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2011 Rd.9 イギリスGP観戦記

▽ブロウンディヒューザー禁止で笑った人、泣いた人

このシルバーストーンからブロウンディヒューザーが本格的に制限されるようになった。実際に制限されたのはブロウンディヒューザー本体ではなく、ブロウン・ディヒューザーの効率を高めるための、エンジンマッピングが制限された。

だがシーズン中の突然のルール変更は、大きな混乱をもたらした。
事の発端は、ルノーが彼らのエンジンはスロットルオフ時に、50%スロットルを開けた状態にしないと、バルブの冷却に問題が出ると主張したことから始まった。
エンジンの耐久性に問題があると言われた、FIAはこれを一度はこれを認めた。

ところがこれを知ったライバルチームは激怒。
本来、今回のルール改正ではスロットルオフ時のスロットル開度を10%に制限していた。
それを50%まで許可すると言われたのでライバルチームは、抗議した。
そしてその抗議を受けてFIAは木曜日10時時点で申請済みのエンジンマッピングは認めるが、それ以降の変更は認めないと発表。
これによりメルセデスはオフスロットル時に点火するエンジンマッピングが認められ、ルノーは認められない事態となった。

さらに日曜日に各チームのテクニカルディレクターが一同に会して、ドイツGP以降の解決策を練った。
この際にブロウンディヒューザー用のエンジンマッピングのルールをヨーロッパGPにまで、戻そうと話し合った。
FIAは全チームが一致すれば、レギュレーションの再変更を認めると発言。

だがフェラーリとフェラーリエンジンを使用するザウバーがこれに反対。
結局、日曜日の時点では解決が図られなかったレギュレーション変更だが最終的には、フェラーリとザウバーが認める形で、ドイツGP以降はヨーロッパGP時点のレギュレーションに戻される。
つまりホットブローは認められるが、予選と決勝間でのエンジンマッピングの変更は認められない。

この間の悲喜こもごもは見ていて、興味深かった。
フェラーリがこれに反対したのは、彼らはブロウンディヒューザーから得ているアドバンテージが少ないからだろう。
逆にルノーはブロウンディヒューザーに特化したコンセプトでマシンを設計しているので、これが使用できなければ、マシンの競争力はガタ落ちである。

最終的にドイツGP以降も使用が可能になったブロウンディヒューザーだが、来年以降はエキゾーストの位置を制限することにより、効果をなくす方向である。

▽アロンソはベッテルのミスが無くても勝てたか?

アロンソの勝利はレッドブルのピット作業ミスが大きな要因ではあるが、それがなくても勝てた可能性は高かった。
というのもトップに立ってからのアロンソは、2位以下を最大で一周あたり2秒も引き離し、このレースのウィナーにふさわしいドライビングを見せてくれた。

ピット作業のミスで3位に転落したベッテルが2位ハミルトンに抑え込まれている間に、アロンソはあっという間に10秒のギャップを築き上げた。
抜群のレースペースとタイヤに優しいフェラーリのマシン特性、それにアロンソの正確なドライビングが組み合わさって、彼は長い距離にわたり速いペースを維持した。
これはベッテルのピットストップにミスが無くても、十分に逆転が可能な速さだった。


もっともベッテルがピットで余分なタイムロスをしなければ、アロンソはコース上でベッテルを抜かなければならないわけで、シルバーストーンではかなり困難なミッションであることは間違いがない。
ただもう一回のタイヤ交換が必要な状況でもあり、その際にアロンソが先にピットインして、抜くことは十分に可能だったと思う。

彼らがここシルバーストーンで勝った意味は大きい。
というのもこのサーキットは、レッドブルが絶対的に有利なレイアウト。
どう考えてもレッドブル以外のマシンが勝つのは難しかった。
過去2年間もレッドブルが勝利している。

ところがレース前に降った雨がレッドブルのアドバンテージをそぎ落とした。
序盤の様な濡れた路面であれば、レッドブルのスピードが落ちて、ライバルとの差が縮まる。
ところが序盤の雨に関してはフェラーリには不利な点もあった。
インターミディエイトからドライソフトに変えた直後、彼らはタイヤ温度を上げるのに時間がかかり、アロンソはあっさりとハミルトンにかわされている。
ところが路面が乾いてくると、彼らのタイヤに優しい特性が活きてきた。

