンはこれまで度々、タイヤ温度が上昇せずに苦しんでいたからだ。
逆にウェバーにとっては、温度上昇はありがたい状況ではなかった。
アロンソは3位を走っている時も決して諦めずプッシュして、2位のウェバーに引き離されないようにした。その素晴らしい走りが、最後の逆転を呼び込んだ。
この二人のバトルは、単調だったヨーロッパGPのハイライトであり、2位3位と順位を分けた二人だが、共に満足な顔をしていたのが、印象的だった。
▽惨敗 マクラーレン
今回、マクラーレンは全く勝負にならなかった。
このレース、ペース的には1位から3位がトップグループで、4位のハミルトンから7位のロズベルグまでが第2グループ、8位以下は周回遅れでその他大勢であった。マクラーレンは第一グループに大きく引き離された第2グループでしかなかった。
ハミルトンはスタートで出遅れたが、それがなくても4位が彼のベストリザルトだっただろう。
暑い気温はマクラーレンのタイヤを痛めつけ、オーバーヒートを引き起こし、彼らのマシンはオーバーステアに悩まされた。
前回のカナダでは、雨に助けられて勝利を得たマクラーレンだが、大きなアップデートが少なく、レッドブルとの差は開き、フェラーリに逆転すらされている。
次回、地元のイギリスGPで大きなアップデートを持ち込む予定なので、それに期待したい。
▽ミハエル 完全復活ならず
カナダではいいレースを見せたミハエルだったが、今回はまた元のミハエルに戻ってしまった。
ペトロフと接触し、フロントウィングを壊して大きく順位を落としたが、それがなくても9位か10位くらいが精一杯だっただろう。
前回のカナダでは、低い気温がミハエルに有利に働いた。
メルセデスはタイヤへの負荷が高いので、気温が低いとタイヤ温度を素早く上昇させることができ、ライバルより有利な立場である。
ところが今回は非常に暑いレースとなったので、これはメルセデスにとっては不利な条件となった。
ミハエルの完全復活はいつになるのだろうか。
それとも完全復活を期待すること自体に、無理があるのだろうか。
▽可夢偉 連続入賞記録途絶える
今回、金曜日が曇りで日曜日が快晴と言うことで、路面温度の差が大きく、タイヤの寿命が読みづらかったので、どのチームも複数のシナリオを準備してレースに臨み、レース中のラップタイムの推移を見て、作戦を変更するチームが多かった。
可夢偉は1ストップを狙ってくるかと予想していたのだが、今回はタイヤが持たず早々にタイヤ交換。他よりは1回交換回数が少ない2ストップだったが、16位。
実質、開幕から続いていた連続入賞が途絶えてしまった。
だが、考えようによってはザウバーは良くて6番目、悪ければ8番手くらいのマシンである。
各チーム2台ずつ走らせていることを考えれば、彼が連続入賞を続けてきたことは驚異的であり、今回連続入賞が途絶えても、落ち込む必要はない。
今回はまったくレースペースが良くなく、これでは1でも3でも4ストップでも結果として、順位は一つくらいし変わらなかっただろう。
モナコ、カナダとバレンシアは、ザウバー向きのサーキットではなかった。
にも関わらず2回入賞できたのだから、良い結果だったと言えるのではないか。、次のシルバーストーンに期待したい。
2011 Rd8 ヨーロッパGP観戦記
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