さらに、スタート時にインターミディエイトタイヤを履いたので、ドライタイヤの2種類を使わなければならない、ルールが適用されなかったのも、フェラーリには有利に働いた。
実はフェラーリはハードタイヤに問題を抱えており、できるだけハードタイヤで走る距離を短くしたかったので、ハードタイヤをはかなくてすんだのは、幸運だった。

昨年もフェラーリはシーズン中盤まで低迷していたが、ドイツGPで勝利してから、逆襲を開始。
最大47点差あった差を逆転し、最終戦にポイントリーダーとして乗り込み、チャンピオンまであと一歩と迫った。

今年もこのイギリスGPから逆転に向けたアロンソの快進撃が始まるかもしれない。
ただベッテルとの差は92点差。
昨年の同時点よりほぼ2倍の差である。
だがアロンソは決して諦めないだろう。

▽ベッテルとウェバーの微妙な関係

ベッテルは確かにピットの作業ミスでレースを失った。
しかしそれがなくても、苦しいレースになっていただろう。
というのも彼はレースの前半からKERSにトラブルを抱えており、使用できなかったからだ。
それにレース終盤はペールを抑えていたと言うより、ペースが上がらなかったので、ウェバーの攻撃を抑え込むので精一杯。
このレースを2位で終えたのは、幸運だったといえよう。
勝てなかったとはいえ、チャンピオンシップの2位ウェバーとの差を80ポイントに広げた。

これまでも何度か述べてきたが、今シーズン結果的には、ベッテルが9戦6勝で圧倒的に勝っているように見えるが、内容的には接戦のレースが多く、決勝レースの内容に圧倒的な差は少ない。
ベッテルは昨年までと違い、激しく攻撃されても決して慌てることがなく、非常に安定している。
それが1位に6回、2位3回という安定した成績につながっている。

そしてベッテルにとって、今シーズンは毎レース、ライバルの顔ぶれが代わり、ポイントが分散されてることは幸運である。
ベッテルが今シーズン、ランキングでトップを独走しているのは、優勝回数が多いこともあるが、優勝できないときは2位に入賞していることが大きい。これは昨年までには見られなかった彼の走りだ。
そして彼が優勝した時、2位になるドライバーは日替わりで変わっている。
そういう訳でベッテルはチャンピオンシップ・ロードを独走している。

それにしてもレッドブルがチームオーダーを出したのには驚いた。
というのも、彼らは昨年の僅差のチャンピオンシップ争いでもチームオーダーを出すことを頑なに拒んだチームである。
レッドブルの限界に挑戦するというイメージは、チームオーダーとはかけ離れており、彼らがチームオーダーを発令したことは、意外だった。
結局、ウェバーはチームオーダーを無視したのだが、ベッテルが大量リードをしている場面でのチームオーダーは、レギュレーションでは認められているとはいえ、ファンは面白くなかっただろう。
昨年、フェラーリがドイツGPでチームオーダーを発令した際、ホーナーはこれをファンに対する裏切り行為だと倫理的な面からも批判した。

昨シーズンや今年の予選を見ても、わかるようにレッドブルはベッテルのチームなのである。だからベッテルが上位にいれば順位をキープしようとするし、ウェバーが上位にいれば、自由に争わせる。
ウェバーにとっては面白くないだろうが、レッドブルが最速のマシンを用意する以上それらを受け入れて走るか、勝てなくても他のチームで走るかしか選択肢がない。マクラーレンやフェラーリがウェバーと契約するとは考えにくい。

▽最後に見せたハミルトン

ハミルトンは今回も出入りの激しい彼らしいレースだった。
良くも悪くもこれがハミルトン・スタイルというドライビング。
序盤は雨に濡れた路面を活かして3位にまで浮上するも、途中から燃料が厳しくなり、大きくペースダウン。
ペースダウンしたことで、ブレーキも冷えてしまい、非常に難しいレースとなった。
それでも直線スピードが伸びないハミルトンは、コーナー部分で頑張りなんとかマッサを振り切って4位。
最終ラップのマッサとバトルは見応えがあった。
彼自身も納得の4位だったようだ。

それにしてもマクラーレンはどうしてしまったのだろう。
彼らは誤差を超える量の燃料を搭載しなかった。
その為、ルイスはレース前半から燃料をセーブするように指示されていた。
燃料計算を間違えたか、搭載する燃料量の計測を間違えたかしか考えられない。
どちらも初歩的なミスで、責任者はかなり恥ずかしい思いをしていることだろう。
それともルイスが10位スタートだったの

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